CONCEPT — TIME AND SPACE

タイムアンドスペース法とは

業務設計・仕組み化 sento.group 編集部 · · 約6分

タイムアンドスペース法の2軸図。縦軸はスペース軸で上が抽象、下が具体、横軸は時間軸で左が現在、右が未来。右上の抽象×未来は目指すべき未来、左下の具体×現在は足場・やるべきことで、話を置く場所。左上の抽象×現在はお花畑・空中戦、右下の具体×未来は沼・架空の懸念で、長居しない場所。左下と右上の間に往復の矢印がある
図:話を置くのは右上と左下の二つ。この対角線の上を往復させます。

タイムアンドスペース法とは、会議や計画の話を「時間(現在か未来か)」と「抽象度(抽象か具体か)」の2軸に置いて、いま話がどこにあるかを確かめる整理法です。sento.group代表の和島が、会議や計画づくりで使っている考え方です。話を置くのは「抽象×未来=目指すべき未来」と「具体×現在=足場・やるべきこと」の二つで、この間を往復させます。「抽象×現在=お花畑・空中戦」と「具体×未来=沼・架空の懸念」に話がずれたら、質問で引き戻します。

タイムアンドスペース法とは:話の位置を2軸で見る

タイムアンドスペース法では、話を二本の軸で見ます。横軸は時間軸で、左が現在、右が未来です。縦軸はスペース軸で、上が抽象、下が具体です。ここでの「スペース」は物理的な場所ではなく、話の抽象度の高さを指します。

二本の軸で四つの場所ができます。会議や計画の話は、いつもこの四つのどこかにあります。大事なのは、どこにいるかを参加者が同じように認識できることです。「いまの話は右下に行っていますね」と言えるだけで、議論の向きを揃えやすくなります。

4つの象限:置く場所と、長居しない場所

四つの象限には、それぞれ役割があります。

  • 抽象×未来=目指すべき未来:なぜやるのか、どうなっていたいのか。方向を決める場所です。
  • 具体×現在=足場・やるべきこと:今週、誰が、何をするのか。実際に動く場所です。
  • 抽象×現在=お花畑・空中戦:理想や正論を、いまの状況に当てはめて語るだけで、誰も動かない状態です。
  • 具体×未来=沼・架空の懸念:まだ起きていない細部の心配を、具体的に議論し続ける状態です。

お花畑と沼は、まったく話してはいけない場所ではありません。理念の確認やリスクの洗い出しが必要な場面もあります。ただ、そこに長くとどまると、結論も行動も出ないまま時間が過ぎます。

なぜ「目指す未来」と「足場」を往復させるのか

目指すべき未来だけを語ると、方向は立派でも今日の行動が決まりません。足場だけを積むと、手は動いていても、どこへ向かっているかが分からなくなります。二つを往復させると、未来の姿が今日の作業の優先順位を決め、今日の作業の結果が未来の姿を現実的に直していきます。

往復の目安は単純です。目指す未来の話をしたら、「それは今週、誰が何をすることになるか」まで降りる。足場の話をしたら、「それは目指す姿に近づいているか」まで上がる。一回の会議の中でこの上下を何度か繰り返すと、方向と行動が離れにくくなります。

往復が止まると、会議は二つのどちらかに偏ります。未来の話ばかりの会議は前向きに見えても翌日の仕事が変わらず、目の前の作業の話ばかりの会議は忙しく見えても方向が揃いません。どちらに偏っているかに気づくだけでも、次の一言が変わります。

お花畑・空中戦(抽象×現在)に気づく

お花畑は、正しいことを言っているのに何も決まらない状態です。たとえば次のような発言が続くと、話はお花畑にあります。

  • 「本来、データはもっと活用されるべきだ」
  • 「現場がもっと主体的になれば解決する」
  • 「部署の壁をなくすことが大事だ」

どれも間違ってはいません。ただ、未来の姿として描かれてもいないし、今日の行動にも落ちていません。いまの状況について抽象的に語っているだけなので、聞いた人は同意はできても、何をすればよいかが分かりません。会議の時間が長いのに議事録の「次のアクション」が空欄なら、お花畑に長居していた可能性があります。

沼・架空の懸念(具体×未来)に気づく

沼は、まだ起きていない未来の出来事について、細部まで具体的に議論し続ける状態です。

  • 「もし取引先が三倍に増えたら、この管理表はどうするのか」
  • 「担当者が全員同時に休んだら、誰が入力するのか」
  • 「将来この項目が必要になったら困るので、今から全部入れておこう」

リスク管理と沼の違いは、根拠と、いま決める必要があるかどうかです。起きる兆しがあり、いま手を打たないと間に合わない懸念は、足場の話として扱います。根拠のない仮定の上に仮定を重ねている場合は、沼です。沼に入ると、話は具体的で真剣なので、抜け出しにくいのが特徴です。

話がずれたら、質問で引き戻す

お花畑や沼に気づいたら、責めるのではなく、決まった質問で二つの場所へ引き戻します。

話がずれたときに引き戻す質問の図。お花畑にずれたら、足場へは「それは今週、誰が何をすることになりますか」、目指す未来へは「それで、どうなっていたいのですか」と問う。沼にずれたら、足場へは「いま分かっている事実と、今日決めることは何ですか」、目指す未来へは「目指す姿にとって、いま決める必要がありますか」と問う
図:お花畑からは下か右へ、沼からは左か上へ戻します。
  • お花畑から足場へ:「それは今週、誰が何をすることになりますか?」
  • お花畑から目指す未来へ:「それで、どうなっていたいのですか?」
  • 沼から足場へ:「いま分かっている事実と、今日決めることは何ですか?」
  • 沼から目指す未来へ:「目指す姿にとって、いま決める必要がありますか?」

質問を決めておくと、誰が言っても角が立ちにくくなります。会議の冒頭で、この図と質問を共有しておくのも一つの方法です。

要件定義・データ活用の会議での使い方

タイムアンドスペース法は、業務システムやダッシュボードの要件定義の場面で特に役立ちます。説明用の仮想例として、売上管理の仕組みを見直す会議を考えます。

  • 目指すべき未来:「月初の営業会議で、各リーダーが今月追う案件をその場で決められる状態にしたい」
  • 足場:「今週、営業事務が先月分の案件一覧を一つのシートにまとめ、どの列が使われているかを確かめる」
  • お花畑の例:「全社のデータを一元化して、データドリブンな組織にすべきだ」
  • 沼の例:「将来、海外拠点ができたときの通貨換算はどうするか」

sento.groupが使うIPOAでいえば、目指すべき未来はAction(誰が何を決める・するか)、足場はInput(いまある業務とデータ)にあたります。要件定義は、この二つを結ぶOutputとProcessを決める作業です。お花畑に寄ると要件が抽象的なまま発注され、沼に寄ると今回は要らない機能まで要件に入ります。

1回の会議で使う手順

特別な準備は要りません。次の順番で進めると、往復が自然に起きます。

  • 手順1 冒頭で「目指すべき未来」を一文にして、全員が見える場所に書く。
  • 手順2 次に「今週の足場」として、誰が何をするかを書き出す。
  • 手順3 議論の途中で、話が四つのどこにあるかを確かめる役を一人決める。
  • 手順4 お花畑や沼に入ったら、引き戻す質問を使う。
  • 手順5 最後に、足場の行動が目指す未来に近づくものになっているかを確かめて終える。

会議だけでなく、1on1や個人の週次の計画にも使えます。紙に2軸を描き、今週考えたことを四つに置いてみるだけでも、時間の使い方の偏りに気づけます。

心理学の知見との関係

社会心理学には、解釈レベル理論(Construal Level Theory)という考え方があります。人は、時間的・空間的・社会的に遠い物事ほど抽象的に、近い物事ほど具体的に捉えやすい、という傾向を説明する理論です。

この傾向に照らすと、「抽象×未来」と「具体×現在」は、人が自然に考えやすい組み合わせです。一方、「抽象×現在」と「具体×未来」は、その自然な組み合わせからずれた場所で、どちらも行動に結びつきにくくなります。タイムアンドスペース法は理論そのものではなく、会議の実務で使うための整理ですが、二つの場所を往復させるという考え方は、この知見とも向きが揃っています。

よくある質問

Q. 心理的距離や解釈レベル理論とはどう関係しますか?

解釈レベル理論は、時間や空間、人との関係などの心理的な距離が遠いほど物事を抽象的に、近いほど具体的に捉えやすいという傾向を説明する理論です。タイムアンドスペース法で話を置く「抽象×未来」と「具体×現在」は、この傾向に沿った組み合わせです。タイムアンドスペース法は理論の検証ではなく、会議で使うための実務的な整理として扱っています。

Q. お花畑(抽象×現在)の話は、すべて不要ですか?

不要ではありません。理念や前提を確かめる短い時間は役に立ちます。問題は長居することです。理念の話をしたら、目指す未来の姿か、今週の行動のどちらかに必ずつなげます。

Q. 沼とリスク管理はどう違いますか?

根拠と、いま決める必要があるかどうかで分けます。兆しがあり、いま手を打たないと間に合わない懸念は、足場の話として扱います。仮定の上に仮定を重ねて細部を詰めている場合は沼なので、「目指す姿にとって、いま決める必要があるか」を確かめます。

Q. IPOAとはどう組み合わせますか?

目指すべき未来をIPOAのAction(誰が何を決める・するか)、足場をInput(いまの業務とデータ)として置くと、要件定義で決めるべきOutputとProcessが見えやすくなります。

Q. 誰が引き戻す役をやればよいですか?

進行役でなくてもかまいません。会議の冒頭で一人決め、引き戻す質問を共有しておくと、立場に関係なく指摘しやすくなります。

Q. 会議以外にも使えますか?

使えます。1on1、プロジェクトの計画、個人の週次の振り返りなどで、考えたことを四つの場所に置いてみると、未来の話だけ、目の前の作業だけ、といった偏りに気づけます。

会議と要件定義を、目指す姿と足場から整える

話が空中戦や沼に入りがちな会議を、目指す姿と今週の行動の往復に整えます。業務とデータの整理から一緒に進めます。

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