CONCEPT — WORKFLOW DIAGRAM

業務フロー図の書き方

業務設計・仕組み化 sento.group 編集部 · · 約6分

スイムレーン形式の業務フロー図の例。営業、事務、経理の三つのレーンが横に並ぶ。営業が受注を受け、事務が受注表のExcelに入力し、経理が請求書を作って終了する。事務から経理へ渡る箇所に転記、経理の前に待ちの印が金色でついている。説明用の仮想例
図:スイムレーンの例(説明用の仮想例)。担当ごとに横の帯を分けると、受け渡しと待ちが見えます。

業務フロー図とは、ある仕事が、誰によって、どの順番で、どの情報を使って進むかを描いた図です。担当者の頭の中にある手順を一枚に出すと、転記、待ち、差し戻しといった、言葉の説明では見落としやすいつまずきが見えてきます。この記事では、書く前に決める3つのこと、最小限の記号5つ、スイムレーンで書く手順、改善の候補の見つけ方を解説します。

業務フロー図とは

業務フロー図は、仕事の流れを、作業・判断・情報の受け渡しの順番で描いた図です。業務フローチャートとも呼ばれます。担当者ごとに横の帯(レーン)を分けて描く形式を、スイムレーン図と呼びます。

業務フロー図の目的は、きれいな図を作ることではありません。仕事の流れを関係者が同じ絵で見られるようにし、どこで時間がかかり、どこで間違いが起きやすいかを話し合えるようにすることです。業務の棚卸しで「どんな仕事があるか」を一覧にしたあと、気になる仕事の「中身の流れ」を見るときに使います。

特に、複数の部署や担当をまたぐ仕事では、自分の前後で何が起きているかを誰も全体として知らないことがよくあります。一枚の図にすると、受け渡しの約束(いつ、何を、どの形で渡すか)が決まっていない箇所が見えてきます。

書く前に決める3つのこと

いきなり描き始めると、範囲が広がり、細かすぎる図になりがちです。先に次の三つを決めます。

  • 目的:転記を減らしたいのか、引き継ぎのためか、システム化の要件を決めるためか。
  • 範囲:何が起きたら始まり(開始の合図)、どうなったら終わり(終わりの状態)かを決める。例:「受注の連絡が来たら」から「請求書を送ったら」まで。
  • 粒度:一つの箱を「受注表に入力する」程度の作業にするか、もっと細かくするか。最初は一枚に収まる粗さにします。

目的によって、描くべき細かさが変わります。改善の候補を探すなら受け渡しと待ちが見える程度で十分ですし、システム化の要件を決めるなら、判断の条件や使う項目まで書く必要があります。

範囲を決めるときは、一枚の図に関わる担当が三〜五つ程度に収まるようにすると読みやすくなります。それ以上になる場合は、仕事を前半と後半に分けて、別々の図にします。

記号は5つで足りる

業務フロー図には多くの記号の決まりがありますが、社内で使う図なら、次の五つで十分です。

業務フロー図で使う最小限の記号5つの図。角の丸い形は開始・終了、四角は作業、ひし形は判断、下が波打った形はデータ・帳票、矢印は順番。下に、1枚に書く範囲は開始の合図から終わりの状態まで、とある
図:記号は5つで足ります。記号の正しさより、関係者が読めることを優先します。
  • 開始・終了(角の丸い形):始まりの合図と、終わりの状態。
  • 作業(四角):「受注表に入力する」のように、動詞で書く。
  • 判断(ひし形):分かれ道。「金額が一定以上か」のように条件を短く書く。
  • データ・帳票(下が波打った形):Excel、SaaS、紙など、情報の置き場所。
  • 矢印:次に何が起きるかの順番。

BPMNのような標準の記法もありますが、まずは社内の誰もが読める簡単な図から始め、必要になったら記法を揃えるほうが、描く人も読む人も負担が少なくなります。

スイムレーンで書く手順

次の順番で描くと、一枚に収まりやすくなります。

  • 手順1 関わる人や部署をレーンとして横に並べる。
  • 手順2 開始の合図と終わりの状態を、左端と右端に置く。
  • 手順3 実際の一件を思い浮かべながら、作業を順番に箱で置く。
  • 手順4 判断の分かれ道と、使うデータ・帳票を書き足す。
  • 手順5 担当者に見せて、実際の流れと違うところを直す。
  • 手順6 転記・待ち・差し戻しの箇所に印をつける。

手順3で「実際の一件」を思い浮かべるのがポイントです。マニュアル上の理想の流れではなく、先週起きた一件を辿ると、表に出ていない確認や手作業が出てきます。

説明用の仮想例:受注から請求までを描く

冒頭の図を、手順に沿って描いてみます。これは説明用の仮想例です。

  • レーン:営業、事務、経理の三つ。
  • 開始の合図:お客様から受注の連絡が来る。終わりの状態:請求書を送り終える。
  • 作業:営業が受注を受ける → 事務が受注表のExcelに入力する → 経理が受注表を見て請求書を作る。
  • データ:受注表のExcel。
  • 印:事務から経理へ受注表の内容を打ち直している(転記)。経理は月末にまとめて受注表を確認するので、それまで請求が止まる(待ち)。

描いてみると、改善の候補が二つ見えます。受注表と請求書の間の転記をなくせないか、月末のまとめ確認を待たずに請求できないか。どちらから手をつけるかは、件数と間違いの起きやすさで決めます。

改善の候補を見つける

描き終えたら、次の箇所に印をつけます。図の上で目に見える形にすると、改善の候補を話し合いやすくなります。

  • 転記:同じ情報を、別のファイルやシステムに打ち直している箇所。
  • 待ち:前の担当の作業が終わるまで、次の担当が止まっている箇所。
  • 差し戻し:情報が足りずに、前の担当へ戻っている箇所。
  • 二重管理:同じ情報を、二つの場所で別々に更新している箇所。
  • 人による判断:基準が書かれておらず、担当者の経験で決めている箇所。

冒頭の図は説明用の仮想例ですが、受注表への入力と請求書づくりの間に転記と待ちがある、というように、印は具体的な箇所につけます。印がついた箇所のうち、頻度が高く、間違いが起きやすいものから手をつけます。

よくある失敗

業務フロー図づくりで起きやすい失敗は、次のとおりです。

  • 理想の流れを描く:本来こうあるべき、という流れを描いてしまい、実際のつまずきが見えない。
  • 細かすぎる:クリック単位まで描き、一枚に収まらず誰も読まない。
  • 例外を全部入れる:めったに起きない例外まで描き、本筋が見えなくなる。例外は別の図にするか、注記にとどめます。
  • 描いて終わる:図を描いたことに満足し、印をつけて改善を決めるところまで進まない。

業務フロー図は、一度描いたら終わりではありません。改善した後の流れを描き直すと、変化を関係者と確かめられます。

描いた図を使い続ける

業務フロー図は、描いた後の使い方で価値が変わります。

  • 改善の前後を比べる:改善した後の流れを描き直し、転記や待ちが減ったかを関係者と確かめる。
  • 引き継ぎの資料にする:新しく担当になった人が、仕事の全体と前後の担当を一枚で把握できる。
  • 要件定義の材料にする:仕組み化する範囲と、使うデータの置き場所を、図の上で示せる。

図はファイル名に対象の業務と日付を入れ、共有の場所に置きます。業務が変わったら描き直し、古い図は残しておくと、変化の経緯を後から辿れます。

棚卸し・IPOA・要件定義とのつながり

業務フロー図は、ほかの整理の方法と組み合わせると力を発揮します。

業務の棚卸しで仕事の一覧を作り、気になる仕事を業務フロー図で詳しく見る。図の中の一つひとつの作業は、IPOA(Input・Process・Output・Action)で、何を受け取り、どう処理し、何を渡し、受け取った人が何をするかに分けられます。そのうえで、仕組み化する範囲を決めるのが要件定義です。業務フロー図は、その真ん中で「今の流れ」を共通の絵にする役割を担います。

よくある質問

Q. 業務フロー図はどんなツールで書けばよいですか?

最初は紙やホワイトボード、スプレッドシートでもかまいません。関係者と一緒に直しながら描くことが大切なので、全員が触れるツールを選びます。清書が必要になったら、作図ツールに移します。

Q. BPMNなどの標準記法は必要ですか?

社内で改善を話し合うためなら、記号5つの簡単な図で十分なことが多いです。システム開発の要件として外部と共有する場合など、厳密さが必要になった段階で記法を揃えます。

Q. 誰が書けばよいですか?

実際にその仕事をしている担当者と、流れを整理する人が一緒に描くのが確実です。担当者だけだと当たり前の作業が抜けやすく、整理する人だけだと実際の流れとずれやすくなります。

Q. 例外の処理はどう描けばよいですか?

まずは一番よく起きる流れを描き、例外は注記にとどめます。例外が多く、それ自体が負担になっている場合は、例外の流れだけを別の図にします。

Q. 業務フロー図はどのくらいの時間で描けますか?

範囲を一つの業務に絞り、記号5つの粗さで描くなら、担当者と一緒に一回の打ち合わせで下書きができることが多いです。そのあと、実際の一件と照らして直す時間をとります。

Q. 業務フロー図づくりから相談できますか?

はい。業務の棚卸しから、気になる仕事のフロー図づくり、改善の候補の選び方、仕組み化の要件定義まで一緒に進めます。

業務の流れを、一枚の図から整える

担当者の頭の中にある手順を一枚に描き、転記や待ちから改善の候補を一緒に選びます。仕組み化の要件定義まで支援します。

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