CONCEPT — DATA UTILIZATION
データ活用とは:中小企業が最初の1つの判断にデータを使うまでの進め方
データ活用とは、社内にある売上・在庫・勤怠・問い合わせなどの記録を集めて数え、会社の判断や日々の作業に使うことです。分析の道具や専門の担当者をそろえる前に、データで決めたい判断を1つ選び、その判断に要るデータと置き場所と見る場を決めると、手元のExcelと販売管理の画面だけで始められます。この記事では、食品卸の発注を例にした説明用の仮想例で、その4つの手順を順に書きます。
データ活用の意味と、3つの使い道
データ活用の「データ」には、販売管理や会計のシステムに入っている数字に加えて、日報、問い合わせのメール、勤怠の打刻、Googleフォームの回答、紙の点検表も含まれます。日付と中身がそろっていれば数えられます。データ活用は、こうした記録を集めて数え、次の3つのどれかに使うことです。
- 今の状態を見る:商品ごとの今月の出荷数、部署ごとの残業時間、未対応の問い合わせの件数を、決まった日に同じ表で見ます。
- 先の数を見込む:過去12か月の出荷数から来月の発注数を、過去の受注の件数から来月の人手を見込みます。
- 作業を自動で動かす:在庫が決めた数を下回ったら担当者に知らせる、フォームの回答が届いたら台帳に1行足す、のように数が条件を満たしたときに作業を動かします。
データ分析は、集めたデータから傾向や理由を読み取る作業で、データ活用の途中の1工程です。読み取った結果を判断や作業に使うところまでを、この記事ではデータ活用と呼びます。
データで決めたい判断がすでにあれば、それを1行で書いて送ってください。その判断に要るデータと、今の置き場所から始められるかをお返しします。
中小企業のデータ活用は、閲覧と集計から始まっている
総務省の令和2年版情報通信白書は、2020年3月に企業の従業員を対象に行ったアンケートの結果として、いずれかの領域でデータを活用している企業は、大企業では約9割、中小企業でも半数を超えていると書いています。
- 分析の方法:同じ白書には、「データの閲覧」と「集計」が企業規模や産業を問わず約7割と多くなっていると書かれています。統計的な分析やAIを使った予測は、大企業と中小企業で大きな差が見られるとされています。
- 分析する人:中小企業では「各事業部門のデータ分析が専門ではない人」により分析が行われていることが多い、と書かれています。
- 中小企業の線引き:この白書では、製造業などは従業員300人未満、商業・サービス業などは100人未満を中小企業として集計しています。
白書の数字から読み取れるのは、中小企業のデータ活用の多くが、専門の担当者ではない現場の人が、表を見て数を数えるところで行われていることです。最初の判断は、この閲覧と集計で決められるものを選ぶと、新しい道具や人を待たずに始められます。
最初の判断は、回数と外れたときの痛さで選ぶ
データで決める判断の候補は、どの会社にもいくつもあります。最初の1つは、決める回数が多く、外れたときの損がお金や時間で分かる判断から選びます。毎月決めている判断なら、データを使った結果が1か月で見えます。
- 発注数:商品ごとに毎月または毎週決める。外れると欠品か売れ残りになり、金額で分かります。
- シフトの人数:曜日ごとに毎週決める。外れると残業代か、待ち時間の長さで分かります。
- 営業の訪問先:担当者ごとに毎週決める。外れると受注の件数で分かります。
- 値引きの幅:見積のたびに決める。外れると粗利の金額で分かります。
候補を書き出したら、それぞれに「年に何回決めるか」と「外れたときに何が起きるか」を1行ずつ書き、回数が多く、起きることを金額で書ける判断を1つ選びます。年に1回の設備投資や採用の判断は、データを使う価値は大きくても、結果が見えるまでに時間がかかるため、2つ目以降に回します。
判断と数字の関係を木の形に分けて整理したいときは「KPIツリーの作り方」の記事も使えます。
4つの手順を、食品卸の発注で書く
説明用の仮想例として、社員20人の食品卸が、購買担当の勘で決めていた来月の発注数を、データで決めるようにする場面で4つの手順を書きます。冒頭の図の4段と同じ順番です。
- 手順1・判断を1つに絞る:「来月、商品ごとに何ケース発注するか」に絞ります。対象は、昨年欠品か売れ残りが出た上位30品目に限ります。
- 手順2・要るデータを書き出す:判断に使うデータを、名前・今ある場所・誰が入れているかの3列で書きます。過去12か月の商品ごとの出荷数(販売管理システム、受注担当が入力)、欠品した日と品目(倉庫の日報、倉庫の担当が手書き)、取引先の特売の予定(営業担当のメール)の3つが出ました。
- 手順3・置き場所と持ち主を決める:3つのデータを、共有ドライブの「発注表」1枚に集めます。販売管理からは毎月20日に出荷数をCSVで出して貼り、日報の欠品は倉庫の担当がその日のうちに発注表の欠品の列へ入力し、特売の予定は営業担当が決まった週に入力します。発注表の持ち主は購買担当とし、20日に3つの列がそろっているかを確かめます。
- 手順4・見る場を決める:毎月25日の発注会議で、発注表を画面に映し、商品ごとに過去12か月の出荷数・欠品の日数・特売の予定を見て発注数を決めます。決めた数と、勘で決めていたら何ケースにしていたかを、同じ表の2列に書きます。
手順2で、判断に要るのに今どこにもないデータが出ることがあります。仮想例では「欠品した日」が紙の日報にしかありませんでした。この場合は、まず翌月から発注表に直接書く列を作り、過去の分は必要な品目だけ日報から拾います。
3か月続けると、データで決めた数と勘で決めていた数の差と、欠品の日数がどう変わったかが、発注表の列に残ります。続けるか、対象の品目を広げるかは、この列を見て決めます。
自社の判断で4つの手順のどこまで書けたかを送ってもらえれば、止まっている手順から一緒に進めます。
つまずきやすい3つの場面と、その場でできる手当て
データ活用が途中で止まりやすいのは、次の3つの場面です。
- 同じ言葉で違う数を見ている:営業の「売上」は受注日、経理の「売上」は請求日で数えていて、会議の数が合わない。発注表の1列ごとに、何をいつの時点で数えた数かを1行で書いた説明の行を足します。
- 表を作る人が1人で、その人が休むと止まる:CSVを出して貼る手順を、画面の写真付きで発注表の別シートに書き、もう1人が1回やってみます。
- データを見たのに、決め方が変わらない:会議で発注表を開いても、最後は前月と同じ数になる。表の横に「この数にした理由」の列を作り、データと違う数にしたときは理由を1行書く決まりにします。
同じ顧客や商品が、システムごとに違う名前で入っていて数が合わないときは、データクレンジングや名寄せの作業が先に要ります。データの持ち方を会社全体で整える話は「データマネジメント」の記事で書いています。
データの置き場所と持ち主を、共有ドライブの「データ一覧」に書く
発注表がうまく回り始めても、どのデータをどこから出し、誰が入れているかが購買担当の頭の中にだけあると、担当が替わった月に表が止まります。2つ目の判断に広げるときも、同じデータを別の人がもう一度探すことになります。
会社の共有ドライブに「データ一覧」のシートを1つ作り、データ1つにつき1行で、データの名前・置き場所(システム名やファイルのURL)・入れる人・更新する日・どの判断に使っているか・説明(何をいつの時点で数えた数か)を書きます。手順2と手順3で決めたことを、そのまま行にします。
2つ目の判断(たとえばシフトの人数)に進むときは、まずこの一覧を開き、使えるデータがすでにあるかを確かめてから、足りないデータだけを書き出します。AIに数字の集計や読み取りを手伝わせるときも、この一覧の説明の列を一緒に渡すと、「売上」がどの日付の数かを取り違えずに答えが返ります。
よくある質問
Q. データ活用とデータ分析は、どう違いますか?
データ分析は、集めたデータから傾向や理由を読み取る作業です。データ活用は、その結果を発注数やシフトの人数などの判断、または通知や転記などの作業に使うところまでを含みます。
Q. データ活用とデータドリブンは、どう違いますか?
データドリブンは、勘や経験だけで決めず、数字を根拠に判断を進める進め方を指します。データ活用は、判断に加えて、作業を自動で動かす使い方も含む、もう少し広い言葉として使われます。
Q. 専門の担当者がいない小さな会社でも始められますか?
始められます。総務省の令和2年版情報通信白書でも、中小企業では「各事業部門のデータ分析が専門ではない人」により分析が行われていることが多いと書かれています(2026年10月31日に確認)。閲覧と集計で決められる判断を1つ選び、表の持ち主を決めれば、今いる人で回せます。
Q. BIツールを入れたほうがいいですか?
最初の判断は、Excelやスプレッドシートの表で決められるものを選ぶと、ツールを選ぶ前に始められます。見る表が3つ以上に増え、毎回同じ集計を手で作り直すようになったら、BIツールを検討する時期です。
Q. 社外のデータ(統計や天気)も使ったほうがいいですか?
最初の判断では、社内の記録だけで決められるものを選びます。社内のデータで決め方が回り始めてから、天気や地域の人口などの社外のデータを足すと、どの数が判断を変えたかを見分けられます。
データで決めたい判断を1つ書いて相談する
データで決めたい判断を1行と、その判断に今使っている表やシステムの名前を書いて送ってください。要るデータの書き出しと、最初に見る場の決め方をお返しします。どこから手を付けるかを1か所に絞りたい場合は、TOC分析5万円(2時間)で一番詰まっている所を決めます。