CONCEPT — KPI TREE
KPIツリーの作り方
KPIツリーとは、売上や利益などのゴールの数字(KGI)を、足し算や掛け算で分けていき、担当者が日々動かせる行動の数字までつなげた図です。ツリーにすると、「どの数字を動かせばゴールに効くのか」「その数字は誰が動かすのか」が一枚で見えます。この記事では、作る前に決めること、作り方の5つの手順、よくある失敗、できたツリーを確かめる4つの問いを解説します。
KPIツリーとは:ゴールと行動を数字でつなぐ図
KPIツリーは、一番上にゴールの数字を置き、その数字がどんな要素で決まるかを下へ分けていく図です。一番上をKGI(重要目標達成指標)、途中をKPI(重要業績評価指標)、一番下を日々の行動の数字と呼び分けることが多くあります。
ツリーの価値は、数字の一覧では見えない「つながり」が見えることです。たとえば売上が足りないとき、顧客数が足りないのか、顧客単価が下がったのか、新規が減ったのか継続が減ったのかを、上から順に辿って確かめられます。
もう一つの価値は、担当者が自分の行動とゴールのつながりを理解できることです。「今週の商談の設定件数」という自分の数字が、新規顧客数、顧客数を経て売上につながっていると見えれば、日々の数字を追う理由がはっきりします。
作る前に決めること
いきなり分解を始めると、指標が増えるだけのツリーになりがちです。先に次の三つを決めます。
- 何の判断に使うか:月次の会議で重点を決めるのか、週次で担当の行動を見直すのか。
- 期間:月、四半期、年のどれのゴールか。期間が混ざると、数字がつながらなくなります。
- 誰が見るか:経営、部門長、担当者のどの立場で使うか。見る人によって、どこまで分けるかが変わります。
この三つは、ダッシュボードの設計で使う「誰が・いつ・何を決めるか」と同じ考え方です。ツリーは、その判断に使う数字を選ぶための道具だと考えると、必要以上に枝を広げずに済みます。
作り方の5つの手順
次の順番で作ります。
- 手順1 ゴールの数字を一つ決める:売上、粗利、解約率など、期間とともに一つに絞ります。
- 手順2 足し算か掛け算で分ける:ゴールがどんな要素の和や積で決まるかを書きます。
- 手順3 動かせる数字まで下りる:担当が今週の行動で変えられる数字に届くまで分けます。
- 手順4 定義と出どころを書く:各数字の計算式と、どのシステムやファイルから取るかを一行で書きます。
- 手順5 担当と見る頻度を決める:一番下の数字ごとに、動かす人と、見るタイミングを決めます。
手順4と5を省くと、ツリーは「きれいな図」で止まります。数字の定義が部署でずれていると、ツリーの上と下で同じ言葉が違う意味になることもあるので、定義は早めに揃えておきます。
分け方の型:足し算と掛け算
分け方には、大きく二つの型があります。
- 足し算で分ける:売上=新規顧客の売上+継続顧客の売上。種類や経路ごとに分けるときに使います。
- 掛け算で分ける:売上=顧客数×顧客単価、新規顧客数=商談数×受注率。量と率に分けるときに使います。
上の図の例は説明用の仮想例で、分け方は事業によって変わります。どちらの型でも、分けた要素が漏れなく、重ならないことを確かめます。重なりがあると、同じ成果を二つの枝で数えてしまい、どこが効いたのかが分からなくなります。
説明用の仮想例:問い合わせ対応のツリー
売上以外のゴールでも、同じ考え方でツリーを作れます。説明用の仮想例として、問い合わせ対応の部署が「対応にかかる時間を減らす」をゴールにした場合を考えます。
- ゴール:月の対応時間の合計。
- 掛け算で分ける:対応時間の合計=問い合わせ件数×1件あたりの対応時間。
- 足し算で分ける:問い合わせ件数=初めての問い合わせ+同じ内容の再問い合わせ。
- 行動の数字:よくある質問の回答ページを週に何本直したか、再問い合わせの理由を何件記録したか。
このツリーを作ると、「対応を速くする」ことだけでなく、「再問い合わせを減らす」という別の枝が見えてきます。どの枝に力を入れるかは、実際の数字を見て決めます。
よくある失敗
KPIツリーづくりで起きやすい失敗は、次の四つです。
- 枝を広げすぎる:考えられる要素をすべて書き、見る人がどこを追えばよいか分からなくなる。
- 葉が動かせない:一番下が「市場規模」のように、担当の行動で変えられない数字で止まっている。
- 定義がない:「商談」「受注」の数え方が人や部署で違い、数字が合わない。
- 因果を決めつける:下の数字を増やせば必ず上が増えると考え、実際の結果で確かめない。
特に四つめは見落とされがちです。ツリーのつながりは、最初は仮説です。商談の設定件数を増やしても受注率が下がれば、新規顧客数は増えないかもしれません。実際の数字を見て、つながり方を直していきます。
できたツリーを確かめる4つの問い
できたツリーは、次の四つの問いで確かめます。
- 足し算か掛け算で、漏れなく・重ならず分かれているか。
- 一番下の数字に、動かす担当と見る頻度があるか。
- 各数字の定義と出どころを、一行で言えるか。
- 下を動かすと上が動くかを、仮説として確かめているか。
数字の出どころを揃える
ツリーの数字は、どこから取るかが決まっていないと、毎回集計のやり方が変わってしまいます。
顧客数は営業管理のSaaSから、売上は会計ソフトから、商談数は担当者のExcelから、というように出どころが分かれていると、締めの時期や数え方の違いで数字がずれます。ツリーの各数字について、どのシステムのどの項目を正とするか、いつ時点の値かを決めておきます。出どころが一つに決まらない数字は、ツリーに載せる前に、データの一元管理やデータ定義書で揃えます。
会議とダッシュボードへの載せ方
ツリー全体を一つの画面に載せる必要はありません。会議や業務ごとに、使う枝だけを載せます。
たとえば週次の営業会議なら、新規顧客数の枝と、その下の行動の数字だけを並べます。月次の経営会議なら、上の二段だけで足りることもあります。画面に載せる数字を絞る考え方は、関連記事「ダッシュボードが使われない理由」で詳しく解説しています。部署で数字の定義が揃っていない場合は、「KPI定義が部署でズレる」と「データ定義書の作り方」も役に立ちます。
会議では、ツリーの上から下へ順に見るのではなく、目標とのずれが大きい枝から見ると、限られた時間で決めるべきことに集中できます。ずれの原因が一番下の行動の数字にあるなら、その担当と次の一手を決めて会議を終えます。
小さく始める:一本の枝から
最初から全社のツリーを完成させようとすると、定義や担当を決めるところで止まりがちです。
まずは、いま一番気になっているゴールの一本の枝だけを作り、一番下の数字を一か月追ってみます。数字が取れない、定義が揃わない、動かしても上が動かない、といった発見があれば、それがツリーを直す材料になります。一本の枝で回り始めたら、次の枝へ広げます。
よくある質問
Q. KGIとKPIの違いは何ですか?
KGIは最終的なゴールの数字(売上、利益など)、KPIはゴールに至る途中の重要な数字(顧客数、受注率など)です。KPIツリーは、KGIからKPI、さらに日々の行動の数字までをつなげて示します。
Q. ロジックツリーとの違いは何ですか?
ロジックツリーは、問題や原因を言葉で分解する図として使われることが多く、KPIツリーはそれを数字の足し算・掛け算で表したものです。数字で分けるので、どの枝がどれだけゴールに効いているかを確かめやすくなります。
Q. 指標はいくつまでにすればよいですか?
決まった数はありません。使う会議や業務の判断に必要な枝だけを残します。担当や見る頻度が決められない数字は、まだ載せない判断も大切です。
Q. 数字にしにくい目標はどう扱いますか?
顧客満足や品質のように数字にしにくい目標は、問い合わせの再発件数や手戻りの件数など、近い行動や結果の数字で置き換えられないかを考えます。無理に数字にせず、定性的な確認を残すこともあります。
Q. KPIツリーはどのくらいの頻度で見直せばよいですか?
ゴールの期間に合わせて見直します。四半期のゴールなら、四半期の終わりに、どの枝が効いたか、つながり方の仮説は合っていたかを振り返り、分け方や行動の数字を直します。
Q. KPIツリーづくりから相談できますか?
はい。ゴールの決め方から、分け方、数字の定義と出どころの確認、会議やダッシュボードへの載せ方まで一緒に整理します。
KPIツリーを、使う会議から設計する
ゴールの数字を、担当が動かせる数字まで分け、定義と出どころを揃えます。会議やダッシュボードへの載せ方まで支援します。