CONCEPT — DATA GOVERNANCE

データガバナンスとは

データ基盤・連携 sento.group 編集部 · · 約5分

決める・守る・確かめるの三段が輪になり、各段に顧客マスタの持ち主、列の意味、入力ルール、SaaS管理者の台帳、月末の空欄点検の作業カードが付く図。説明用の仮想例
図:決める→守る→確かめるの三段(説明用の仮想例)。少人数でも、この輪から始められます。

データガバナンスとは、社内のデータを誰が持ち、どんなルールで入力し、誰がどの画面を開けるかを決め、それが守られているかを確かめる仕組みのことです。道具を増やす話ではありません。顧客マスタの持ち主が決まっていない、列の意味が人によって違う、SaaSの管理者を誰も書いていない、という状態を止める決めごとです。

何を決める仕組みか

データガバナンスが決めるのは、次の四つです。全部を一度に決めません。会議で数字が食い違うデータから決めます。

  • 持ち主:そのデータの定義を変えられる人。顧客マスタなら、新しい顧客の追加を認める人。
  • 入力ルール:空欄にしてよいか、半角か全角か、日付はいつ時点か。
  • 権限:誰が画面を開け、誰が直せるか。退職した人のアカウントが残っていないか。
  • 確かめる周期:月末に空欄を数える、四半期に管理者の名前を見直す、など。

情報処理推進機構(IPA)の読本は、データガバナンスを「データを戦略的に管理・活用するための仕組みやルール、体制」と書いています。デジタル庁のガイドラインも、データを経営資源として扱い、利活用と保護を経営の課題に置く、と書いています。少人数の会社では、その言葉を「持ち主・ルール・権限・点検」の4行に落とします。

データマネジメントとの違い

ガバナンスは決めごとと責任、マネジメントは日々の実行です。同じデータを扱いますが、やる作業が違います。

  • ガバナンスの作業:顧客マスタの持ち主を1人書く。列の意味を1枚の定義書に残す。SaaSの管理者を台帳に書く。月末に空欄件数を見る。
  • マネジメントの作業:使っているExcelとSaaSを書き出す。同じ顧客が何か所にあるか数える。月末に手で直している列を直す。

IPAの読本は、マネジメントを「データを正しく扱う仕組み」、ガバナンスを「データを正しく扱うことを確実にする仕組み」と並べています。DAMAがまとめた知識体系(DMBOK)でも、ガバナンスはデータ資産の管理に対して権限で統制すること、と定義されています。

決めごとが無いのに実行だけ進めると、直した列が翌月また壊れます。実行が無いのに決めごとだけ増やすと、誰も守りません。データマネジメントの記事は、書き出す・そろえる・つなぐ・使うの実行側です。この記事は、決める・守る・確かめるの決めごと側です。

少人数で今週やる3つの決めごと

委員会もCDOも要りません。次の3行を、共有フォルダの1枚に書きます。

  • 顧客マスタの持ち主を1人決める:新しい顧客を追加してよい人と、社名変更を反映する人を書く。部署名ではなく人名を書く。
  • 列ごとの意味と入力ルールを1枚の定義書に書く:最初は顧客名、顧客コード、担当者の3列で足りる。「正式名称を入れる/略称は別名列へ」のように、入れるものと入れないものを1行ずつ書く。
  • 誰がどのSaaSの管理者かを台帳にする:営業管理、会計、請求、ファイル共有の4つを並べ、管理者の名前と、退職時に渡す相手を書く。

上は説明用の仮想例です。売上マスタや商品マスタから始めても構いません。会議で「どっちが正しいの」が出るデータを1つ選びます。

少人数の体制:持ち主と実務と点検

大企業向けの図には、委員会、統括役員、部門スチュワードが並びます。少人数では3役に畳みます。

  • 持ち主(決める人):列の意味を変えてよいかを認める。多くの場合、そのデータを一番使う部署の主任。
  • 実務(守る人):日々入力し、空欄を埋める。今その画面を開いている人。
  • 点検(確かめる人):月末に空欄件数と、管理者台帳の名前を見る。持ち主と別人にすると、自分で自分を点検しなくて済みます。

10人の会社なら、持ち主は営業主任、実務は事務、点検は経理、のように分けられます。3役を1人で兼ねるなら、点検の日だけ別の人に件数を見てもらいます。

中央で全部決めるか、部署ごとに決めるかは、扱うデータが1種類なら中央、事業が分かれていて列の意味が違うなら部署ごとに最低限の共通ルールだけ、が現実的です。最初から全社統一を書くと、現場が守らなくなります。

ルールの例:書いて壁に貼れる長さ

ルールは、入力する人が画面の横に置ける長さにします。規程の体裁は後です。

  • 顧客名:登記上の正式名称。屋号だけは別名列へ。
  • 顧客コード:空欄禁止。採番は持ち主だけが行う。
  • 担当者:退職したら翌営業日に後任の名前へ書き換える。
  • 権限:閲覧は業務で使う人、変更は実務の人、管理者は台帳の1人。
  • 捨てる:見積の下書きは案件終了の90日後に消す。残すものは持ち主が決める。

上も説明用の仮想例です。自社の画面の列名に置き換えて使います。長くなったルールは守られないので、1データにつき5行までにします。

進め方:決める、守る、確かめる

冒頭の図の三段を、この順で回します。道具の選定は、三段が1周してからです。

  • 決める:対象のデータを1つ選び、持ち主と列の意味と入力ルールを1枚に書く。関係する人に見せて、認識のずれを直す。
  • 守る:入力画面の近くにその1枚を置き、管理者台帳に名前を書く。新しいSaaSを足すときは、管理者の行を先に足してから契約する。
  • 確かめる:月末に空欄件数、重複の候補、退職者のアカウントを数えて、台帳に残す。数が減っていなければ、ルールか持ち主を見直す。

教育は、新しい人に台帳の置き場所と、空欄を見つけたときの連絡先を渡すことです。別資料を増やしません。

カタログ製品や品質監視の製品は、空欄を手で数えられなくなった時点で検討します。先に製品を入れると、決めていない列まで取り込まれます。

持ち主と入力ルールを、担当者の頭から会社の台帳へ移す

「顧客名は正式名称」が営業主任の頭にだけあると、休暇の週に略称が入ります。決めた4行は、共有フォルダの同じファイルに残します。

ファイル名は「データ決めごと台帳」で足ります。シートをデータごとに分け、持ち主、列の意味、入力ルール、管理者、先月の空欄件数、直した日を置きます。AIに顧客一覧を渡すときも、この台帳の「渡してよい列」を先に見ます。

チャットで決めた変更は、その日のうちに台帳の1セルを書き換えます。決めた場所と守る場所が同じファイルになると、点検のときに迷いません。

よくある質問

Q. データガバナンスとデータマネジメントの違いは何ですか?

ガバナンスは決めごとと責任(持ち主、入力ルール、権限、点検)です。マネジメントは日々の実行(書き出す、そろえる、つなぐ、使う)です。決めごとが無い実行は翌月壊れ、実行が無い決めごとは守られません。

Q. 少人数の会社でも必要ですか?

顧客一覧がExcelとSaaSと会計で3つある、月末に手で社名を直している、SaaSの管理者を誰も書けない、のどれかがあれば必要です。委員会は作らず、持ち主・実務・点検の3役から始めます。

Q. 最初に決めるデータは何がよいですか?

会議で「どっちが正しいの」が出るデータです。多くの会社では顧客マスタです。商品、請求先、社員名簿でも構いません。1つ決めて1周回してから、隣を足します。

Q. CDOやガバナンス委員会は要りますか?

少人数では要りません。デジタル庁のデータガバナンス・ガイドラインも、専任部門の設置自体が目的ではなく、実情に応じた体制でよい、と書いています。人名が台帳に残っていることが先です。

Q. どの製品を入れればよいですか?

空欄を手で数えられるあいだは、共有フォルダの1枚で足ります。件数が手に負えなくなったら、その列だけを監視する製品を検討します。先に製品を選ぶと、決めていない列まで取り込まれます。

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