CONCEPT — APPROVAL FLOW REVIEW

承認フローの見直し方:承認者・段数・金額の線引き・差し戻しを決め直す手順

業務設計・仕組み化 sento.group 編集部 · · 約8分

どの金額でも係長・課長・部長・経理・社長の5段を回る今の経費精算の経路と、10万円未満は課長と経理、10万円以上は課長・部長・経理に分けた見直し後の経路を並べ、承認者・段数・金額の線引き・差し戻しの4項目を添えた図
図:説明用の仮想例。左が今の経路、右が金額で分けた見直し後の経路です。

承認フローの見直しとは、稟議・経費精算・購買などの申請が、誰の承認をどの順番で通って決まるかを書き出し、承認者・段数・金額の線引き・差し戻しの扱いの4つを決め直すことです。申請の種類ごとに今の経路を1枚の表にすると、中身を確かめていない段と、どの金額でも同じ段数を回している申請が見つかり、外す段と残す段を基準で決められます。

承認フローを見直すときに決め直す4つ

承認フローは、申請を出してから決まるまでに、誰がどの順番で承認するかの決まりです。見直しで決め直すのは次の4つです。この記事では、承認は申請の中身を確かめて次へ回すこと、決裁は最後にその支出や契約を決めること、回覧は承認せずに内容を知らせることとして書きます。

  • 承認者:その申請の中身(金額の妥当さ、予算の残り、取引先、契約の条件)を確かめられる人。
  • 段数:申請が決まるまでに通る承認者の数。知らせるだけでよい人は段に入れず、回覧に回します。
  • 金額の線引き:いくら以上の申請を上の役職まで回すか。金額のほかに、新しい取引先や契約期間で分ける線もあります。
  • 差し戻し:申請に直すところがあったとき、誰に戻し、直したあとどの段から承認をやり直すか。

今の承認の段数と承認者が分かっていれば、申請の種類ごとに書いて送ってください。外せる段の候補と、金額の線をどこに引くかの考え方をお返しします。

手順1:申請の種類ごとに、今の経路を5列の表にする

稟議・経費精算・購買・契約のように申請の種類を分け、種類ごとに1枚の表を作ります。実際に申請がたどっている経路を、規程と違っていてもそのまま書きます。ワークフローの画面やメールの履歴から、直近の申請を10件ほど追うと書けます。

  • 段:申請者の次から順に1、2、3と番号を振ります。
  • 承認者:役職と、今その役職にいる人の数(課長が3人いれば3人)。
  • その人が確かめていること:金額の妥当さ、予算の残り、勘定科目、取引先の与信、契約の条項など、承認者に聞いて1行で書きます。
  • 過去3か月の差し戻し回数:その段で申請を戻した回数。ワークフローの履歴か、メールで数えます。
  • その段で待った日数:前の段が承認してから、その段が承認するまでの日数。直近10件の平均を書きます。

説明用の仮想例として、社員40人の会社の経費精算を書き出すと、係長・課長・部長・経理・社長の5段を、金額に関係なく通っていました。係長の「確かめていること」は「課長と同じ内容を先に見ている」、社長は「件数が多く中身は見ていない」と書かれ、どちらも過去3か月の差し戻しは0回でした。待った日数は部長と社長の段で長く、申請から精算までの日数の大半をこの2段が占めていました。

業務の流れを図で書いておくと、表の段と図の箱を照らし合わせられます。描き方は「業務フロー図の書き方」の記事、作業の洗い出し方は「業務棚卸しのやり方」の記事で書いています。

手順2:要らない段を外す判断の基準

表の5列を見ながら、段ごとに「外す」「回覧に移す」「残す」を決めます。外すかどうかは、次の基準で決めます。

  • 外す:確かめていることが、前後の段と同じ内容になっている段。仮想例の係長がこれに当たります。
  • 外す:確かめていることが書けず、過去3か月の差し戻しが0回の段。中身を見ずに承認している可能性が高い段です。
  • 回覧に移す:知っておく必要はあるが、その人が止めることはない段。社長に毎月、承認済みの一覧をまとめて回すなら、1件ずつの承認の段からは外せます。
  • 残す:お金の支出や契約を最後に決める人の段。予算を持っている部署の長がここに入ります。
  • 残す:申請した人と、支払いや記帳をする人を分けるための段。経理の確認はこれに当たり、金額が小さくても残します。
  • 残す:会社の規程や法令で確認が求められている段。国税庁が公開している電子取引データの事務処理規程のひな形(法人の例)では、取引データを訂正・削除するときは処理責任者が申請書を出し、管理責任者が正当な理由があると認める場合だけ承認する手順が置かれています。

外す段が決まったら、その承認者本人に表を見せ、「確かめていること」が実は別にあるかを聞きます。別にあれば、その確認をどの段が引き取るかを決めてから外します。

外す段の候補が見つかった時点で、その表を送ってもらえれば、残す段と回覧に移す段の分け方を一緒に確かめます。

手順3:金額の線は、過去1年の申請の件数から引く

金額の線(いくら以上を上の役職まで回すか)は、他社の例や切りのいい数字で決めると、上の段に回る申請の数が読めません。過去1年の申請を金額の順に並べ、件数を数えてから引きます。

  • ワークフローかExcelから、過去1年の申請の金額を1列に書き出し、小さい順に並べます。
  • 1万円未満、1万〜5万円、5万〜10万円、10万〜50万円、50万円以上のように区切り、区切りごとの件数と金額の合計を数えます。
  • 説明用の仮想例では、経費精算の8割の件数が10万円未満で、金額の合計では2割ほどでした。10万円に線を引くと、部長に回る件数は5分の1になり、部長が見る金額は全体の8割のまま残ります。
  • 決めた線は、決裁権限規程(どの役職がいくらまで決められるかの表)に書き、規程と経路の設定を同じ日に変えます。
  • 金額のほかに分ける線:新しい取引先との初めての取引、1年を超える契約、予算にない支出は、金額が小さくても上の段に回す、のように種類で線を引くこともできます。

線を引いたら、線のすぐ上と下の申請を5件ずつ選び、新しい経路で誰が承認することになるかを承認者本人と確かめます。線の近くの申請を分けて出す(20万円の購入を10万円ずつ2回に分ける)ことがないよう、同じ取引先・同じ月の申請を合計して判断する決まりもこのときに書きます。

手順4:差し戻しは却下と分け、戻す先と再開する段を決める

差し戻しは、申請に直すところがあって申請者に返すこと、却下は、その申請を認めずに終えることです。2つが同じボタンや同じ言葉で扱われていると、申請者は直せば通るのか、もう出しても通らないのかが分からなくなります。

  • 戻す先:原則は申請者に戻します。前の段の承認者が直せる内容(勘定科目の付け替えなど)は、その承認者に戻す決まりにすると、申請者の手を止めずに済みます。
  • 再開する段:金額や取引先など、前の段が確かめた内容を直したときは最初の段からやり直します。添付漏れや書き間違いだけなら、戻した段から再開します。
  • 理由の残し方:「添付がない」「金額の根拠がない」「勘定科目が違う」「予算の残りが足りない」「その他」の選択肢と、1行の自由記述で残します。自由記述だけだと、後で数えられません。
  • 却下の扱い:却下した理由と、同じ内容で出し直してよい条件(来期の予算が付いたら、など)を書いて終えます。

月に1回、差し戻しの理由と段ごとの件数を数えます。同じ理由が多い段は、申請の入力欄(添付を必須にする、勘定科目を選択式にする)を直す候補です。申請者のところで起きる入力の迷いを減らす方法は「業務の標準化」の記事でも書いています。

代理承認と、新しい経路に切り替える日

段を減らすと、1人の承認者が休んだときに申請が止まりやすくなります。代理と切り替えの日は、経路と同じ日に決めます。

  • 代理承認:代理する人、代理できる期間、代理で承認してよい金額の上限を決めます。代理で承認した申請は、本人が戻った日に一覧で確かめます。
  • 不在が続くとき:決めた日数(3営業日など)承認されない申請は、自動で上の段か代理の人に回る設定にします。
  • 切り替える日:新しい経路を使い始める日を決め、その日より前に出された申請は、元の経路のまま最後まで通します。切り替えの日を全員に知らせ、規程の改定日も同じ日にします。

見直した効果は、2つの数字で測る

見直しが効いたかは、申請から決まるまでの日数と、差し戻しの率で測ります。見直す前の1か月と、切り替えてから1か月の数字を並べます。

  • 申請から決まるまでの日数:申請の種類ごとに、申請日から最後の承認日までの日数の平均。段を外した効果がここに出ます。
  • 差し戻しの率:申請の件数のうち、1回でも差し戻された件数の割合。入力欄を直した効果がここに出ます。
  • 金額の線の上に回った件数:部長や社長に回った件数が、手順3で見込んだ数に近いか。大きくずれていれば、線の位置か、申請の分け方を見直します。

数字を見る日は、月の最初の部長会など、決める人がそろう場に合わせます。データを判断に使う場の決め方は「データ活用とは」の記事で書いています。

決めた経路と線を、変更日つきの「承認ルール表」1枚に残す

見直した経路が、ワークフローの設定画面と担当者の記憶にだけあると、なぜ係長の段を外したのか、なぜ10万円に線を引いたのかが、1年後に誰にも説明できなくなります。

会社の共有フォルダに「承認ルール表」を1つ作り、申請の種類ごとに1行で、段と承認者、金額の線、差し戻しの戻し先、代理の決まりを書きます。その下に、変えた日・変えた内容・理由・決めた人の4列の変更記録を足し、手順1で作った5列の表と、手順3の金額の件数の表を同じフォルダに置きます。

申請の一次チェックをAIに手伝わせるときも、この表を渡します。「この申請はどの段まで回るか」「添付が足りているか」をAIが表の決まりで判定できるので、承認者の個人のメモや記憶に頼らずに済みます。

よくある質問

Q. 承認の段数は何段が適切ですか?

申請の種類ごとに、中身を確かめている段だけを残した数にします。金額で経路を分ければ、小さな申請は2段、大きな申請は3〜4段のように、同じ種類の申請でも段数を変えられます。

Q. 社長が全部見たいと言っています。段を外せますか?

1件ずつ承認する段から外し、承認済みの申請の一覧を毎月まとめて回す形を提案できます。一覧には金額の大きい順と、差し戻しのあった申請を並べると、社長が見たいところを短い時間で見られます。金額の線を超える申請だけは社長の段に残す、という分け方もできます。

Q. 金額の線は、他社の例を参考にしてもいいですか?

参考にはなりますが、自社の過去1年の申請の金額を並べて、線の上に何件回るかを数えてから決めます。同じ10万円の線でも、申請の金額の分布が違えば、部長に回る件数は会社ごとに大きく変わります。

Q. 差し戻しと却下は、どう使い分けますか?

直せば認められる申請は差し戻し、内容として認めない申請は却下にします。差し戻しには戻す先と再開する段を、却下には理由と出し直してよい条件を書きます。

Q. 法令や規程で、承認の段を残す必要があるものはありますか?

電子帳簿保存法に関係する取引データの訂正や削除は、その一例です。国税庁が公開している各種規程等のサンプルの「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(法人の例)」では、処理責任者が申請書を出し、管理責任者が正当な理由があると認める場合だけ承認する手順が置かれています(2026年10月31日に確認)。自社の規程にこうした承認の決まりがあるかを、見直しの前に確かめます。

Q. ワークフローのシステムを入れれば、承認フローは見直さなくていいですか?

システムに入れる経路は、今の経路をそのまま写したものになりがちです。入れる前に、この記事の手順1〜4で段と線を決めておくと、システムの設定はその表を写すだけになります。

今の承認の段数と承認者を書いて、外せる段を相談する

申請の種類(稟議・経費精算・購買など)ごとに、今の承認の段数と承認者の役職、わかれば申請から決まるまでの日数を書いて送ってください。外せる段の候補と、金額の線を引くために数える項目をお返しします。

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