CONCEPT — RECORD MATCHING
名寄せとは
名寄せとは、別々に登録された同じ顧客や取引先の記録を見つけ出し、一つにまとめる作業です。たとえば「株式会社サンプル」「(株)サンプル」「サンプル株式会社 本社」が、営業の一覧、会計ソフト、問い合わせ履歴にそれぞれ登録されていると、同じ会社への請求や売上の集計がずれます。名寄せはこうしたずれを直す作業ですが、一度まとめただけでは、翌月の新規登録でまた割れます。この記事では、名寄せの意味、表記のそろえ方、照合キーの決め方、6つの手順に加えて、割れ続けるのを止める入口の閉じ方まで解説します。
名寄せとは
名寄せとは、複数の一覧やシステムに別々に登録された、同じ人・同じ会社の記録を見つけ出し、一つにまとめる作業です。英語ではデデュープ(deduplication)やレコードマッチングと呼ばれます。
もともとは、金融機関が同じ人の複数の口座をまとめて把握する作業や、自治体が同じ人の土地や建物を一覧にした名寄帳のように、「同じ名義のものを寄せ集める」ことを指す言葉です。企業のデータ整理では、顧客、取引先、商品、従業員などの記録の重複をなくす意味で使われます。
名寄せが必要になるのは、同じ相手が複数の入口から登録されるからです。営業が名刺から登録し、経理が請求のために登録し、サポートが問い合わせのたびに登録する。それぞれの担当は正しく仕事をしていても、全体として見ると同じ会社が三つの記録に割れています。
名寄せをしないと起きること
記録が割れたままだと、次のような困りごとが起きます。どれも、担当者の手作業で毎回埋め合わせていることが多いものです。
- 集計がずれる:同じ会社の売上が三つに分かれ、取引額の大きい顧客が上位に出てこない。
- 連絡が重なる:同じ担当者に、別々の部署から同じ案内が届く。
- 請求と入金が合わない:請求先の記録と入金の記録が別の名前で登録され、照合に時間がかかる。
- 変更が伝わらない:移転や社名変更を一つの記録だけ直し、ほかの記録は古いまま残る。
- AIや分析に使えない:同じ相手が別々の記録として数えられ、分析の結果も、AIに渡す情報もずれる。
担当者が毎月の集計のたびに「この二つは同じ会社」と頭の中で寄せているなら、名寄せは人の記憶の中で行われています。その担当者が異動すると、集計の数字が変わってしまいます。
比べる前に、表記をそろえる
名寄せの精度は、比べる前に書き方をそろえる作業(正規化)でほぼ決まります。同じ会社でも、記録によって書き方が違うからです。
- 会社名:「(株)」「㈱」「株式会社」を一つにそろえる。会社名の前に付くか後ろに付くかの違いも同じ扱いにする。
- 全角と半角:英数字、カタカナ、記号の全角・半角をそろえる。
- 空白と記号:会社名の中の空白、ハイフン、中黒の有無をそろえる。
- 住所:「1丁目2番3号」「1-2-3」の書き方をそろえ、ビル名や階数の有無で別扱いにしない。
- 電話番号とメールアドレス:電話番号はハイフンと空白を除き、メールアドレスは小文字にそろえる。
そろえた結果は元の記録を上書きせず、比べるための別の列に作ります。元の書き方が必要になる場面(宛名の印刷など)があるためです。そろえ方の決まりは、一覧にして残しておきます。決まりが担当者の頭の中にあると、次の名寄せで結果が変わります。
照合キーの決め方:何が同じなら同じ相手か
表記をそろえたら、どの項目が一致すれば同じ相手とみなすか(照合キー)を決めます。
- 法人番号:国税庁が法人に指定する13桁の番号で、あれば最も確実なキーです。ただし、過去の記録には入っていないことが多いので、名寄せをきっかけに付け足していきます。
- 会社名と住所の組み合わせ:会社名だけだと、同じ名前の別会社や、支店を区別できません。住所と組み合わせて使います。
- 電話番号:代表番号と直通番号が混ざるので、単独では決め手にしません。
- メールアドレス:個人の宛先は、その人が異動や退職をすると使えなくなります。個人の名寄せには強いキーですが、会社の名寄せには補助として使います。
実務では「法人番号が一致すれば同じ」「会社名と住所が一致すれば同じ候補」「会社名と電話番号が一致すれば同じ候補」のように、確実さの段階をつけて決めます。一つの項目の一致だけで自動でまとめると、別の会社を一つにしてしまう誤りが起き、元に戻すのが大変です。
名寄せの進め方:6つの手順
冒頭の図の順番で進めます。いきなりツールで一致の候補を出すより、先に目的と決まりを決めるほうが、やり直しが少なくなります。
- 手順1 目的と範囲を決める:請求の正確さのためか、営業の重複連絡をなくすためか、分析のためか。目的によって、まとめる対象(会社単位か、支店単位か、担当者単位か)が変わります。
- 手順2 表記をそろえる:前の節のそろえ方で、比べるための列を作ります。
- 手順3 照合キーを決める:確実さの段階をつけて、どの一致なら同じ相手とみなすかを決めます。
- 手順4 同じ候補を一覧にする:キーが完全に一致する組と、似ているが確信が持てない組を分けて出します。
- 手順5 人が確かめて統合する:候補を担当者が確かめ、残す記録と消す記録を決めます。消す記録の番号と残す記録の番号の対応は、必ず残します。
- 手順6 入口を閉じる:新しく登録する前に既存の記録を検索する手順を入れ、登録の入口を絞ります。
手順5で、消す記録の番号を捨ててしまうと、過去の請求書や履歴から辿れなくなります。古い番号から新しい番号への対応表を残しておけば、ほかのシステムに古い番号が残っていても後から寄せられます。
Excelでの名寄せと、ツールの使い分け
名寄せは、件数と頻度によって道具を選びます。
- Excelやスプレッドシート:数百件から数千件程度で、一回きりなら、表記をそろえる関数と並べ替え、重複の確認で進められます。ただし、似ている組(表記の少し違う組)を見つけるのは苦手です。
- CRMやSFAの重複チェック機能:登録のときに重複の候補を出す機能があれば、入口を閉じる手順6に使えます。
- 名寄せ専用のツールやサービス:件数が多い、似ている組を点数で出したい、住所や法人番号の外部データと突き合わせたい、という場合に向きます。
どの道具を使っても、照合キーの決め方と、最後に人が確かめる工程は省けません。ツールが出すのは「同じかもしれない候補」までで、同じ相手かどうかを決めるのは、取引の実態を知っている人です。
名寄せが一度で終わらない理由
名寄せを一度きれいにやっても、数か月後にはまた重複が増えている、ということがよく起きます。原因は、記録を作る入口が変わっていないことです。
名寄せは、割れてしまった記録を後から直す作業です。割れる原因である、複数の入口からの登録、登録前に既存を探さない手順、誰が正の記録を持つかが決まっていないこと、がそのままなら、同じ作業を毎年繰り返すことになります。
sento.groupでは、名寄せの精度を上げるより先に、どの記録を正とするか、誰が登録するか、変更をどう伝えるかを決めることを勧めています。これはマスタデータの整備にあたります。名寄せを、担当者が毎月頭の中で行う作業から、会社の仕組みとして残る決まりに変えるということです。
- 顧客IDがシステムごとにバラバラ → 全部を一つにまとめる前に、対応表でつなぐ進め方
- マスタデータ管理とは →
データクレンジング・マスタ整備との関係
名寄せは、データを整える作業の中の一つです。似た言葉との関係を整理しておくと、どこから手を付けるかを決めやすくなります。
- データクレンジング:表記ゆれ、欠損、誤り、重複など、データの汚れを直す作業の全体。名寄せは、このうち重複を直す作業です。
- 正規化:書き方を一つにそろえる作業。名寄せの手順2にあたります。
- マスタ整備:正とする一覧と、登録と更新の決まりを作る作業。名寄せで直した状態を保つ役割です。
よくある質問
Q. 名寄せとは簡単に言うと何ですか?
別々に登録された同じ人や同じ会社の記録を見つけて、一つにまとめる作業です。顧客の一覧、会計ソフト、問い合わせ履歴などに同じ会社が別々に登録されているとき、それを一つの記録として扱えるようにします。
Q. 名寄せとデータクレンジングの違いは何ですか?
データクレンジングは、表記ゆれ、欠損、誤り、重複など、データの汚れを直す作業の全体です。名寄せは、そのうち重複した記録を見つけて一つにまとめる作業を指します。
Q. 名寄せはExcelでできますか?
件数が数千件程度で一回きりなら、表記をそろえる関数と並べ替えで進められます。表記の少し違う組を見つけたり、毎月繰り返したりする場合は、CRMの重複チェック機能や名寄せ用のツールを検討します。
Q. 名寄せで一番大切なことは何ですか?
比べる前に表記をそろえることと、統合したあとに入口を閉じることです。表記がそろっていないと候補が出ず、入口を閉じないと、新しい登録でまた記録が割れます。
Q. 名寄せの照合キーには何を使えばよいですか?
法人なら、法人番号が最も確実です。法人番号がない記録は、会社名と住所、会社名と電話番号のように、二つ以上の項目の一致を組み合わせて候補にし、最後は人が確かめます。
Q. 名寄せから相談できますか?
はい。名寄せの範囲と照合キーの決め方から、統合の進め方、登録の入口を閉じるマスタの決まりづくりまで一緒に進めます。お問い合わせから、対象のデータを教えてください。
名寄せを、毎月の手作業から仕組みへ
照合キーと統合の決まりを決め、登録の入口を閉じるところまで支援します。割れ続ける顧客データを、正の一覧で管理できる形に整えます。