CONCEPT — PROCESS MINING
プロセスマイニングとは?ログから実際の流れを見る方法
プロセスマイニングとは、業務システムに残った作業の記録(イベントログ)から、実際の流れを描き出す技術のことです。担当者に聞いて書いた図ではなく、案件ごとの作業名と日時が揃った記録を並べて、多い経路、手戻り、待ち時間を見ます。
プロセスマイニングとは何か
プロセスマイニングは、誰がいつ、どの作業をしたかの記録を集め、実際に仕事がどう進んだかを図にする技術です。一般社団法人プロセスマイニング協会は、業務データから実際の作業の流れを見える化し、効率化や問題解決の手がかりを見つける技術だと説明しています。
説明用の仮想例です。受注の案件A-01は、受付のあと確認に行き、差し戻されてもう一度確認し、完了しています。案件A-02は、受付、確認、完了と真っ直ぐ進んでいます。この2件がログに残っていれば、多い経路と、差し戻しの経路が同じ図に出ます。担当者に「普通は真っ直ぐです」と聞いただけでは、差し戻しの件数は出ません。
2011年のIEEEのプロセスマイニング宣言では、使い方を3つに分けています。記録だけから流れを描く発見、決めた手順と実際のずれを見る適合、待ち時間などの情報を重ねて図を足す強化です。最初にやるのは、多くの場合が発見です。
- 使っているシステムから出せるCSVの列名を送って、流れが描けるか聞く → 案件を識別する列、作業名の列、日時の列があるかが分かれば始められます
仕組み:イベントログの3つの列
流れを描くために必要な列は3つです。案件ID、作業名、日時です。1行が「ある案件で、ある作業が、その時刻に起きた」ことを表します。
- 案件ID:同じ仕事のまとまりにつける番号。受注番号、問い合わせ番号、申請番号など。途中で変わらない番号を使います。
- 作業名:何が起きたか。受付、確認、差し戻し、完了のように、社内で同じ呼び方に揃えます。「確認する」「確認済」が混ざると、別の作業に見えます。
- 日時:その作業が起きた時刻。日付だけでなく時刻まであると、待ち時間が測れます。タイムゾーンは1つに揃えます。
プロセスマイニングの研究者ウィル・ファン・デル・アールスト氏の教材でも、CSVにするならこの3列が最小だと説明されています。担当者名、金額、商品名は、あとから足せる任意の列です。最初の図には要りません。
同じ案件IDの行を日時順に並べると、その案件が辿った経路になります。全案件の経路を重ねると、太い線(多い経路)と細い線(例外)が出ます。
業務フロー図や聞き取りとの違い
業務フロー図は、先週の一件を辿って人が描く図です。業務の棚卸しは、仕事の一覧を行に書く作業です。プロセスマイニングは、システムに残った記録から経路を描きます。材料が違います。
- 業務フロー図:誰が、どの順で、どの情報を使うかを一枚に描く。記号と担当の帯で、受け渡しが見えます。理想の流れを描いてしまうことがあります。
- 業務の棚卸し:仕事の名前、頻度、担当、使う情報を表にする。どの仕事があるかは分かりますが、1件ごとの寄り道は出ません。
- プロセスマイニング:残った記録の全部から、実際に起きた経路と件数を出す。聞いていない例外も、ログにあれば出ます。
聞き取りの図は、残っていない判断や電話の確認を描けます。ログの図は、画面に残った操作しか描けません。両方を並べると、「図にはあるのにログに無い作業」が、穴か、残っていない手作業か、が見えます。
わかること
3列が揃うと、次のものが見えます。ツールの画面の名前は製品ごとに違いますが、見ている中身は同じです。
- 手戻り:確認のあと差し戻しに戻り、もう一度確認している経路。何件が何回戻ったか。
- 待ち時間:受付の日時と確認の日時の差。特定の作業の前で、日をまたいで止まっている件数。
- 例外の多い経路:許可の前に支払いが終わっている、など、決めた順と違う並び。
件数の多い経路だけを残すと、担当者が「普通はこうです」と話す流れに近くなります。件数の少ない経路を足すと、例外の種類と件数が数字で出ます。どちらを先に見るかは、知りたいことに合わせます。手戻りを減らしたいなら、戻りの矢印が付く作業から見ます。
ログに残っていない作業は、見えません。倉庫への電話、紙の押印、個人のチャットでの催促は、穴になります。穴があることを図の注記に書きます。
- 今見えている経路と、残っていない作業を書いて相談する → 使っているシステムの名前と、出せそうな列名があれば足ります
使える前提と、穴になる場所
プロセスマイニングは、記録が残っているシステムに対して使えます。残っていない場所を先に知っておくと、図を過信しません。
- ログが残るシステム:受注、申請、問い合わせ、請求のように、案件番号と状態の変更日時があるもの。
- 穴になりやすい場所:Excelの個人ファイル、紙の工程、電話、チャット。誰がいつ何をしたかの行が残りません。
- 列の意味が揃っていない:同じ作業が画面ごとに別名、日時が更新日時と作成日時で混在。並べても経路が壊れます。
データの汚れ(日付の揺れ、空欄、重複)が多いと、図が歪みます。直す範囲は、描きたい流れに使う3列だけに絞ります。全部をきれいにしてから始める必要はありません。
複数のシステムに案件番号が別々にあるときは、同じ案件だと見分けられる対応表が要ります。無いときは、1つのシステムの中だけで描きます。
- データクレンジングとは → 3列の日付の揺れと空欄を、先に直すとき
ツールを入れる前に、Excelで試す
製品を契約する前に、出せるCSVで3列が揃うかを見ます。揃わなければ、どの製品を入れても図は描けません。
- 対象の仕事を1つに絞る:受注から出荷、申請から完了、のように始まりと終わりを決める。
- システムからCSVを出す:案件番号、状態または作業名、その日時。列名が日本語でも英名でもよいので、意味を一行で書く。
- 3列にして並べ替える:案件IDの昇順、同じ案件の中は日時の昇順。1つの案件を上から読む。
- 経路を手で数える:最初の20件で足りる。受付→確認→完了が何件、差し戻しが何件、を数える。
20件で経路の型が3つ以上出る、または3列が揃わない、が分かれば、ツールの話の前にやることが決まります。列が揃って経路が見えた仕事だけが、製品を試す候補です。
最初の1仕事をどれにするか決まらないときは、TOC分析 5万円(2時間) で、詰まっている流れを1つに絞れます。継続して複数のシステムのログを見る支援は、範囲と体制で変わるため個別にお見積りします(概算です。詳細はお見積りで)。
製品名を出すなら、公式で確かめた範囲に限ります。一般社団法人プロセスマイニング協会は、無料で使える「みんプロ」を提供しています。商用の製品は、3列の定義が公式に書かれているかを見て選びます。優劣の一覧は作りません。
列の定義と多い経路を、分析した人の手元から会社の台帳へ移す
案件IDはどの列か、作業名の言い方、日時はどの操作で残るかが、分析した人の手元のExcelにしか無いと、次の四半期にもう一度同じ抽出から始まります。
案件IDの列名と出所、作業名の辞書(画面の表示と揃えた呼び名)、日時の列の意味(作成か更新か)、最後に出した日を、共有フォルダの1枚に書きます。多い経路と、人が見る例外(差し戻しの理由など)も、同じ1枚の下に残します。
次に別のシステムのログを見るときは、その1枚を開いてからCSVを出します。AIに経路を読ませるときも、個人の分析ファイルではなく、その1枚の列の定義と多い経路を渡します。
- データオペレーションとは → 集めた記録を、判断と次の行動まで届ける流れ
- RPAとは → 多い経路のうち、画面操作の定型だけをロボットに渡すとき
よくある質問
Q. プロセスマイニングとは何ですか?
業務システムに残った作業の記録から、実際の流れを描き出す技術です。担当者に聞いて描く図ではなく、案件ID・作業名・日時の3列を並べて、多い経路と例外を見ます。
Q. 必要なデータは何ですか?
最小は3列です。同じ仕事を見分ける案件ID、何が起きたかの作業名、いつ起きたかの日時です。担当者名や金額は、あとから足せます。
Q. 業務フロー図との違いは何ですか?
業務フロー図は人が描きます。先週の一件や、あるべき流れを一枚にできます。プロセスマイニングは、残った記録の全部から経路と件数を出します。残っていない電話や紙の工程は、こちらでは穴になります。
Q. Excelだけで試せますか?
試せます。CSVを3列にして、案件IDと日時で並べ、最初の20件の経路を数えます。3列が揃わない仕事に、製品を入れても図は描けません。
Q. ログが残っていない業務でも使えますか?
残っている範囲だけ使えます。Excelや紙、電話の工程は穴です。穴を注記したうえで、システムに残った部分だけを描きます。全部を一度に揃える必要はありません。
Q. どの製品を選べばよいですか?
先に、出せるCSVで3列が揃うかを見ます。揃った仕事に対して、公式が3列の定義を書いている製品を試します。この記事では製品の順位は付けません。
出せるCSVの列名から、流れが描けるか見る
使っているシステムから出せるCSVの列名を送ってください。案件ID・作業名・日時が揃うか、穴はどこかをお返しします。最初の1仕事が決まらないときは、TOC分析 5万円(2時間) から始められます。