CONCEPT — 5 WHYS
なぜなぜ分析とは:やり方の4つの手順と、人のせいで止まらない書き方
なぜなぜ分析とは、起きた問題に「なぜ」を繰り返し問い、答えをたどって、手を打てば再発しなくなる仕組みの原因を見つける分析のやり方のことです。トヨタ自動車の生産の現場で、元副社長の大野耐一が「どんなことにもなぜを5回問う」よう説いたことで知られています。工場の設備の故障のほかに、請求書の送り忘れや入力ミスのような事務の困りごとにも、そのまま使えます。
なぜなぜ分析とは:なぜを繰り返して、仕組みの原因に着く分析
なぜなぜ分析は、問題が起きたときに「なぜそうなったか」を問い、その答えに対してまた「なぜ」を問うことを繰り返す分析のやり方です。英語では 5 Whys(5回のなぜ)と呼ばれます。目的は、手順や道具や決まりのどこを変えれば同じ問題が起きなくなるかを見つけることです。だれが悪かったかは決めません。
- 由来:トヨタ自動車の公式サイトが2006年3月に掲載した記事は、元副社長の大野耐一が、先入観を持たずに現場を見て、どんなことにもなぜを5回問うよう部下に助言していたと紹介しています。記事では、溶接ロボットが止まった理由を5回たどり、ポンプに切りくずを防ぐ網(フィルター)が付いていないという原因に着く例が書かれています。
- 大野耐一の著書『トヨタ生産方式』(ダイヤモンド社、1978年。副題は「脱規模の経営をめざして」)は、トヨタ生産方式の考え方をまとめた本として今も読まれています。
- 使える場面:機械の故障や不良品のような工場の問題のほかに、請求書の送り忘れ、二重の入力、承認の止まり、問い合わせへの回答の遅れのように、同じことがくり返し起きる事務の問題に向いています。
なぜなぜ分析で見つけたい原因は、それを変えれば問題が起きなくなる原因です。「忙しかった」「景気が悪い」のように自分たちで変えられない答えに着いたら、そこで止めずに、変えられる手順や決まりの側へ戻って問い直します。
くり返し起きている困りごとがあれば、それを1行で書いて送ってください。「請求書を送り忘れる月がある」「同じ取引先を2回登録してしまう」のような1行があれば、なぜなぜ分析を一緒に1回やります。
- くり返し起きている困りごとを1行書いて送り、なぜなぜ分析を一緒に1回やる → 「いつ・何が・どうなったか」が分かる1行で送ってください
- 特性要因図(フィッシュボーン図)とは →
手順1 問題を1文で書く:いつ・どこで・何が・どうなったか
最初の1文があいまいだと、なぜの答えが人ごとにばらばらになります。分析を始める前に、起きたことを、いつ・どこで・何が・どうなったかが入った1文に書きます。
- 悪い1文:「請求のミスが多い」。いつの、どの請求の、どんなミスかが分からないので、なぜの答えが「人が足りない」「システムが古い」のように広がります。
- 良い1文(説明用の仮想例):「10月分の請求書を、取引先のB社にだけ送っていなかった。11月10日にB社の経理から問い合わせが来て分かった。」
- 1つの文に問題を2つ入れません。「送り忘れと金額の間違いがあった」のように2つあるときは、2枚に分けて、それぞれ分析します。
- 問題の1文には、だれがやったかを書きません。名前を書くと、最初のなぜの答えがその人の行動になりやすくなります。
同じ種類の問題がいくつもあって、どれから分析するか決まらないときは、先に件数を数えます。種類ごとの件数を多い順に並べたパレート図を作ると、いちばん件数の多い1つから始められます。
手順2 なぜを繰り返す:答えは事実を1つずつ書く
問題の1文に「なぜ」を問い、答えを1つ書きます。その答えにまた「なぜ」を問い、次の答えを書きます。答えは1つのなぜに1つの事実にし、表の1行に1つずつ書いていきます。
- なぜ1:B社の請求書を、作っていなかったから。
- なぜ2:請求書を作るときに見る請求先の一覧に、B社が無かったから。
- なぜ3:B社は9月に取引が始まった新しい取引先で、一覧に足していなかったから。
- なぜ4:営業が契約を結んだときに、経理へ知らせる手順が無いから。
- 仕組みの原因:新しい契約を請求先の一覧に足す手順と、その担当が決まっていない。
答えには「〜だったから」と事実を書き、「〜かもしれない」という推測を書きません。推測しか出ないときは、その場で分析を止め、記録を確かめる担当と期限を決めます。
回数の5回は目安です。この仮想例では4回で、手順と担当を決めれば止められる原因に着きました。6回以上かかる問題もあります。回数を5回にそろえるために、意味の薄いなぜを足す必要はありません。
「担当者が気をつける」で終わる悪い例と、仕組みの原因まで行く良い例
なぜなぜ分析でいちばん多い失敗は、人の行動で答えを止めてしまうことです。同じ請求書の送り忘れを、2通りに分析して並べます。
- 悪い例:なぜ1「担当者が送り忘れたから」、なぜ2「担当者の確認が足りなかったから」で止まり、対策は「月末に担当者が気をつける」「ダブルチェックを徹底する」になります。担当が替わった月や忙しい月に、また起きます。
- 良い例:なぜ1「B社の請求書を作っていなかったから」、なぜ2「請求先の一覧にB社が無かったから」、なぜ3「新しい取引先を一覧に足していなかったから」、なぜ4「契約を結んだときに経理へ知らせる手順が無いから」まで進みます。
- 良い例の対策は、契約した日に営業が請求先の追加を申請し、経理が一覧に足すことと、毎月1日に契約の一覧と請求先の一覧の社数を比べることです。一覧に無い取引先が、月初の比較で見つかります。
悪い例の「確認が足りなかった」は事実かもしれません。そこで止めずに「なぜ確認できなかったのか」をもう一度問います。確認するための一覧が無い、比べる相手の表が無い、確認する日が決まっていない、のように手順や道具の答えが出てきます。
人の答えが出たときは、言い換えのために「同じ立場のほかの人でも、同じことが起きるか」を考えます。起きるなら、原因はその人が使っている手順や道具の側にあります。
分析の場に、その問題を起こした担当者を呼ぶときは、司会が最初に「この分析は手順を直すためにやる」と言ってから始めます。担当者は、そのとき画面で何を見て、何を見ていなかったかを話せる、いちばん大事な人です。
手順3 原因を確かめる:記録を開き、下から「だから」で読む
なぜの答えは、思い出や印象で書くと間違えます。次のなぜへ進む前に、答えが本当かを記録で確かめます。トヨタ生産方式では、現場で現物を見て確かめることが大事にされてきました。事務の仕事では、現場は画面と記録です。
- 「一覧にB社が無かった」は、請求先の一覧のファイルを開き、10月末の時点の版にB社の行が無いことを見ます。
- 「経理へ知らせる手順が無い」は、営業の手順書や契約の流れの図を開き、経理への連絡が書かれていないことを見ます。
- 確かめるときに別の事実が見つかったら、表の答えを書き直します。たとえば一覧にB社はあったのに、請求書を作る画面の絞り込みで外れていたなら、なぜ2からやり直します。
- 最後に、いちばん下の原因から上へ、「手順が無い、だから一覧に足していなかった、だから一覧に無かった、だから作っていなかった、だから送っていなかった」と読みます。どこかで「だから」がつながらなければ、その段の答えが足りません。
原因の候補が1本の線にならず、なぜ2の答えが2つも3つも出てくるときは、枝分かれさせて、それぞれ別の列で掘ります。候補が多すぎて整理できないときは、先に特性要因図で候補を人・手順・道具・データのような骨に並べてから、確かめられた候補だけになぜを繰り返すと、抜けと重なりが減ります。
分析を自社の困りごとで1回やってみたいときは、問題の1文と、関係する記録の名前(請求先の一覧、受注の台帳など)を書いて送ってください。どの記録を開けば答えを確かめられるかを一緒に決めます。
- 問題の1文と関係する記録の名前を送り、なぜなぜ分析を一緒にやる → 例:「10月分の請求書を1社に送っていなかった。記録は請求先の一覧と受注の台帳」
- 特性要因図の書き方 →
手順4 対策を決める:止めた原因に効く手を、担当と期限を付けて書く
原因が確かめられたら、その原因をなくす対策を決めます。対策は、いちばん下の仕組みの原因に効くものにし、だれが・いつまでに・何をするかと、効いたかを確かめる日を書きます。
- 応急の対策:その日のうちにやること。仮想例では、B社に10月分の請求書を送り、ほかに一覧から漏れている取引先がないか、契約の一覧と1社ずつ比べます。
- 再発を止める対策:仕組みの原因に効くこと。仮想例では、契約を結んだ日に営業が「請求先の追加」の申請を出し、経理が一覧に足す手順を手順書に書きます。担当は営業事務の1人と経理の1人、期限は12月1日です。
- 効いたかの確かめ方:毎月1日に、契約の一覧と請求先の一覧の社数を比べ、差が0社かを3か月続けて記録します。
- 横に広げる:同じ手順の抜けがほかの業務にもないかを見ます。新しい取引先を、仕入れ先の一覧や配送先の一覧にも足しているかを確かめます。
対策は、人の注意に頼るものより、手順・道具・決まりを変えるものを選びます。「気をつける」「徹底する」は、だれがいつ何をするかが書けないので、来月にもう一度確かめることができません。
決めた手順を手順書に書くときは、請求の流れを営業・営業事務・経理の列に分けて、契約の連絡から請求先の一覧への追加までの矢印を1本ずつ引いた図を添えると、手順の抜けを次の分析で見つけやすくなります。
止めてよい答えかを確かめる4つの問いと、なぜなぜ分析が向かない場面
どこで分析を止めるかは、回数で決めずに、答えの中身で決めます。いま書いた答えで止めてよいかを、次の4つの問いで確かめます。
- 問い1:その原因は、自分たちの会社の中で変えられるか。景気や取引先の都合で止まっているなら、自分たちが変えられる手順の側へ戻ります。
- 問い2:その原因をなくせば、問題の1文は起きなくなるか。
- 問い3:その原因に、担当と期限のついた対策を書けるか。
- 問い4:同じ立場のほかの人がやっても、同じ問題が起きる原因か。起きるなら仕組みの原因に着いています。起きないなら、その人だけの事情なので、もう一段なぜを問います。
なぜなぜ分析は、原因が1本の線でたどれる問題に向いています。売上が下がった、離職が増えた、のように原因がいくつも重なっている問題では、1本の線に絞ると、ほかの原因を見落とします。こうした問題は、特性要因図で候補を全部並べてから、件数や金額の大きい候補を選んで深掘りします。
1回の分析に使う時間は、問題1つにつき30分から1時間を目安に区切ります。それで原因が確かめられなければ、確かめる記録の担当と期限を決めて、次の回に持ち越します。
問題がどの工程で起きているのかが分からないときは、業務の流れの中で待ちや詰まりがどこにあるかを先に見ます。制約理論で詰まっている1つの工程を決めてから、その工程で起きる問題になぜなぜ分析を使うと、改善の手間を1か所に集められます。
なぜなぜ分析の記録を、会社の台帳に1行ずつ残す
なぜなぜ分析をやった紙やホワイトボードを消してしまうと、同じ問題が別の部署で起きたときに、また最初から分析することになります。sento.groupでは、分析を始める日に、会社の共有フォルダに「なぜなぜ分析の台帳」を1つ作ってもらいます。
台帳の列は「分析した日・問題の1文・なぜ1〜なぜ5の答え・確かめた記録・仕組みの原因・対策・担当・期限・効いたかを確かめた日と結果」の13列です。1回の分析を1行にし、効いたかを確かめた日に結果の列を埋めます。
生成AIに「この問題になぜを5回繰り返して」と頼んで答えの案を出させた場合は、AIに渡した問題の1文と頼んだ文面、AIが出した答え、記録で確かめて残した答えと捨てた答えを、同じ台帳の別のシートに残します。AIの答えは記録で確かめる前の候補として扱います。次に同じ種類の問題をAIに頼むときに、その文面と捨てた理由から始められます。
最初の一歩として、sento.groupのTOC分析 5万円(2時間)は、2時間で行う入口の診断です。くり返し起きている困りごとを1行で書いたものと、その業務で使っている一覧や台帳の名前を持ってきてください。
よくある質問
Q. なぜなぜ分析は、必ず5回なぜを繰り返すのですか?
5回は目安です。トヨタの紹介記事でも、5回たどる例が示されていますが、決まった回数を守ることより、手順や道具や決まりを変えれば止められる原因に着くことが大事です。3回で着くこともあれば、6回以上かかることもあります。
Q. なぜなぜ分析と特性要因図は、どう使い分けますか?
特性要因図は、1つの問題の原因の候補を、人・手順・道具・データのような骨に分けて漏れなく並べる図です。なぜなぜ分析は、その中から1つの候補を選んで深く掘る方法です。候補が多くて見当がつかないときは特性要因図を先に、原因の線が1本に見えるときはなぜなぜ分析から始めます。
Q. 「担当者のミス」という答えが出たら、どうすればよいですか?
そこで止めずに「なぜその人はミスをしたのか」を、もう一度問います。確認する一覧が無かった、手順書に書いていなかった、締切の前日に作業が集中していた、のように手順や道具の答えが出てくるまで続けます。
Q. 1人でなぜなぜ分析をしてもよいですか?
1人でもできますが、問題が起きた業務の担当者と、その前後の工程の担当者の2〜3人でやると、思い込みの答えに気づきやすくなります。1人でやるときは、答えを1つ書くたびに、それを確かめた記録の名前を横に書きます。
Q. なぜなぜ分析で、生成AIは使えますか?
問題の1文を渡して、なぜの答えの候補を挙げさせる使い方ができます。ただしAIは社内の記録を見ていないので、答えはすべて候補として扱い、記録を開いて確かめたものだけを分析の表に残します。
くり返し起きている困りごとを1行書いて送り、なぜなぜ分析を一緒に1回やる
「請求書を送り忘れる月がある」のように、くり返し起きている困りごとを1行で書き、その業務で使っている一覧や台帳の名前を添えて送ってください。問題の1文の書き方と、最初のなぜの答えを確かめるために開く記録の見当をお返しします。最初の一歩として、2時間で行う入口の診断、TOC分析 5万円(2時間)も選べます。