CONCEPT — DATA MANAGEMENT
データマネジメントとは
データマネジメントとは、会社にあるデータを集め、そろえ、つなぎ、判断に使える状態を日々保つ実行のことです。新しい基盤を買う話ではありません。使っているExcelとSaaSの名前を並べ、同じ顧客が何か所に入っているか数え、月末に手で直している列を書き出す、そこから始まります。
日々の実行として何をするか
データマネジメントが扱うのは、今ある表と画面です。経営計画の文書を先に書きません。
- 集める:使っているExcel、SaaS、会計ソフト、紙の一覧を名前で並べる。
- そろえる:同じ顧客・同じ商品の呼び方を1つに決める。空欄と重複を数える。
- つなぐ:移さずに、番号の対応表で結ぶ。
- 使う:月末の一覧や週次の会議で、同じ数字を出す。
IPAの読本は、データマネジメントを「収集・整理・保存・共有・分析・活用するための体系的なプロセス管理」と書いています。DAMAの知識体系(DMBOK)は、「データとインフォメーションという資産の価値を提供し、管理し、まもり、高めるために、それらのライフサイクルを通して計画、方針、スケジュール、手順などを開発、実施、監督すること」と定義しています。少人数では、その文章を上の4動詞に落とします。
- 今使っているシステムとExcelの名前を並べて送り、どこから整えるか聞く → 画面名とファイル名を箇条書きで送ってください
なぜ今、手を動かす必要があるか
表が増えるほど、探す時間と、月末の手直しが増えます。手直しした数字は、翌月また壊れます。
- 会議の前に、営業SaaSと会計の件数を突き合わせて、社名の表記を手で直している。
- 同じ顧客が3つの画面に入り、請求先だけ古い住所のまま残っている。
- 担当が休むと、どのExcelが今月の正か分からない。
上は説明用の仮想例です。こうした手直しは、個人の器用さでは回りません。書き出した一覧と、直した列の記録が会社に残ると、翌月の同じ作業が短くなります。
デジタル庁の実践ガイドも、データマネジメントは継続的で組織的な活動であり、その場限りでは成果が出ない、と書いています。1回の掃除ではなく、毎月の手順にします。
領域:品質、マスタ、統合、メタデータ、セキュリティ
DAMAの知識体系は領域を11に分けています。少人数で先に触るのは、次の5つです。全部を同時にやりません。
- 品質:空欄、重複、日付の形式。月末に手で直している列が、品質の作業そのものです。
- マスタ:顧客、商品、請求先のように、ほかの表から参照される一覧。呼び方がばらけると、件数が合いません。
- 統合:同じ顧客を、ExcelとSaaSと会計で同じものと見分ける。移す前に、対応表を1枚作ります。
- メタデータ:列の名前、意味、更新した人、出どころ。列名だけでは「売上」が受注か計上か分かりません。
- セキュリティ:誰が開けるか、退職者のアカウントが残っていないか、渡してよい列か。
残りの領域(置き場所の設計、モデル、保管、文書、分析基盤など)は、上の5つで月末の手直しが減ってから足します。11領域を計画書に書き写す作業は、実行ではありません。
- 名寄せ → 同じ顧客を同じものと見分ける
- データクレンジング → 空欄・重複・表記の直し方
- メタデータ → 列の意味と出どころ
今週やれる3つの手順
冒頭の図の四段のうち、最初の三段は今週中に手を動かせます。使う(四段目)は、そろえた数字を次の会議に出すことです。
- 使っているシステムとExcelを全部書き出す:営業、請求、会計、在庫、勤怠、ファイル共有。個人のデスクトップにある「最終版.xlsx」も名前を書く。
- 同じ顧客が何か所に入っているか数える:任意の顧客を3社選び、各画面で社名を検索する。3か所なら3と書く。0か所なら、その画面は顧客を持っていない。
- 月末に手で直している列を書き出す:社名、税区分、担当者、計上日など。直した理由も1行添える。
3つ書き終わると、最初に触る場所が見えます。手直し列が多く、かつ同じ顧客が3か所以上ある表が、最初の対象です。
- データの一元管理 → 正の置き場所を一つに決める
- TOC分析 5万円(2時間)で、最初にそろえる表を1つにする → システム名とExcel名を並べて送ると、どこから数えるかを切ります
データ運用・データ基盤との違い
似た言葉が並ぶので、この記事が受け持つ範囲を短く切ります。本文は重ねません。
- データマネジメント:表を書き出し、そろえ、つなぎ、判断に使う日々の実行。この記事の範囲。
- データガバナンス:持ち主、入力ルール、権限、点検の決めごと。別記事。
- データ運用(データオペレーション):数字を見たあと、誰がいつ動くかまでを一つの流れとして回す仕事。
- データ基盤:置き場所と取り込みの仕組み。集める・そろえるの土台。基盤が無くても、今週の3手順は始められます。
基盤を先に買うと、そろっていない列が新しい置き場所へコピーされます。運用の設計を先に書くと、手を動かす場所が会議の話で終わります。先に、今ある表を並べて数えます。
- データガバナンス → 決めごとと責任の側
人材:専任が居なくても回す
IPAのスキル標準は、スチュワード、エンジニア、アーキテクトなどの役割を分けています。少人数では、役割名より「誰が何を今週やるか」を先に書きます。
- 書き出す人:全部署の画面名とファイル名を集める。事務か情シス。
- 数える人:同じ顧客の箇所と、月末の手直し列を数える。その表を一番開いている人。
- 残す人:直した列と直し方を台帳に書く。書き出す人と同じでもよい。
分析の専門家がいなくても、3つの手順は終わります。専門家が要るのは、対応表では追いつかない件数になったときです。その判断は、数えた数字を見てからにします。
直し方を、担当者の頭から会社の直し台帳へ移す
「青木は会計ではカタカナ」が担当者の頭にだけあると、その人が休んだ月末に件数がずれます。直した列と直し方は、共有フォルダの「直し台帳」に残します。
台帳の1行は、対象の表、列名、直す前の値の例、直したあとの値、直す理由、直した人、直した日です。AIに月末の一覧を作らせるときも、この台帳の直し方を先に渡します。チャットの「いつものやつ」は、台帳の行番号に置き換えます。
翌月の同じ作業は、台帳を開いて同じ行を適用するところから始めます。新しく直した列は、その日のうちに行を足します。
よくある質問
Q. データマネジメントとデータガバナンスの違いは何ですか?
マネジメントは日々の実行(書き出す、そろえる、つなぐ、使う)です。ガバナンスは決めごとと責任(持ち主、入力ルール、権限、点検)です。実行だけだと翌月壊れ、決めごとだけだと誰も守りません。
Q. データ基盤が無くても始められますか?
始められます。今週の3手順は、今あるExcelとSaaSの名前を並べ、同じ顧客の箇所を数え、手直し列を書くことです。基盤は、手作業が重くなった場所に後から足します。
Q. データ運用(データオペレーション)との違いは何ですか?
データマネジメントは、表をそろえて判断に使える状態にする実行です。データ運用は、そろった数字を見たあと、誰がいつ動くかまでを一つの流れとして回す仕事です。数字が揃っても、次の行動が決まっていなければ運用側の話になります。
Q. どの領域から手を付けますか?
月末に手で直している列(品質)と、同じ顧客が何か所もある一覧(マスタと統合)からです。11領域を計画書に書き写す作業は後回しにします。
Q. 人材は専任が必要ですか?
少人数では不要です。書き出す人、数える人、残す人を名前で決めます。同じ人が兼ねても構いません。件数が対応表で追いつかなくなったら、専門家の要否をその数字で判断します。
今使っているシステムとExcelの名前を並べて送る
画面名とファイル名を箇条書きで送ってください。どこから数えるかを切ります。継続支援は範囲と体制で変わるため、個別にお見積りします。