CONCEPT — WORK VISUALIZATION

業務の見える化(業務可視化)とは:知りたいことから図を選び、直す箇所を決めるまでの進め方

業務設計・仕組み化 sento.group 編集部 · · 約7分

仕事ごとの時間と担当を知りたいなら業務棚卸し表、順番と待ちなら業務フロー図、受け渡しならスイムレーン図、1つの作業の材料と出来上がりならIPO図、と知りたいことと使う図を矢印で結んだ対応表
図:知りたいことと、使う図の対応。図はどれか1つから始めます。

業務の見える化(業務可視化)とは、だれがどの仕事にどれだけ時間をかけ、どんな順番で誰に渡しているかを、表や図にして関係者がいつでも見られる形にすることです。最初に「何を知りたいか」を1文で決めると、業務棚卸し表・業務フロー図・スイムレーン図・IPO図のうち、どれから描けばよいかが決まり、描いた図から直す箇所を選べます。

業務の見える化とは:仕事の時間・順番・受け渡し・中身を表と図にすること

業務の見える化は、担当者の頭の中や個人のメモにある仕事のやり方を、ほかの人が読める表や図にすることです。見える形にする対象は、大きく分けて次の4つです。

  • 仕事の量:どの仕事に、誰が、月に何回、何時間かけているか。
  • 仕事の順番:始まりから終わりまで、どの作業がどの順に起き、どこで止まって待っているか。
  • 受け渡し:誰が誰に、何(書類・データ・連絡)を渡しているか。
  • 1つの作業の中身:その作業が何を受け取り、何をして、何を作って次へ渡すか。

「業務可視化」と「業務の見える化」は、ほぼ同じ意味で使われています。区別するページでは、可視化を「隠れていたものを表や図にすること」、見える化を「それを更新し続けて、いつでも見られる状態にしておくこと」と説明することが多く、この記事では両方を含めて扱います。

見える化したい業務が決まっていれば、業務の名前を1つ書いて送ってください。どの図から始めると早いかをお返しします。

最初に、対象の業務と知りたいことを1文で書く

見える化がうまく進まない一番の理由は、「全部を見えるようにする」ことが目的になり、何に使うかが決まらないまま表を作り始めることです。始める前に、次の形で1文を書きます。

  • 形:「(業務の名前)で、(知りたいこと)を知りたい。分かったら(決めたいこと)を決める。」
  • 説明用の仮想例1:「月末の請求で、誰がどの作業に何時間かけているかを知りたい。分かったら、経理の残業を減らすために外す作業を決める。」
  • 説明用の仮想例2:「新しいお客様の受付で、申込みから初回訪問までどこで待っているかを知りたい。分かったら、受付の担当を1人にするかを決める。」
  • 説明用の仮想例3:「見積の作成で、営業と事務の間で何を何回渡しているかを知りたい。分かったら、見積システムを入れる範囲を決める。」

「決めたいこと」まで書くと、どこまで細かく見えるようにすれば足りるかが決まります。決めたいことに使わない情報は、集めずに済みます。

知りたいことで図を選ぶ:4つの手法の使い分け

1文に書いた「知りたいこと」によって、最初に作る表や図は次のように決まります。どれか1つから始め、足りないことが分かったら次の図を足します。

  • 誰がどの仕事に何時間かけているか → 業務棚卸し表。部署の仕事を1行1作業で書き出し、担当・回数・1回の時間の列から月の時間を足します。時間のかかっている仕事と、1人しかできない仕事が分かります。
  • 仕事の順番と、どこで待っているか → 業務フロー図。作業・判断・矢印で、始まりから終わりまでを描きます。止まっている箇所と、分かれ道の条件が分かります。
  • 誰が誰に、何を何回渡しているか → スイムレーン図。担当ごとの帯に作業を置き、帯をまたぐ矢印を数えます。転記や確認待ちが起きている受け渡しが分かります。
  • 1つの作業の材料と出来上がるもの → IPO図。入力(受け取るもの)・処理(すること)・出力(作って渡すもの)の3つに分けて書きます。AIや仕組みに任せられる作業かを考えるときの材料になります。

仮想例1なら業務棚卸し表、仮想例2なら業務フロー図、仮想例3ならスイムレーン図から始めます。棚卸し表で時間のかかっている作業が見つかったら、その作業だけをIPO図に分ける、のように1つの図から次の図へ進みます。

進める6つの手順:業務を1つに絞って進める

全部の部署を一度に見える化しようとすると、表を集めるだけで数か月かかり、集まったころには最初の表が古くなっています。1つの業務に絞って、次の順で進めます。

  • 1. 対象の業務を1つ選ぶ:1文に書いた業務です。担当が3人以上いて、毎月くり返す業務が向いています。
  • 2. 関わる人に、目的と使い道を伝える:何を知りたくて、分かったら何を決めるかを、表を配る前に伝えます(伝え方は次の節)。
  • 3. 材料を集める:担当者への聞き取り、1〜2週間の作業の記録、メールやチャットの履歴、使っているExcelやシステムの画面から集めます。聞き取りは、関わる人を集めた会議より、1人ずつのほうが実際のやり方が出てきます。
  • 4. 選んだ図を描く:担当者と一緒に描き、描いた図を見せて「実際と違うところ」を直してもらいます。
  • 5. 直す箇所に印を付ける:時間が長い作業、待ちが長い箇所、同じ内容を打ち直している受け渡し、1人しかできない作業に印を付けます。
  • 6. 直したあとにもう一度測る:直した作業の時間や待ちの日数を、同じやり方で測り、最初の表と並べます。

説明用の仮想例1の月末の請求なら、1週目に経理と営業の4人に聞き取り、2〜3週目の月末に作業の時間を記録し、4週目に棚卸し表を仕上げて印を付ける、という進め方になります。

現場に伝えること:使い道と、使わないことを先に言う

作業の時間や手順を書き出してもらうと、担当者は「自分の仕事ぶりを評価されるのでは」と受け取ることがあります。表を配る前に、次の3つを関わる人に伝えます。

  • 何に使うか:1文に書いた「決めたいこと」をそのまま伝えます。「経理の月末の残業を減らすために、外せる作業を探す」のように具体的に言います。
  • 誰が見るか:表や図を見る人の範囲(その部署と、決める人)を伝えます。
  • 書いてほしい細かさ:「1つの作業を15分以上かかるまとまりで」「時間は5分単位でよい」のように、記録の細かさを先に決めて伝えます。細かすぎる記録を求めると、記録そのものが仕事を増やします。

聞き取りの最後に「この作業で困っていること」を1つ聞くと、表には出てこない手戻りや、本人だけが知っている例外の処理が出てきます。

よくある失敗4つと、避け方

見える化の取り組みが途中で止まるときは、次のどれかが起きています。

  • 表を作ることが目的になる:きれいな一覧ができたのに、何も決まらずに終わります。最初の1文の「決めたいこと」を、表の一番上に書いておきます。
  • 細かさがそろわない:「請求書を作る」と「保存ボタンを押す」が同じ表に並び、時間を足せなくなります。「請求書の対応」なら「受け取る・確かめる・承認する・支払う」の4つくらいの細かさにそろえます。
  • 規程どおりの流れを描く:実際には別の順番で回っているのに、規程の流れを描いてしまいます。先月起きた1件を選び、その1件が通った順に描きます。
  • 作ったあと誰も直さない:仕事が変わっても図が古いまま残り、だれも見なくなります。業務ごとに更新する人と、次に見直す日を決めます(最後の節)。

見えた問題から、直す箇所を決める基準

印を付けた箇所を全部いっぺんに直すことはできません。次の基準で、直す順番を決めます。

  • 月の時間の合計が大きい作業:1回の時間 × 月の回数で並べ、上から見ます。
  • 1人しかできない作業:その人が休むと止まる作業は、時間が短くても先に手順を書き出します。
  • 同じ内容を打ち直している受け渡し:Excelから会計ソフトへ、メールから受注表へのように手で写している箇所は、仕組みでつなぐ候補です。
  • 戻りの多い作業:差し戻しが多い箇所は、入力の欄や確認の順番を直す候補です。

直し方は、作業をなくす、まとめる、順番を入れ替える、簡単にする、のどれかから考えます。この考え方は「ECRSとは」の記事、手順を誰がやっても同じにする方法は「業務の標準化とは」の記事、業務の流れそのものを描き直す方法は「BPRとは」の記事で書いています。

印を付けた表や図があれば、そのまま送ってください。どこから直すと効果が大きいかを一緒に決めます。

見える化した表と図を、更新する人つきの「業務台帳」に1行ずつ登録する

見える化で作った表や図が、作った人のPCや個人のフォルダにあると、その人が異動した時点で更新が止まります。会社として表と図を持ち続けるために、業務ごとに1行の台帳を作ります。

共有フォルダかスプレッドシートに「業務台帳」を1つ作り、業務ごとに1行で、業務の名前・作った表や図のファイルの場所・最後に更新した日・更新する人・次に見直す日・その業務で決めたこと、の6列を書きます。見直す日は、仕事の手順が変わりやすい業務なら3か月、変わりにくい業務なら1年のように業務ごとに決めます。

月に1回の部署の会議で、台帳の「次に見直す日」が過ぎた行だけを読み上げ、更新する人に直してもらいます。AIに業務の質問に答えさせたり手順書の下書きを作らせたりするときも、この台帳から最新の表と図を渡せるので、担当者が個人で持っている古い資料が使われずに済みます。

よくある質問

Q. 業務の可視化と見える化は違うものですか?

ほぼ同じ意味で使われています。区別する場合は、可視化を表や図にすること、見える化をそれを更新し続けていつでも見られる状態にしておくこと、と説明されることが多いです。表を作ったあとに更新する人と見直す日まで決めると、両方を満たせます。

Q. 見える化にツールは必要ですか?

最初はExcelやスプレッドシート、紙とホワイトボードで足ります。関わる人全員が開いて直せることを優先します。作業の時間を自動で記録したい、図を部署をまたいで共有したい、という必要が出てから、記録や作図の道具を選びます。

Q. どの部署から始めればよいですか?

担当が3人以上いて毎月くり返す業務があり、その部署の責任者が「分かったら決めたいこと」を持っている部署から始めます。決める人がいる部署で1つ結果が出ると、ほかの部署にも同じ進め方を説明しやすくなります。

Q. 作業時間の記録は、どのくらいの期間取ればよいですか?

毎月くり返す業務なら、月末や締め日を含む1〜2週間を記録すると、忙しい時期の作業が入ります。季節で量が変わる業務は、忙しい月と落ち着いた月の2回に分けて記録します。時間の測り方の細かい手順は「業務棚卸しのやり方」の記事で書いています。

Q. 見える化したあと、何から直せばよいか決められません。

月の時間の合計が大きい作業と、1人しかできない作業から見ます。それでも決まらないときは、最初の1文の「決めたいこと」に一番効く箇所を1つだけ選びます。全体のどこが一番詰まっているかを1か所に絞る方法として、sento.groupではTOC分析も行っています。

見える化したい業務を1つ書いて、どの図から始めるか相談する

業務の名前と、その業務で知りたいこと(時間・順番・受け渡し・作業の中身のどれか)を書いて送ってください。どの表や図から始めるか、誰に何を聞けばよいかをお返しします。全体のどこから手を付けるかを決めたい場合は、TOC分析 5万円(2時間)で、最初に手を付ける1業務に絞ります。

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