CONCEPT — THEORY OF CONSTRAINTS

制約理論(TOC)とは:ボトルネックの見つけ方と、5つの集中ステップを事務の流れに当てはめるやり方

業務設計・仕組み化 sento.group 編集部 · · 約10分

受注の入力から請求書の送付までの5つの工程を左から右へ並べ、請求書の作成の前にだけ待っている書類が高く積み重なって、その工程をボトルネックとして赤い枠で囲んだ図
図:説明用の仮想例。受注から請求までの流れで、請求書の作成の前に仕掛かりが溜まっています。

制約理論(TOC)とは、仕事の流れ全体の出来高は、いちばん処理の遅い1つの工程(ボトルネック)で決まると考え、その1か所に絞って手を打つ改善の考え方のことです。イスラエルの物理学者エリヤフ・ゴールドラットが提唱し、経営危機の工場を立て直す筋のビジネス小説『ザ・ゴール』で広く知られました。工場の生産管理から生まれた考え方ですが、受注の入力から請求書の送付までのような事務の流れにもそのまま当てはまります。

ボトルネックとは:流れ全体の速さを決めている1つの工程

ボトルネックは、瓶の首のように細くなっていて、そこを通る量が全体の量を決めてしまう場所を指す言葉です。仕事の流れでは、いちばん処理できる量の少ない工程がボトルネックになります。制約理論では、このボトルネックを制約(制約条件)と呼びます。

  • 説明用の仮想例:受注の入力、納期の確認、出荷の指示、請求書の作成、請求書の送付の5つの工程があり、請求書の作成だけを経理の1人が受け持っている会社を考えます。
  • ほかの4つの工程が早く終わっても、請求書の作成を通る件数より多くの請求書は月末までに出せません。
  • 請求書の作成の前には、作成を待つ受注の書類が毎日溜まっていきます。後ろの請求書の送付の担当は、書類が届くのを待って手が空いています。

制約理論は、流れの中には必ずどこかに1つ、全体の量を決めている工程があると考えます。だから改善はその1か所から始めます。ボトルネックが解消すると、別の工程が次のボトルネックになるので、5つの集中ステップを繰り返します。

自社の業務のどこが詰まっているかが分からないときは、業務の流れを1行で書いて送ってください。「受注→納期確認→出荷→請求」のような矢印の並びと、それぞれの担当の人数があれば、待ちが溜まりそうな工程の見当を一緒に付けます。

事務の流れでボトルネックを見つける2つの目印と、確かめ方

工場ではラインの前に部品の山ができるので、ボトルネックは目で見つかります。事務の仕事では書類がフォルダやメールの受信箱に溜まるので、山が見えません。次の2つの目印で探し、数えて確かめます。

  • 目印1 待ちが溜まる場所:処理を待っている書類・依頼・メールの件数が、いつも多い工程です。共有フォルダの「未処理」の中のファイル数、承認待ちの申請の件数、担当者の受信箱の未読の件数を、工程ごとに数えます。
  • 目印2 止まると全体が止まる工程:その担当者が1日休んだら、後ろの工程が全部止まるかを考えます。止まるなら、その工程を通らないと流れが先に進まないということです。代わりの人がいない工程はここに当てはまりやすくなります。
  • 確かめ方1:1週間、毎日同じ時刻に、各工程の前で待っている件数を数えて表に書きます。件数が日ごとに増えていく工程がボトルネックの候補です。
  • 確かめ方2:同じ1週間で、各工程が1日に処理し終えた件数も数えます。処理し終えた件数がいちばん少なく、その前の待ちが増えている工程をボトルネックと判定します。

担当者に「どこが忙しいですか」と聞くと、全員が自分の工程と答えることがよくあります。忙しさの感じ方より、待っている件数のほうが比べやすいので、数えた表で判断します。

承認の工程は、承認する人が出張や会議で席を外すと待ちが溜まるので、ボトルネックになりやすい工程です。業務の一覧がまだ無い場合は、先に業務棚卸しで工程と担当を書き出しておくと、どこで数えるかが決まります。

全部を少しずつ直すより、1か所に絞る理由

業務改善を始めると、各部署から少しずつ困りごとを集めて、全部の工程を少しずつ直したくなります。制約理論では、それをしても流れ全体の出来高は増えないと考えます。

  • ボトルネックより前の工程を速くすると、ボトルネックの前で待つ書類が増えるだけです。仮想例で受注の入力を速くしても、請求書の作成の前の山が高くなるだけで、出せる請求書の数は変わりません。
  • ボトルネックより後ろの工程を速くしても、書類が届かないので手の空く時間が増えるだけです。
  • ボトルネックを1時間分速くすると、流れ全体が1時間分速くなります。ボトルネック以外の工程を1時間分速くしても、全体は速くなりません。

改善に使える人の時間とお金には限りがあるので、効き目のある1か所に集めます。全部の工程の困りごとを並べた一覧は捨てずに残し、ボトルネックが移ったときに次の候補として使います。

改善の打ち手そのものを考えるときは、ECRS(排除・結合・交換・簡素化)の問いが使えます。制約理論で「どこを直すか」を決め、ECRSで「どう直すか」を考える、という順で組み合わせます。

5つの集中ステップを、受注から請求までの仮想例で進める

ゴールドラットは、ボトルネックを改善する手順を5つの段階にまとめました。英語では Identify(見つける)、Exploit(活かす)、Subordinate(従わせる)、Elevate(強める)、そして最初に戻る、と呼ばれます。請求書の作成がボトルネックだった説明用の仮想例で、各段階でする行動を書きます。

  • 1 制約を見つける:1週間数えた表で、請求書の作成の前の待ちが毎日増えていることを確かめ、ボトルネックと決めます。
  • 2 制約を最大限に活かす:お金をかけずに、ボトルネックの担当者が請求書の作成だけに使える時間を増やします。電話の取り次ぎや経費の精算の確認を、ほかの人に移します。請求書に必要な情報が欠けた書類が届いて差し戻す回数も数え、差し戻しを減らします。
  • 3 ほかを従わせる:ほかの工程の進め方を、ボトルネックの処理の速さに合わせます。受注の入力の担当は、請求に必要な取引先コードと金額が全部そろった書類だけを請求書の作成に回します。前の工程が一度にまとめて書類を送るのをやめ、毎日決まった時刻に送ります。
  • 4 制約を強める:2と3をしても待ちが減らないときに、初めてお金や人を使います。請求書の作成を2人で受け持てるように手順書を作る、会計ソフトの請求書の機能で受注のデータを取り込む、といった打ち手です。
  • 5 次の制約へ進む:請求書の作成の前の待ちが減ったら、もう一度各工程の待ちを数えます。今度は納期の確認の前に待ちが溜まり始めていたら、そこが次のボトルネックです。1に戻ります。

2と3は、今いる人と今の道具のまま進められます。先に4のシステム導入や採用を決めると、ボトルネックの担当者の時間がほかの仕事に使われたままになり、増やした人や機能の分だけしか速くなりません。

5つの段階を自社の業務に当てはめたいときは、ボトルネックだと思う工程の名前と、その工程の担当者が1日にしているほかの仕事を書いて送ってください。2の「最大限に活かす」で外せそうな仕事を一緒に探します。

制約の種類:人と設備、取引先の数、社内のルール

ボトルネックには、人や設備の処理量のほかに、取引先の数と社内のルールの3つの原因があります。制約理論を紹介する資料では、制約を物理的な制約・市場の制約・方針の制約のように分けて説明しています。事務の仕事に置き換えると、次の3つになります。

  • 人と設備の制約:処理できる人が1人しかいない、使えるPCや会計ソフトの利用者の数が足りない。仮想例の請求書の作成はこれに当たります。
  • 取引先の数の制約:社内の工程は全部空いているのに、受注の件数そのものが少ない状態です。このときのボトルネックは社内の外にあり、営業の工程を見直すことになります。
  • 社内のルールの制約:「金額にかかわらず全部の請求書を部長が承認する」「月末にまとめて処理する」のような決まりが、流れを止めている状態です。人を増やしても速くならず、ルールを書き換えると速くなります。

社内のルールの制約は、紙の決裁が残っている会社や、昔の事故をきっかけに確認が足された業務でよく見つかります。ルールを決めた理由を調べ、今も必要かを確かめてから書き換えます。業務の流れを今の手順を前提にせず作り直す場合は、BPRの考え方が使えます。

関連する用語:ドラム・バッファー・ロープ、スループット、思考プロセス

制約理論を調べると、5つの集中ステップのほかにいくつかの用語が出てきます。事務の改善で最初に使うことは少ないので、意味を短く押さえておきます。

  • ドラム・バッファー・ロープ(DBR):ボトルネックの処理の速さを太鼓(ドラム)にして全体の歩調をそろえ、ボトルネックの前に少しだけ待ちの余裕(バッファー)を置き、最初の工程に仕事を入れる量をボトルネックの速さに縄(ロープ)でつなぐように合わせる、生産計画のやり方です。5つの集中ステップの3番目を、仕組みにしたものと考えられます。
  • スループット:販売を通じてお金を生み出す速さのことです。制約理論では、スループット・在庫(販売するものを仕入れるために投じたお金)・業務費用(在庫をスループットに変えるために使うお金)の3つの数字で改善の効果を見ます。
  • 思考プロセス:問題の原因をたどる図や、対立している意見を整理する図など、ボトルネックが社内のルールや考え方にあるときに使う道具の集まりです。
  • CCPM(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント):制約理論をプロジェクトの日程管理に当てはめたやり方です。

事務の流れで最初に使うのは、5つの集中ステップと、各工程の待ちの件数を数える表の2つで足ります。用語の詳しい説明は、日本語版ウィキペディアの「制約条件の理論」の項目にまとまっています。

制約理論でつまずきやすい点

制約理論は手順が短い分、途中で止まりやすい場所もはっきりしています。次の4つに当てはまっていないかを、進めながら確かめます。

  • 数えずに決める:「いちばん忙しそうな人の工程」をボトルネックと決めてしまうと、本当のボトルネックが別の場所に残ります。1週間の待ちの件数を数えてから決めます。
  • 2と3を飛ばして4へ進む:人を増やす、システムを入れる、をいきなり決めると、お金をかけた割に流れが速くならないことがあります。
  • ボトルネックの担当者を責める:待ちが溜まるのは、その工程の処理できる量が流れの中で一番少ないからです。担当者の手を空けるのが2の「最大限に活かす」です。
  • 1回で終える:ボトルネックが解消すると、別の工程が次のボトルネックになります。待ちの件数を数える表を続け、5の「次の制約へ進む」を繰り返します。

工程ごとの待ちの件数と判定を、会社の共有の表に残す

どの工程がボトルネックで、5つの段階のどこまで進んだかが、改善を進めた担当者の頭の中やメモにしか無いと、その人が異動したときに改善が止まります。sento.groupでは、待ちの件数を数え始める日に、会社の共有フォルダに工程の表を1つ作ってもらいます。

表の列は「工程・担当・今日待っている件数・今日処理し終えた件数・数えた日・判定(ボトルネックか)・いま進めている段階・打った手」の8つです。毎週金曜日に1行ずつ足し、月に1回、判定と打った手の列を見て、次の制約へ進むかを決めます。

生成AIに業務の流れを読ませてボトルネックの候補を挙げさせた場合は、AIに渡した業務の流れの文と頼んだ文面、AIが挙げた候補、実際に数えて確かめた結果を、同じ表の別のシートに残します。次に別の業務で同じことを頼むときに、その文面から始められます。

最初の一歩として、sento.groupのTOC分析 5万円(2時間)は、2時間で行う入口の診断です。業務の流れを1行で書いたものと、分かる範囲の担当の人数を持ってきてください。

よくある質問

Q. 制約理論とTOCは同じものですか?

同じものです。TOCは英語の Theory of Constraints の頭文字で、日本語では制約理論、または制約条件の理論と訳されます。

Q. ボトルネックとはどういう意味ですか?

瓶の首のように細くなっていて、そこを通る量が全体の量を決めてしまう場所のことです。仕事の流れでは、処理できる量がいちばん少なく、その前に待ちが溜まる工程を指します。

Q. 工場でない会社でも制約理論は使えますか?

使えます。受注から請求まで、問い合わせの受付から回答まで、採用の応募から内定までのように、工程が順につながっている仕事なら当てはめられます。事務の仕事では待ちの山が目に見えないので、工程ごとに待っている件数を数えるところから始めます。

Q. ボトルネックが2つ以上あるように見えるときは、どうすればよいですか?

1日に処理し終えた件数を工程ごとに比べ、いちばん少ない工程を先に選びます。流れ全体の量を決めているのはその1つで、もう一方はその工程が解消したあとに次のボトルネックとして扱います。

Q. 制約理論とECRSや業務改善は、どう違いますか?

制約理論は、どの工程を直すかを決める考え方です。ECRSは、決めた工程の作業をどう減らすか・まとめるかを考える問いの集まりです。業務改善を進めるときは、制約理論で直す場所を1つに絞り、ECRSで打ち手を考える、という順で組み合わせると手間が散らばりません。

止まりがちな業務の流れを1行書いて送り、ボトルネックを一緒に見る

「受注→納期確認→出荷→請求」のように、止まりがちな業務の流れを矢印でつないで1行書き、各工程の担当の人数を添えて送ってください。待ちが溜まりそうな工程と、最初に数える場所の見当をお返しします。最初の一歩として、2時間で行う入口の診断、TOC分析 5万円(2時間)も選べます。

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