CONCEPT — HOW TO WRITE A MANUAL
業務マニュアル(手順書)の作り方:項目のテンプレートと書き方のコツ、Excel・Googleドキュメント・動画での作り方
業務マニュアルの作り方とは、ある業務を初めて担当する人が、書かれたとおりに進めれば同じ結果を出せる文書を、対象業務を選ぶところから更新の担当を決めるところまで順に作っていく手順のことです。1つの業務を1枚の手順書にし、目的・担当・手順・判断の分かれ目・例外・更新日の6つの欄を毎回同じ並びで書くと、読む人は欄の位置で必要な情報を探せます。
最初に手順書にする業務を、3つの問いで選ぶ
業務マニュアルを作り始めるとき、全部の業務を書こうとすると最初の1枚が仕上がらないまま止まります。業務の一覧を作り、次の3つの問いに当てはまるかを1業務ずつ確かめます。
- 毎月かそれより多く起きるか:請求書の発行、勤怠の締め、受注の入力のように回数の多い業務は、手順書を1枚作れば毎回の説明が要らなくなります。
- 間違えると社外に迷惑がかかるか:金額、宛先、期日を扱う業務は、確かめる手順を書いておくと間違いが減ります。
- 手順を知っている人が1人しかいないか:その人が休んだ日や辞めた日に止まる業務です。属人化がどこで起きているかの見つけ方は「属人化とは」の記事で書いています。
3つとも当てはまる業務から1枚目を作ります。年に1回しか起きない決算や、毎回やり方が変わる企画の仕事は、手順書より、過去の資料のある場所と相談する相手を書いたメモのほうが役に立ちます。
業務マニュアルと手順書の呼び分けや、マニュアルが無いときに現場で起きることは「業務マニュアルと手順書の違い」の記事で書いています。この記事では、1枚の手順書を作って使い続けるまでの手順を扱います。
- 手順書にしたい業務を1つ書いて、項目の並びを一緒に決める → 「請求書の発行」「月末の勤怠の締め」のように業務名を1つ書いて送ってください
- 属人化とは →
- 業務マニュアルと手順書の違い →
手順書のテンプレート:6つの欄と、それぞれに書くこと
手順書の欄の並びを会社で1つに決めておくと、2枚目からは欄を埋めるだけで作れます。説明用の仮想例の「請求書の発行」で、6つの欄に書くことを並べます。
- 業務名と更新日・更新担当:「手順書:請求書の発行」「更新日 ○年○月○日」「更新担当:経理の責任者」。読む人が、いつの版かと、間違いを見つけたときに誰に言えばよいかを知るための欄です。
- 目的:「月末で締めた請求書を、取引先の期日までに送る」。何を作り、誰に、いつまでに渡すかを1文で書きます。
- 担当と使うもの:「作成は営業事務、送付の承認は経理」「受注表・会計ソフト・請求書のひな形」。使う画面や表の名前は、画面に出ている文字どおりに書きます。
- 手順:「1 受注表で今月締めの行だけに絞り込む」「2 会計ソフトの請求書の画面で取引先を選ぶ」のように、番号をふって1行に1つの操作を書きます。
- 判断の分かれ目:「手順3で金額が見積書と違う場合は、送らずに営業へ確認する」。どの手順で、何を見て、どちらへ進むかを書きます。
- 例外:「取引先が様式を指定している場合は、指定の様式で作る」。いつもと違う場合と、そのときの連絡先を書きます。
Excelやスプレッドシートで作る場合は、手順の欄を「番号・操作・確かめること・画面の画像・注意」の5列の表にします。「確かめること」の列に「合計金額が受注表と同じ」のように操作のあとで見るものを書くと、手順書がそのままチェックリストとしても使えます。
判断と例外を手順の行の中に混ぜると、いつもどおりの日にも毎回その文を読むことになり、手順が長く見えます。手順の欄にはいつもどおりの流れだけを書き、判断と例外は下の欄に分けます。
書き方のコツ:1行に1つの操作、動詞で終わる文
手順書は、作った人が読むと全部分かるのに、初めての人が読むと止まる、ということが起きやすい文書です。次の書き方で、初めての人が止まる行を減らします。
- 1行に1つの操作を書く:「受注表を開いて今月の行を絞り込み、合計を確かめる」は3つの操作です。3行に分けて番号をふります。
- 動詞で終わる短い文にする:「絞り込む」「選ぶ」「保存する」のように、読む人がする動作で文を終えます。
- 画面の文字をそのまま書く:ボタンやメニューの名前は、画面に出ている文字をかぎ括弧でそのまま書きます。「保存ボタン」と書くより「『下書き保存』を押す」と書くほうが、似たボタンと取り違えにくくなります。
- 数と期日は具体的に書く:「早めに」「なるべく」は人によって受け取り方が違います。「締め日の翌営業日の15時まで」のように書きます。
- 社内の略語に説明を付ける:その部署でしか通じない略語や呼び名は、初めて出てきたところで正式な名前を括弧で添えます。
画面の操作が多い業務は、迷いやすい手順だけに画面の画像を添えます。全部の手順に画像を付けると、画面が変わるたびに全部を撮り直すことになります。画像には、押す場所を赤い枠で囲み、手順の番号を書き込みます。
Excel・Googleドキュメント・動画での作り方と、向く業務
手順書を作る道具は、読む人がどこで開くかと、どれくらいの頻度で直すかで選びます。どの道具でも、6つの欄の並びは同じにします。
- Excel:1つのブックに、表紙と目次のシートを置き、業務ごとに1シートを作ります。目次のシートから各シートへハイパーリンクを張ると、開きたい業務へすぐ移れます。手順の表は「番号・操作・確かめること・画面の画像・注意」の列にします。行と列で書くので、確かめる項目が多い経理や受発注の業務に向きます。スマートフォンでは読みにくいので、現場で手に持って読む業務には向きません。
- Googleドキュメント:6つの欄をそれぞれ見出しにして書くと、長い手順書でも欄の名前で探せます。URLで共有でき、複数の人が同時に直すことができ、版の履歴で誰がいつ何を直したかを確かめられます。文章で説明する部分が多い業務や、複数の部署で直していく手順書に向きます。
- 動画:画面の操作や、手の動きを見せる作業は、録画した動画のほうが伝わります。1本は1つの手順の区切りまでにして、短く分けます。動画だけだと、判断の分かれ目や例外を探すときに最初から見直すことになるので、6つの欄を書いた1枚の文書と組にし、手順の欄から動画へリンクを張ります。
手順書が増えて検索やアクセスの権限を管理したくなったら、社内wikiや手順書の専用ツールに移すことを考えます。その場合も、欄の並びをテンプレートとして先に決めてから移すと、移したあとに書き方がそろいます。社内wikiの作り方は「社内wikiとは」の記事で書いています。
書いたら、初めての人に使ってもらって直す
手順書は、書いた人以外が使ってみるまで仕上がりません。公開する前に、その業務をしたことの無い人に、手順書だけを見て1回やってもらいます。
- 書いた人は横で見るだけにして、口で説明しません。
- 使った人が止まった行、聞き返した行、画面を探した行に印を付けます。
- 印を付けた行を直し、別の人にもう1回使ってもらいます。2人目が止まらずに終われたら公開します。
- 本番の業務で試せない場合は、先月の1件を使って、実際の画面で同じ操作をしてもらいます。
試してみて止まった行の多くは、書いた人にとって当たり前すぎて書かなかった確認です。「ここで何を見て次へ進んでいますか」と書いた人に聞き、その答えを「確かめること」の列に足します。
書きかけの手順書があれば、そのまま送ってください。初めての人が止まりそうな行に印を付けてお返しします。
- 書きかけの手順書を送って、止まりそうな行を見てもらう → ExcelでもGoogleドキュメントでも、画面の写真でも送れます
更新が止まらない置き場所と担当の決め方
手順書は、作った日から少しずつ実際の業務とずれていきます。会計ソフトの画面が変わる、承認する人が替わる、取引先が増える、といった変化があっても手順書が直るように、置き場所と担当を公開の日に決めます。
- 置き場所を1か所にする:手順書は会社の共有フォルダか社内wikiの1か所に置き、メールの添付や個人のPCに写しを作らないことを決めます。古い写しが残ると、どれが最新かを毎回確かめることになります。
- 手順書ごとに更新担当を1人決める:その業務をいちばんよくする人を更新担当にします。担当が替わるときは、手順書の更新担当の欄も書き換えます。
- 更新のきっかけを書く:「画面が変わったとき」「ルールが変わったとき」「誰かが手順書を見て迷ったとき」の3つを、手順書を直すきっかけとして決めます。日付で決めた見直しは忘れやすいので、きっかけと組にします。
- 迷った人が書き込める場所を作る:手順書の末尾に「迷ったところ」の欄を作り、使った人が日付と一緒に書き込めるようにします。更新担当は、書き込みがあった手順書から直します。
- 引き継ぎの日に使う:担当が替わる日は、前の担当が手順書を見ながら説明し、後任が手順書だけで1回やってみます。引き継ぎ資料の作り方は「引き継ぎ資料の作り方」の記事で書いています。
手順書の一覧表を作り、生成AIへの下書きの頼み方も一緒に残す
手順書が何枚あり、どこにあって、誰が直すのかが、作った人の頭の中にしか無いと、その人が異動した月から更新が止まります。sento.groupでは、1枚目の手順書を公開する日に、会社の共有フォルダに手順書の一覧表を作ってもらいます。
一覧表の列は「業務名・手順書の場所(URL)・更新担当・更新のきっかけ・最終更新日・使った人が迷った回数」の6つです。月に1回、最終更新日が古い行と、迷った回数が多い行を見て、どの手順書から直すかを決めます。
生成AIに手順書の下書きを作らせる場合は、6つの欄のテンプレートと、録画した操作の書き起こしを渡して「この欄の並びで、1行に1つの操作で書いて」と頼みます。頼んだときの文面も一覧表と同じフォルダに置いておくと、別の人が次の手順書を作るときに同じ形の下書きが出てきます。下書きは、手順を知っている人が読み、画面の文字が合っているかを確かめてから公開します。
よくある質問
Q. 業務マニュアルと手順書は何が違いますか?
一般に、業務マニュアルは部署や業務全体の目的・流れ・ルールをまとめた文書、手順書はその中の1つの作業を始めから終わりまで書いた文書を指します。会社によって呼び方は混ざるので、社内でどちらの名前を使うかを決めておきます。
Q. 1枚の手順書を作るのに、どれくらい時間がかかりますか?
業務の長さで変わります。最初に、その業務をいつもしている人の画面を1回横で見るか録画し、6つの欄を埋めて下書きにし、初めての人に1回使ってもらって直す、という3つの段取りで進めると、どこまで終わったかが分かりやすくなります。
Q. 手順書の作成は誰が担当すべきですか?
下書きは、その業務をいつもしている人が書くのが早く正確です。忙しくて書けない場合は、別の人が横で見て書き取り、いつもしている人が読んで直します。公開したあとの更新担当も、その業務をいちばんよくする人にします。
Q. 動画のマニュアルだけで足りますか?
画面の操作や手の動きは動画で伝わりますが、判断の分かれ目や例外を探すときは文書のほうが早く見つかります。6つの欄を書いた1枚の文書と動画を組にし、文書の手順の欄から動画へリンクを張ります。
Q. 生成AIで手順書を作れますか?
録画した操作の書き起こしや、担当者に聞いた内容と、欄の並びを渡せば、下書きを作らせることができます。画面のボタン名や判断の基準が実際と合っているかは、業務を知っている人が読んで確かめてから公開します。
手順書にしたい業務を1つ書いて、項目の並びを一緒に決める
手順書にしたい業務の名前と、今その業務をしている人の人数を書いて送ってください。6つの欄の並びと、最初の1枚に書く手順の区切りをお返しします。どの業務から手順書にするかを一度に決めたい場合は、TOC分析 5万円(2時間)で業務の一覧を持ってきていただき、2時間で最初の3枚と更新担当を決めます。