CONCEPT — RPA
RPAとは?できること・できないことと、向く業務の見分け方
RPA(Robotic Process Automation)とは、人がパソコンの画面で繰り返している定型の操作を、ソフトウエアのロボットが代わりに行う仕組みのことです。総務省は「RPAはこれまで人間が行ってきた定型的なパソコン操作をソフトウエアのロボットにより自動化するものです。」と書いています。この記事では、できることとできないこと、マクロ・GAS・API連携との違い、向く業務を見分ける3つの問い、最初の1作業の始め方を扱います。
RPAとは何か
RPAは、人がマウスとキーボードで行っている操作を、あらかじめ書いた手順(シナリオ)どおりに繰り返すソフトウエアです。工場の腕のロボットではなく、パソコンの中で動くロボットです。
説明用の仮想例です。毎月1日に、販売管理の画面を開き、先月の期間を入れて検索し、件数を月末のExcelへ写す作業があるとします。ログイン、期間の入力、検索、件数のコピー、Excelの同じセルへの貼り付けまでが、毎回同じなら、RPAに渡せます。金額を見て承認するか決める、は人に残します。
総務省の説明では、表計算ソフトやメール、基幹システムなど、複数のアプリケーションをまたぐ操作を自動化するとされています。画面のボタンを押す、文字を入れる、ファイルを保存する、決まった時刻に起動する、が中心です。
- 毎日やっている転記作業を1つ、手順ごとに書いて送り、RPAで足りるか聞く → 使っている画面の名前と、1回にかかるおおよその分が分かれば、3つの問いから見ます
できること
RPAが代われるのは、手順が書けて、入力の形が決まっている作業です。よく渡すのは次の3種類です。
- 画面の操作:ログイン、メニューのクリック、期間の指定、検索、保存。人が見ている画面と同じ順で押します。
- 転記:画面の数字をExcelの決まった列へ写す、メール本文の注文番号を販売管理の欄へ入れる。写す元と先が毎回同じです。
- 定型のファイル処理:決まったフォルダのCSVを開き、決まった列だけを残して保存する。ファイル名の日付の位置が決まっています。
決まった時刻に動かすこともできます。人が起動ボタンを押して隣で待つ形と、朝7時に勝手に動く形があります。どちらでも、動いた結果(成功したか、何件処理したか、どこで止まったか)を同じ場所に残します。
紙の手書きや、画像の中の文字は、RPA単体では読めません。読む必要があるときは、文字をデータにする別の手段を前に置き、RPAはそのあとの転記だけを受け持ちます。
できないこと
手順に書けないことと、目印の画面がよく変わることは、RPAに向いていません。
- 判断が要る作業:クレームの文面を読んで返す、契約の条項を見て通すか止める、例外の理由をその場で決める。分岐を全部先に書けない作業です。
- 画面が頻繁に変わる作業:ボタン名や画面の階層が月に何度も変わるSaaS、作りかけの社内画面。覚えた目印が見つからず、途中で止まります。
- 例外が多い作業:100件のうち30件が毎回違う直し方になる転記。止まるたびに人が横に付くと、手でやった方が早くなります。
1件あたりの速さでも、熟練の担当者より遅いことがあります。RPAの強みは、同じ処理を何度も休まず続けることです。件数が少ない、または毎回中身が違う作業は、渡す対象から外します。
止まって手作業に戻る失敗の型と、直す人の決め方は、RPA導入が失敗する原因の記事に分けて書いています。この記事では、入れる前の見分け方を扱います。
- RPA導入が失敗する原因 → 画面の名前が変わって止まる地点と、直す人の残し方
マクロ・GAS・API連携との違い
自動化の手段はRPAだけではありません。作業がどの画面とどのファイルのあいだで起きているかで、先に見る手段が変わります。
- Excelの中だけで、同じ列の集計や整形を繰り返している:マクロ(VBA)で足ります。Excelに付いている機能です。
- Googleのスプレッドシートとメール、カレンダーのあいだ:GASで足ることが多いです。
- 2つのSaaSに、データを渡す窓口(API)がある:画面を叩かず、窓口の決まりで渡せます。ボタン名の変更では止まりません。
- 窓口が無く、人が見ている画面しか口が無い:RPAの候補になります。
手段の優劣ではなく、作業の置き場で選びます。Excelの中の集計をRPAで画面操作すると、セルの位置がずれただけで止まります。窓口があるのに画面を叩くと、保守の場所が増えます。
API連携の窓口の確認と、GASで足る転記の切り分けは、それぞれの記事に書いています。
向く業務を見分ける3つの問い
自動化したい、と言われた作業に、次の3つを書きます。3つとも「はい」に近いほど、RPAの候補です。1つでも大きく外れるなら、先に手順を揃えるか、別の手段を見ます。
- 毎回同じ手順か:先週の5件を思い出し、押した画面とボタンの順が同じか。1件ごとに順が違うなら、まだ書けません。
- 入力の形が決まっているか:日付は「2026/09/01」のように同じ桁か、顧客名の列は毎回同じ位置か。空欄や表記ゆれが多い入力は、先に形を揃えます。
- 画面が月に何回変わるか:先月、ボタン名やメニューの位置は何回変わったか。月に2回以上変わる画面は、直す手間が先に膨らみます。
説明用の仮想例です。月末の件数転記は、手順が同じ、写す列が決まっている、販売管理の画面が年に1回しか変わらない、なら候補です。問い合わせメールの一次返信は、文面の判断が毎回違い、3つの問いの1つ目で外れます。
3つの答えを、業務名の横に一行で残します。あとから「なぜRPAにしたか」を説明する材料になります。
- 3つの問いの答えを書いて、向くか聞いてもらう → 業務名、毎回同じか、入力の形、先月の画面変更の回数
始め方
ツールを買う前に、1つの作業だけを材料にします。書く、測る、直す人を決める、の順です。
- 手順を画面ごとに書き出す:開く画面、押すボタン、入れる値、保存する場所を、画面の名前で1行ずつ書く。頭の中の「いつもの流れ」ではなく、先週やった1件を辿ります。
- 回数と時間を測る:その作業が週に何回あるか、1回何分かかったかを、時計で測る。記憶の「半日」は使いません。
- 止まったときに直す人を決める:ロボットがボタンを見失ったとき、誰が当日中に見るか、当日直せないときの手作業は何かを、動かす前に書く。
最初の1作業をどれにするか決まらないときは、TOC分析 5万円(2時間) で、詰まっている作業を1つに絞れます。毎日の転記が複数あるときは、3つの問いの点数が高く、週の回数が多い行から始めます。
継続してロボットを増やす支援は、範囲と体制で変わるため個別にお見積りします(概算です。詳細はお見積りで)。
向く/向かないの判定を、担当者の頭から会社の台帳へ移す
3つの問いの答えと、人に残す判断の条件が、担当者のメモとチャットにしか無いと、次の転記を自動化するたびに同じ議論を最初からやります。
業務名、3つの問いの答え、人に残す判断(例:10万円超は上長に回す)、直す人の名前、最後に測った回数と時間を、共有フォルダの同じ表の1行にします。次の作業を見るときは、その表を開いて同じ3問を書きます。
AIに「この転記を自動化してよいか」と聞くときも、個人の会話ではなく、その行を渡します。判定の理由が会社の台帳に残ります。
- プロセスマイニングとは → 画面操作の前後で、実際の流れがログに残っているかを見る
- 業務の標準化とは → 毎回同じ手順になっていない作業は、先に揃え方を見る
よくある質問
Q. RPAとは簡単に言うと何ですか?
人がパソコンの画面で繰り返している定型の操作を、ソフトウエアのロボットが代わりに行う仕組みです。工場のロボットではなく、画面のボタンを覚えるプログラムです。
Q. RPAでできることは何ですか?
画面のログインや検索、数字の転記、決まった形のファイル処理です。判断が要る作業、画面がよく変わる作業、手書きの読み取りは、単体では向きません。
Q. RPAとマクロ、GAS、APIの違いは何ですか?
マクロはExcelの中、GASはGoogleのスプレッドシート周辺、APIはシステムの窓口でデータを渡します。RPAは、窓口が無く画面しか口が無いときに、人が見ている操作を繰り返します。
Q. 向く業務はどう見分けますか?
毎回同じ手順か、入力の形が決まっているか、画面が月に何回変わるか、の3つを書きます。3つとも近いほど候補です。1つでも大きく外れるなら、先に手順を揃えるか、別の手段を見ます。
Q. 何から始めればよいですか?
1つの作業の手順を画面ごとに書き出し、週の回数と1回の時間を測り、止まったときに直す人を決めます。最初の1作業が決まらないときは、TOC分析から絞れます。
Q. 導入してから止まるのが心配です。
止まること自体より、止まった地点と直す人が無いことが問題になります。失敗の型と直し方は、RPA導入が失敗する原因の記事に分けて書いています。
毎日の転記が、RPAで足りるか聞く
毎日やっている転記作業を1つ、手順ごとに書いて送ってください。3つの問いと、マクロ・GAS・APIで足りるかの切り分けをお返しします。最初の1作業が決まらないときは、TOC分析 5万円(2時間) から始められます。