CONCEPT — WORK STANDARD
業務の標準化とは?ばらつきを減らす進め方と、揃えなくていい仕事
業務の標準化とは、同じ作業を誰がやっても同じ結果になるよう、手順と判断の分かれ道を決めて共有することです。手順書を置くこと自体が目的ではありません。担当者ごとのやり方の差を並べ、残す差と揃える差を分けて、決めた手順を1か所で更新します。
業務の標準化とは何か
業務の標準化は、同じ作業の結果が、担当者によって大きく違わない状態をつくることです。押す順番、見る画面、残す場所、判断の分かれ道を、関係者が同じ行で見られるようにします。
説明用の仮想例です。受注の返信を、担当Aはメールを見て受注表に入れ、倉庫へ電話して在庫を確認します。担当Bは同じ受注表に入れたあと、在庫システムだけを見ます。担当Cはチャットで受けて自分のメモに書き、電話で確認します。納期の返信という結果は同じでも、記録の置き場と確認の手段が違います。標準化は、この差を消すことではなく、残す差と揃える差を決めることです。
中小企業基盤整備機構のJ-Net21は、属人化を防ぎ一貫性と効率を上げるために、流れを描く、問題を見つける、手順を書く、教える、直す、の順を示しています。この記事では、その前に「3人の手順を並べて差の理由を聞く」を置きます。理由を聞かないまま手順書を書くと、現場が使わない文が残ります。
- 担当者ごとにやり方が違う作業を1つ書いて、どこから揃えるか相談する → 作業の名前と、今の担当が何人いるかが分かれば始められます
標準化・マニュアル化・効率化の違い
似た言葉は、何を揃えるかが違います。言葉を混ぜたまま始めると、手順書だけが増えて、結果のばらつきは残ります。
- 標準化:結果の揃え方と、そのための手順・判断の分かれ道を決める。決めたあとも、変えた日を書いて直す。
- マニュアル化:決めた手順を、人が読める文書や図にすること。標準化の手段の一つです。文書があるだけでは、まだ揃っていません。
- 効率化:時間や手数を減らすこと。標準化の結果として起きることがあります。速さだけを先に求めると、確認が抜けます。
- 平準化:仕事の量や時期の偏りをならすこと。月末に集中する入力を前倒しする、がこれです。やり方の統一とは別の作業です。
担当者だけが知っている手順を、ほかの人も辿れるようにすることは、標準化の目的の一つです。ただし、その状態の名前と直し方は、この記事では扱いません。ここでは、今いる担当のあいだの差を、残すか揃えるかに分けるところまでを扱います。
メリットと、起きがちな失敗
揃えると、引き継ぎのときに同じ画面を開ける、集計の列が担当でずれない、新人に渡す順が1つになる、といった変化が起きます。一方で、次の終わり方をすると、文書だけが残ります。
- 手順書を作って終わる:書いた日のやり方が凍結され、画面が変わっても文が残り、現場は見なくなります。
- 例外を全部書こうとする:年に1回の例外まで本文に入れると、毎日使う順が見えなくなります。例外は別の行に日付を付けて足します。
- 本部だけで書いて渡す:現場が「今のままで困っていない」と感じていると、書かれた順は使われません。3人の差を本人に見せてから決めます。
公益財団法人日本生産性本部が紹介した小売の例では、文字が多く更新されない手順書は使われず、あとから更新の日を決めて直した、と書かれています。更新の日が無い文書は、標準ではなく過去のメモです。
失敗のあとでも、3人の手順を並べ直すところから再開できます。文書の体裁を直すより先に、差の理由を聞き直します。
- 今ある手順書と、使っていない理由を書いて相談する → 対象の作業と、最後に文を直した日が分かれば足ります
進め方:3人の手順を並べて、差を振り分ける
同じ作業を、今やっている人に3人までやってもらいます。人数が2人なら2人で足ります。管理職の想像ではなく、手元の画面を見ながら書きます。
- 同じ作業を3人にやってもらい、手順の差を並べる:開くもの、見る数字、残す場所、判断の分かれ道を、縦に揃えて書く。
- 差の理由を「必要な差」と「ただの癖」に分ける:必要な差は、大口は在庫システムの数字が一日遅れるので電話する、のように理由が言えるもの。ただの癖は、自分のメモに書く、のように、結果が同じで後から探せないもの。
- 決めた手順を1か所に置き、変えたら日付を書く:共有フォルダの同じファイル。個人のデスクトップと、別の名前のコピーは置かない。
説明用の仮想例です。在庫の確認は、大口だけ電話、それ以外は在庫システム、と理由付きで残します。自分のメモへの転記は、受注表の同じ列へ書く、に揃えます。チャットだけで受ける担当がいるなら、受注表に行を作るところまでを共通にします。入口の違いを残すなら、その理由も同じファイルに書きます。
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標準化しないほうがいい仕事
全部を揃えると、判断で稼いでいる仕事まで型に入り、更新の手間だけが増えます。次の仕事は、無理に揃えません。
- 判断で価値を出す仕事:提案の切り口を決める、個別の契約条件を読む、初めてのトラブルの切り分け。分かれ道を全部先に書けません。
- まだ年に数回しか起きない作業:年次の制度変更、単発のイベント。手順書の更新が、実施より先に古くなります。起きた日に残したメモで足ります。
- 理由の言えない差を消すこと自体が目的の仕事:揃えたあとに誰の何が楽になるかが書けないものは、後回しにします。
揃えなくていい仕事にも、残すものはあります。使うデータの場所と、終わったあとに残すファイルの置き場です。中身の判断は人に残し、置き場だけを1つにします。
標準化した手順を、AIに渡せる形にする
揃えた手順が、担当者の個人フォルダとチャットに分かれていると、AIに渡す材料が毎回違います。渡す単位を、会社の1か所の行にします。
手順の本文、残した差の理由、最後に変えた日、対象の画面やファイル名を、同じ表の1行にします。AIに「この作業の下書きを作って」と頼むときは、個人の会話ではなく、その行を渡します。
渡してよい範囲(顧客名を出すか、金額を出すか)も、同じ行に書きます。手順が揃っていても、渡してよい列が人によって違うと、出てくる下書きが揃いません。
- AIに渡せる形になっていない → 渡すデータと、渡してよい範囲を決めるとき
- プロセスマイニングとは → 揃えたあとの実際の経路を、ログで確かめるとき
決めた手順と残した差を、担当者のメモから会社の台帳へ移す
3人で決めた手順が、各自のメモに戻ると、翌月にはまた差が開きます。決めたことと、残した差の理由を、会社の1か所に日付付きで置きます。
作業名、共通の手順、残した差とその理由、変えた日、次に見直す日を、共有の表の1行にします。見直す日は、画面が変わる予定の前後か、四半期に1回など、先に書きます。
次に別の作業を揃えるときは、その表を開いて、前回残した差の理由を読んでから3人にやってもらいます。判断の分かれ道が、担当者の頭ではなく、会社の台帳に残ります。
- RPAとは → 揃えた定型の画面操作を、ロボットに渡すか見るとき
- データオペレーションとは → 揃えた記録を、判断と次の行動まで届けるとき
よくある質問
Q. 業務の標準化とは何ですか?
同じ作業を誰がやっても同じ結果になるよう、手順と判断の分かれ道を決めて共有することです。手順書を置くこと自体が完成ではなく、変えた日を書いて直し続けることが含みます。
Q. マニュアル化との違いは何ですか?
マニュアル化は、決めた手順を文書や図にすることです。標準化は、結果の揃え方と分かれ道を決め、更新することです。文書があっても、現場が別の順でやっているなら、まだ揃っていません。
Q. 平準化との違いは何ですか?
平準化は、仕事の量や時期の偏りをならすことです。標準化は、やり方と比較の基準を揃えることです。量を分ける前に、何を1件と数えるかが揃っていないと、分けられません。
Q. どの仕事から始めますか?
今の担当が2人以上いて、やり方が違うと後工程が困る作業から始めます。同じ作業を3人にやってもらい、差の理由を必要な差とただの癖に分けます。
Q. 標準化しなくていい仕事は何ですか?
判断で価値を出す仕事と、まだ年に数回しか起きない作業です。置き場と終わったあとのファイルだけを揃え、中身の判断は人に残します。
Q. 手順書を作ったのに現場が使いません。
差の理由を聞かずに書いた文か、更新の日が無い文であることが多いです。3人の今の手順を並べ直し、残す差と揃える差を分けて、変えた日を1か所に書きます。
やり方が違う作業を1つ、どこから揃えるか見る
担当者ごとにやり方が違う作業を1つ書いて送ってください。3人の手順の並べ方と、残す差・揃える差の切り分けをお返しします。最初の1作業が決まらないときは、TOC分析 5万円(2時間) から始められます。