CONCEPT — FISHBONE DIAGRAM
特性要因図(フィッシュボーン図)とは:書き方の5つの手順と、事務で使う要因の分け方
特性要因図とは、困っている結果(特性)を右端に書き、その原因の候補(要因)を、魚の骨のように大きな分類から細かい中身へ枝分かれさせて並べた図のことです。形が魚の骨に似ているのでフィッシュボーン図とも呼ばれ、考案した石川馨の名前から、海外では石川ダイアグラムとも呼ばれます。工場の不良の原因を探す図として広まりましたが、締めの遅れや入力のミスのような事務の困りごとにも使えます。
特性要因図とは:結果と原因の候補を、魚の骨の形に並べる図
特性要因図は、「何が困っているか」と「なぜそうなるのか」の関係を1枚に書く図です。品質管理の世界では、QC七つ道具と呼ばれる基本の道具の1つに数えられています。各部には次の名前があります。
- 特性(魚の頭):困っている結果です。「月末の締めが3営業日遅れる」のように、数えられる形で1つだけ書きます。
- 背骨:左から特性へ向かう太い矢印です。原因が流れ込んで結果になる向きを表します。
- 大骨:背骨につながる斜めの線で、原因の候補の分類を書きます。製造なら人・機械・方法・材料、事務なら人・手順・道具・データのような分け方です。
- 小骨(中骨・孫骨):大骨につながる線で、分類の中の具体的な候補を書きます。小骨にさらに細かい骨を足して、候補を掘り下げることもあります。
特性要因図は、原因の候補を出し切るための図です。候補を全部並べてから、どれが本当に効いているかを記録で確かめる、という2段に分けて使います。
遅れている業務やくり返し起きているミスがあれば、それを1つ書いて送ってください。「月末の締めが遅れる」「見積の送付が遅れる」のような1つがあれば、特性要因図の骨を一緒に立てます。
- 遅れている業務を1つ書いて送り、特性要因図の骨を一緒に立てる → 「何が・どれくらい遅れるか」が分かる1行で送ってください
- なぜなぜ分析とは →
月末の締めが遅れる例で見る、書き方の5つの手順
経理の月末の締めが、予定より3営業日遅れる会社を説明用の仮想例にして、特性要因図を書く手順を5つに分けます。2〜4人で、1回45分ほどを目安にします。
- 1 特性を1つ決めて右端に書く:「月末の締めが遅い」より「月末の締めが予定より3営業日遅れる」と、どれくらいかが分かる形で書きます。困っている結果が2つあるときは、図を2枚に分けます。
- 2 背骨を引く:紙やホワイトボードの左端から、特性の箱へ向かって太い矢印を1本引きます。
- 3 大骨の分類を決める:背骨の上下に4本前後の大骨を引き、分類の名前を書きます。仮想例では、人・手順・道具・データの4本にしました。どの分類にも入らない候補が多く出たら、大骨を1本足します。
- 4 小骨に候補を書く:参加者が付箋に1枚1つずつ候補を書き、当てはまる大骨の近くに貼ります。仮想例では「確認できるのが経理の1人だけ」「銀行の明細を手で打ち込む」「取引先の名前の書き方がばらばら」などが出ました。1つの候補に「なぜそうなるか」を問うて、小骨の先に孫骨として足していきます。
- 5 記録で確かめて印を付ける:並んだ候補のうち、効いていそうなものを3つ前後選び、記録を開いて本当かを確かめます。銀行の明細の打ち込みに毎月何時間かかっているか、作業の記録から数えます。確かめて効いていた候補に丸を付けます。
4の段階では、出た候補をその場で否定しません。「それは関係ない」と言うと、ほかの人が候補を出さなくなります。候補を消すのは、5で記録を確かめたあとにします。
候補の書き方は「〜が足りない」「〜が悪い」より、「銀行の明細を手で打ち込む」「経費精算の締切が守られない」のように、何がどうなっているかを書きます。どの記録を開けば確かめられるかが、書いた時点で分かります。
要因の分け方:製造の4Mと、事務で使う分け方の例
大骨の分類は、決まった正解があるものではありません。製造の現場でよく使われる分け方と、事務の業務で使うときの分け方の例を並べます。
- 4M(製造):人(Man)・機械(Machine)・方法(Method)・材料(Material)の4つです。工場の不良や設備の止まりの原因を探すときによく使われます。
- 5M1E(製造):4Mに、測定(Measurement)と環境(Environment)を足した6つです。検査の誤差や、温度・湿度で品質が変わる工程に向いています。
- 事務の分け方の例(説明用):人・手順・道具・データの4つです。締めの遅れ、入力のミス、承認の止まりに使います。
- 問い合わせ対応の分け方の例(説明用):受付の窓口・回答の手順・使う画面・お客様から届く情報の4つです。回答の遅れや、同じ質問のくり返しに使います。
品質管理の団体である米国品質協会(ASQ)の解説は、石川馨が6つのMを分類の例として示しながら、分類の名前は対象に合わせて工夫するよう勧めていたと紹介しています。事務の業務で「機械」「材料」が当てはまらないときは、自分たちの仕事で原因が入り込む場所の名前に変えます。
事務の例の4つは、次のような候補を入れる箱として使います。人は担当の人数・経験・休み、手順は作業の順番・締切・承認のルール、道具は会計ソフト・Excel・紙の書類、データは取引先の名前の書き方や、届く書類の形式です。
1つの候補が2つの大骨にまたがるときは、両方に書いてかまいません。「会計ソフトとExcelに二重に入力する」は、道具にも手順にも入ります。
管理用と解析用:同じ形の図を2つの目的で使う
特性要因図には、問題の原因を探すために書く図と、日々の仕事で守ることを並べておくための図の2つの使い方があります。日本語版ウィキペディアの「特性要因図」の項目も、目的別に解析用と管理用を分けて説明しています。
- 解析用:いま起きている問題の原因の候補を探すための図です。この記事の5つの手順は、解析用の書き方です。候補を確かめたら、図は分析の記録として残します。
- 管理用:毎月同じ結果を出すために、大骨と小骨に「守ること」を並べておく図です。月末の締めなら、「経費精算の締切は毎月25日」「銀行の明細は会計ソフトの連携で取り込む」のように、決まりを骨に書いて、締めの担当の席の近くに貼っておきます。
解析用の図で見つけた原因に手を打ったら、その対策を管理用の図に書き写すと、次の担当者にも何を守ればよいかが伝わります。決まりを文章の手順書にまとめるときは、業務標準化の進め方が使えます。
Excel・PowerPoint・紙で書くときのコツ
候補を出し合う段階と、清書して残す段階で、向いている道具が変わります。出し合う段階は紙、清書はExcelかPowerPointを使うと、手が止まりにくくなります。
- 紙とホワイトボード:模造紙かホワイトボードに背骨と大骨だけを先に描き、候補は付箋に1枚1つ書いて貼ります。付箋は大骨の分類ごとに色を変えず、全員同じ色にすると、だれが書いたかを気にせずに出せます。
- ExcelとPowerPoint:Microsoftのヘルプでは、[挿入] タブの [図形] から図形を選び、ドラッグして描く手順が案内されています。直線を何本も続けて引くときは、図形の一覧で使う図形を右クリックして [描画モードのロック] を選ぶと、Escキーを押すまで同じ図形を続けて描けます。
- 文字の入れ方:小骨の候補は、線の上に置いたテキストボックスに書くより、四角形の図形を右クリックして [テキストの追加] で書くと、図形と文字が一緒に動きます。
- Excelで書くときは、セルの幅を狭くそろえて方眼にすると、大骨の角度と小骨の間隔をそろえやすくなります。PowerPointで候補が多くて文字が小さくなるときは、候補の多い大骨だけを別のスライドに1本ずつ描きます。
- 共有:清書した図は、候補を確かめた結果の印(丸や色)を付けてから、PDFにして共有フォルダに置きます。元のExcelやPowerPointのファイルも同じ場所に置き、次に書き直すときに使います。
特性要因図を書く専用のツールやテンプレートもありますが、最初の1枚は紙と付箋で十分です。清書に時間をかけるより、5の段階の記録の確かめに時間を使います。
自社の困りごとで骨を立ててみたいときは、遅れている業務を1つと、その業務に関わる担当の役割(経理・営業事務など)を書いて送ってください。大骨の分類を何にするかを一緒に決め、最初の候補を並べます。
- 遅れている業務と担当の役割を書いて送り、大骨の分類を一緒に決める → 例:「月末の締めが3営業日遅れる。関わるのは経理2人と営業事務1人」
なぜなぜ分析・パレート図との使い分け
特性要因図、なぜなぜ分析、パレート図は、どれも問題の原因を見つけて手を打つ1か所を決めるための道具です。得意なことが違うので、順番に組み合わせて使います。
- 特性要因図:原因の候補を、分類ごとに漏れなく並べます。原因の見当がつかないときや、候補が人によって違うときに使います。
- パレート図:種類ごとの件数を多い順に並べ、件数の多いものに絞ります。ミスや問い合わせの記録があり、種類で数えられるときに使います。
- なぜなぜ分析:1つの候補を、仕組みの原因まで深く掘ります。手を打つ候補が1つに決まったときに使います。
仮想例の月末の締めなら、まず特性要因図で候補を並べます。次に、締めが遅れた月ごとに、遅れた理由を記録から数えてパレート図にし、件数の多い2つに絞ります。最後に、いちばん件数の多い「銀行の明細の打ち込みが終わらない」に、なぜなぜ分析を使って仕組みの原因まで掘ります。
締めの遅れのように、どの工程で仕事が詰まっているかが分からないときは、制約理論の考え方で、待ちが溜まっている工程を先に1つ決めておくと、特性要因図の特性を書きやすくなります。
特性要因図でつまずきやすい点
特性要因図は、書くこと自体は短い時間でできます。書いたあとに対策へつながらない原因は、次の4つに集まります。
- 特性があいまい:「経理が大変」のような特性だと、候補が何でも入ってしまいます。何が・どれくらいの1文に書き直します。
- 候補が「〜が悪い」ばかり:「担当者の意識が低い」「システムが悪い」と書くと、確かめる記録がありません。何がどうなっているかの形に書き直します。
- 書いて終わる:候補を並べた図を会議の資料にして終わると、どの候補が本当の原因かが決まりません。5の段階の記録の確かめと、丸を付ける作業まで、同じ週のうちにやります。
- 毎回分類を変える:同じ業務の図を書くたびに大骨の分類が変わると、前の図と比べられません。業務ごとに分け方を決めたら、次の図でも同じ分け方を使います。
図と確かめた結果を、業務ごとのフォルダに1組で残す
特性要因図を書いたホワイトボードの写真が、書いた人のスマートフォンにしか無いと、半年後に同じ問題が起きたときに使えません。sento.groupでは、特性要因図を書いた日に、会社の共有フォルダの業務ごとの場所に、図と確かめた結果を1組で置いてもらいます。
置くものは3つです。清書した図のPDFと元のファイル、確かめた候補の表(候補・大骨の分類・開いた記録・数えた結果・丸を付けたか)、そして手を打った対策のメモです。ファイル名は「業務名_特性_書いた日」にそろえます。
生成AIに「この特性の原因の候補を4Mで挙げて」と頼んで候補を足した場合は、AIに渡した特性の1文と分類の名前、頼んだ文面を、確かめた候補の表の横に残します。AIが挙げた候補にはAIの印を付け、記録で確かめたかどうかを同じ表に書きます。次に別の業務で頼むときに、同じ分類と文面から始められ、どの候補がAIの案だったかも後から分かります。
最初の一歩として、sento.groupのTOC分析 5万円(2時間)は、2時間で行う入口の診断です。遅れている業務を1つと、その業務で使っているExcelや会計ソフトの名前を持ってきてください。
よくある質問
Q. 特性要因図とフィッシュボーン図は、同じものですか?
同じものです。図の形が魚の骨に似ているのでフィッシュボーン図、魚の骨図と呼ばれます。考案した石川馨の名前から、海外では石川ダイアグラム(Ishikawa diagram)とも呼ばれます。
Q. 大骨はいくつにすればよいですか?
4〜6本が書きやすい数です。製造なら4M(人・機械・方法・材料)の4本から始め、事務なら人・手順・道具・データのような4本から始めます。どの分類にも入らない候補が多く出たら、1本足します。
Q. 特性要因図は1人で書けますか?
書けますが、自分が思いつく候補だけになりやすいので、問題が起きている業務の担当者と前後の工程の担当者の2〜3人で書くと、候補が増えます。1人で書くときは、業務の記録や過去の問い合わせを見ながら候補を書きます。
Q. 特性要因図となぜなぜ分析は、どちらを先にやりますか?
原因の見当がつかないときは特性要因図を先に書いて候補を並べ、その中で確かめられた1つの候補になぜなぜ分析を使います。原因の線が1本にはっきり見えているときは、なぜなぜ分析から始めてかまいません。
Q. 特性要因図はExcelで作れますか?
作れます。[挿入] タブの [図形] から直線と四角形を選んで描き、四角形に [テキストの追加] で候補を書きます。候補を出し合う段階は紙と付箋で進め、清書だけをExcelやPowerPointでやると、早く仕上がります。
遅れている業務を1つ書いて送り、特性要因図の骨を一緒に立てる
「月末の締めが3営業日遅れる」のように、遅れている業務やくり返し起きているミスを1つ書き、関わる担当の役割を添えて送ってください。大骨の分類の案と、最初に確かめる候補の見当をお返しします。最初の一歩として、2時間で行う入口の診断、TOC分析 5万円(2時間)も選べます。