CONCEPT — WORK INVENTORY
業務の棚卸しのやり方
業務の棚卸しとは、日々の仕事を一つずつ書き出し、何のために、誰が、どの情報を使って、何を作っているのかを見える化する作業です。うまく進めるコツは、業務名を並べるだけで終わらせず、一つひとつをInput(使う情報)・Process(手順)・Output(作るもの)に分け、さらにそのOutputを受け取った人が何をするか(Action)まで書くことです。そうすると、なくせる仕事、まとめられる仕事、仕組みやAIに任せられる仕事が見分けやすくなります。
業務の棚卸しとは
業務の棚卸しとは、部署やチームが行っている仕事を洗い出し、内容・担当・頻度・使う情報などを一覧にして見える化する作業です。在庫の棚卸しで「何が、どこに、いくつあるか」を数えるように、仕事についても「何を、誰が、どのくらい、何のために」行っているかを確かめます。
多くの職場では、仕事は担当者の頭の中や個人のメモにあり、全体を一覧で見たことがないまま回っています。業務の棚卸しは、改善や自動化、引き継ぎ、人の配置を考える前の、現状の地図づくりにあたります。
最初に目的を決める
棚卸しは、目的によって書く粒度と項目が変わります。始める前に、何のために棚卸しをするのかを一文で決めておきます。
- 業務の効率化:時間のかかっている作業や、重複している作業を見つけたい。
- 引き継ぎ・属人化の解消:特定の人しか分からない手順を、ほかの人ができる形にしたい。
- 自動化・AI活用の候補探し:仕組みやAIに任せられる作業を見つけたい。
- データ整理の準備:どの情報がどこで発生し、どこへ渡っているかを知りたい。
目的が決まらないまま始めると、「全部書く」こと自体が目的になり、一覧は長くなるのに使い道が決まらない、ということが起きます。
書き出す項目:IPOで分けて、受け手まで書く
業務一つにつき、次の項目を一行で書き出します。業務名と担当だけの一覧より手間はかかりますが、あとで仕分けるときの判断材料がそろいます。
- 業務名と頻度:何の仕事か、毎日・毎週・毎月などどのくらいの頻度か。
- 担当者とおおよその所要時間:誰が行い、一回あたりどのくらいかかるか(目安で構いません)。
- Input(使う情報):何を見て、どのファイルや画面から情報を取ってくるか。
- Process(手順):どんな手順で処理するか。判断が入る箇所や例外も書く。
- Output(作るもの):何を作り、どこに置く・誰に渡すか。
- 受け手と行動(Action):Outputを受け取った人が、それを使って何をするか。
- 使っているツール:Excel、SaaS、紙、メール、チャットなど。
このうち「受け手と行動」が空欄になる業務は、注意して見る価値があります。作っている資料を誰も使っていない、あるいは使い道が担当者にも分からないことがあるからです。この書き方は、sento.groupが業務設計で使うIPOA(Input・Process・Output・Action)の考え方に沿っています。
棚卸しの進め方:5つの手順
範囲を絞って始め、実際の仕事の記録をもとに書くのがコツです。
- 手順1 範囲と目的を決める:対象の部署や業務の範囲と、棚卸しの目的を一文で決めます。
- 手順2 実際の仕事を書き出す:思い出して書くのではなく、カレンダーや送ったメール、作ったファイルをもとに、一定期間に実際に行った仕事を拾います。月次や年次の仕事は別に一覧を作ります。
- 手順3 一つずつIPOで分解する:業務ごとにInput・Process・Outputを書き、判断や例外が入る箇所に印をつけます。
- 手順4 受け手に確かめる:Outputを受け取っている人に、それを何に使っているかを聞き、Actionの欄を埋めます。
- 手順5 仕分けて次の一手を決める:なくす・まとめる・仕組みにする・AIに任せる・人が残す、のどれに当たるかを決め、手を付ける順番を決めます。
手順2の期間は、週単位の繰り返しが一通り拾える長さを目安に、業務に合わせて決めてください。大切なのは、記憶ではなく記録から書くことです。記憶で書くと、例外への対応や細かな確認作業が抜け落ち、実際より簡単な仕事に見えてしまいます。
記入例:月末の請求書発行(仮想例)
説明用の仮想例として、経理担当が毎月行う請求書発行の業務を書き出してみます。
- 業務名と頻度:請求書の作成と送付/毎月末
- 担当者:経理担当
- Input:営業が共有する受注一覧のExcel、顧客の請求先情報、前月の請求書
- Process:受注一覧から当月の請求対象を拾い、会計ソフトで請求書を作る。請求先が変わった顧客は営業に確認する。
- Output:請求書のPDF、送付済みの記録
- 受け手と行動:顧客が支払いを行う/経理が入金を照合する
- 使っているツール:Excel、会計ソフト、メール
書き出してみると、Inputの受注一覧が営業の手で更新されていること、請求先の変更を毎月口頭で確認していることが見えてきます。この場合、請求書の作成そのものを自動化する前に、受注の情報と請求先の情報をどこで正として管理するかを決めるほうが効果的かもしれません。棚卸しは、手を付ける場所の優先順位を決める材料になります。
書き出したあとの仕分け方
一覧ができたら、業務ごとに次の五つのどれに当たるかを決めます。
- なくす:受け手がいない、または受け手が使っていないOutputを作っている業務。
- まとめる:同じInputを別々の人が取りに行っている、似たOutputを複数作っている業務。
- 仕組みにする:手順が決まっていて例外が少なく、転記や集計が中心の業務。表計算の関数、GAS、RPA、API連携などで置き換えられないかを検討します。
- AIに任せる:文章の要約・分類・下書きなど、決まった型はあるが判断の幅もある業務。人が確かめる工程とセットで設計します。
- 人が残す:判断や対人のやり取りが中心で、価値の大きい業務。ほかの業務を減らして、ここに時間を回します。
仕分けは一度で決めきる必要はありません。迷うものは「仕組みにする」「AIに任せる」の候補として残し、小さく試してから判断します。
棚卸しでよくある失敗
業務の棚卸しが「一覧を作って終わり」になるときは、次のような原因があります。
- 粒度がそろわない:「経理業務」と「請求書のPDF化」が同じ一覧に並ぶ。業務一つは、始まりと終わりを一回で言える大きさにそろえます。
- 記憶で書く:例外への対応や確認作業が抜け、実際より簡単に見える。
- 担当者だけで書く:受け手の使い方が分からず、なくしてよい仕事が見つからない。
- 評価に使われると受け止められる:「仕事を減らされる」「評価される」と思われると、正直な記録が集まりません。目的を最初に共有します。
- 仕分けまでやらない:一覧を作った時点で止まり、何も変わらない。
棚卸しの結果を、データ整理と自動化につなげる
IPOで書いた棚卸しの一覧は、そのまま業務とデータの地図になります。どの情報がどこで発生し、誰がどこへ転記し、どの判断に使われているかが一覧で見えるためです。
たとえば、同じInputを複数の業務が別々のファイルから取っているなら、データの正の置き場所を一つに決める候補です。Excelからの転記が多いなら、転記をなくす設計の候補です。sento.groupでは、こうした棚卸しを起点に、業務設計、データ基盤、自動化、AIの組み込みまでを一続きで支援しています。
よくある質問
Q. 業務の棚卸しにはどのくらい時間がかかりますか?
対象の範囲と業務の数によって大きく変わります。最初は一つのチームや一つの業務の流れに絞り、一定期間の実際の仕事を書き出すところから始めると、無理なく進められます。
Q. 業務棚卸しのテンプレートはありますか?
本記事の「書き出す項目」をそのままスプレッドシートの列にすれば使えます。業務名と頻度、担当者と所要時間、Input、Process、Output、受け手と行動、使っているツールの列を用意し、業務一つを一行で書きます。
Q. 業務の棚卸しと業務フロー図は、どちらを先に作るべきですか?
先に棚卸しをおすすめします。業務の一覧があると、どの業務の流れを図にすべきかを選べます。すべての業務をフロー図にする必要はなく、仕分けで「仕組みにする」「AIに任せる」に入った業務から描くと効率的です。
Q. 棚卸しの結果をAI活用につなげるには?
Processの欄に、要約・分類・下書きのように型はあるが判断の幅もある作業が書かれている業務が候補です。そのうえで、AIに渡すInputと、人が確かめるOutputを決めます。IPOAとはやAIに渡せる形になっていないもあわせてご覧ください。
Q. 業務の棚卸しを手伝ってもらうことはできますか?
はい。sento.groupでは、業務とデータの棚卸しからIPOAによる分解、データ基盤、自動化、運用の定着まで支援しています。お問い合わせから、対象にしたい業務を教えてください。
業務の棚卸しから、一緒に始める
業務の一覧づくりから、なくす・まとめる・仕組みにする判断まで。業務とデータの両方から整理します。