CONCEPT — AI TRAINING GRANT
AI研修の助成金:人材開発支援助成金の対象・助成率・申請の流れ
AI研修の助成金とは、社員にAIを業務で使う知識や技能を身につけさせる研修について、研修の経費と研修中の賃金の一部を国が後から支給する制度のことで、中心は厚生労働省の人材開発支援助成金です。支給されるのは研修が終わって申請したあとで、研修を始める1か月前までに計画届を出していないと対象になりません。
AI研修に使えるのは、人材開発支援助成金の3つのコース
厚生労働省の人材開発支援助成金は、会社が雇っている社員に職務に関係する訓練を受けさせたとき、訓練の経費と訓練中の賃金の一部を助成する制度です。令和8年度版では7つのコースがあり、AI研修で検討されることが多いのは次の3つです。
- 事業展開等リスキリング支援コース:新しい事業を始める、社内のDX化を進めるなど、事業の変化に合わせて社員に新しい知識や技能を身につけさせる訓練が対象です。生成AIを業務に入れる研修は、多くの場合ここで検討します。
- 人への投資促進コース:定額で受け放題の研修サービスや、高度なデジタル人材を育てる訓練などが対象です。
- 人材育成支援コース:職務に関係する10時間以上のOFF-JT(通常の仕事と分けて行う研修)など、幅広い訓練が対象です。助成率は上の2つより低めです。
3つとも、雇用保険の適用事業所の事業主が、雇用保険の被保険者である社員に受けさせる訓練が対象です。どのコースが合うかは、研修の中身と、受ける人の担当業務で決まります。
研修したい人数と期間が決まっていれば、それを書いて送ってください。研修の中身と、使えそうなコースを確かめる順番をお返しします。
事業展開等リスキリング支援コースの助成率と上限(令和8年度版)
厚生労働省の令和8年度版の案内に載っている数字です。賃金助成は研修を受けた時間1時間あたりの額、経費助成は受講料などの経費に対する割合です。
- 経費助成:中小企業は75%、大企業は60%。
- 賃金助成:1時間あたり中小企業は1,000円、大企業は500円。
- 1人あたりの経費助成の上限(中小企業):研修が10時間以上100時間未満なら30万円、100時間以上200時間未満なら40万円、200時間以上なら50万円。大企業は20万円・25万円・30万円です。
- eラーニングと通信制の研修:経費助成だけで、賃金助成はありません。1人あたりの上限は中小企業15万円、大企業10万円です。
- 1つの事業所が1年度に受け取れる額の上限は1億円です。
説明用の仮想例として、中小企業の社員3人が、受講料1人20万円・20時間の集合研修をこのコースで受けた場合を計算します。経費助成は20万円×75%×3人で45万円、賃金助成は20時間×1,000円×3人で6万円です。会社は先に受講料60万円を全額払い、研修後に申請して、審査を通れば支給されます。受講料が全額戻るわけではなく、研修中の賃金も会社が払います。
人への投資促進コースと人材育成支援コースは、助成率と上限が別に決まっています。人材育成支援コースの集合研修は、中小企業の正社員で経費の45%、賃金助成は1時間あたり800円からです(賃金要件などを満たすと上乗せがあります)。
2026年8月3日から、対象にならないAI研修
事業展開等リスキリング支援コースは、令和8年8月3日に要件が変わりました。DX化に関する研修のうち、職務に間接的に必要なだけのものと、どの職業にも共通する一般的なものは対象外です。
- 対象になる例:営業担当者が、生成AIで商品提案書の構成案づくり、文章の生成、直し方を学ぶ研修。担当業務にそのまま使う中身だからです。
- 対象外になる例:業務を決めずに、生成AIを使うための汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ研修。
- 対象外になる例:DXの概念、デジタル技術の概要、データ活用の考え方を学ぶだけの研修。
- 受ける人の選び方も見られます。研修の中身と担当業務が合っていない人は、同じ研修でも対象外になります。
- 同じ社員が1年度に受けられるのはこのコース全体で3回まで、そのうちeラーニングは1回までです(8月3日以降に出した計画届から数えます)。
8月2日以前に研修会社と契約・申込をしていた研修には、対象外の規定について改正前の要領が使われる経過措置があります。当てはまるかは、管轄の労働局に確かめます。
社内でやる準備はひとつです。研修のカリキュラムの各コマに、受ける人の業務名(例:見積書の作成、問い合わせの一次回答)を1つずつ書き込みます。業務名が書けないコマは、汎用的な中身と見なされやすいコマです。
申請の流れ:研修を始める1か月前までに計画届
申請は、研修を受けさせる会社(事業主)が、管轄の都道府県労働局に出します。期限は研修の日付から逆算して決まります。
- 準備:社内で職業能力開発推進者を選び、事業内職業能力開発計画を作って社員に知らせます。研修や人事の担当の課長などを推進者にします。計画届を出す日までに済ませます。
- 計画届:研修の中身・時間・受ける人を書いた職業訓練実施計画届を、研修開始日の6か月前から1か月前までに管轄の労働局へ出します。事業展開等リスキリング支援コースでは、事業展開等実施計画も一緒に出します。
- 研修の実施:計画届のとおりに研修を受けさせ、出席と時間の記録を残します。研修中も賃金を払います。
- 経費の支払い:支給申請までに、研修の経費を全額払います。
- 支給申請:研修終了日の翌日から2か月以内に、支給申請書などを管轄の労働局に出します。電子申請(雇用関係助成金ポータル)を使う場合はGビズIDが要ります。
説明用の仮想例として、12月1日に研修を始めたいなら、計画届の締切は11月1日です。推進者の選任と事業内計画はその前に済ませるので、10月中に研修の中身と受ける人を決めておく必要があります。
使う前に確かめる5つの注意点
助成金は、要件を満たしたうえで申請し、審査を通ったときに支給されます。始める前に、次の5つを自社に当てはめます。
- 受ける人:雇用保険の被保険者であることが条件です。受けさせたい人の一覧を作り、1人ずつ確かめます。
- 研修の時間と形:10時間以上の、通常の仕事と分けて行う研修(OFF-JT)であることが条件です。実際に受けた時間が10時間に届かないと支給されないため、時間割と出席の記録を残します。
- 研修中の賃金:研修は業務として受けさせるので、研修中も賃金を払います。所定の労働時間外や休日に受けさせた時間には、賃金助成が出ず、割増賃金の支払いが要ります。
- 研修会社との関係:申請する会社と密接な関係にある相手に払った受講料や講師謝金は、経費助成の対象外です。どの相手が当たるかは、案内の詳細版で確かめます。
- 記録と不正受給:関係書類は支給決定後も5年間保存します。不正受給と判断されると、返還額に年3%の延滞金と20%の違約金が加わります。研修会社や申請の代理人が関わったり黙認したりした場合は、返還の連帯債務を負います。
事業展開等リスキリング支援コースと人への投資促進コースは、令和4年度から令和8年度までの期間限定で作られたコースです。令和9年度以降の扱いは、この記事を書いた時点の公式の案内では確かめられませんでした。来年度に研修を予定している場合は、計画届を出す前に最新の案内を開きます。
AI研修は、業務を1つ決めてから制度に当てはめる
AIで変えたい業務、受ける人、研修の中身の順に決めてから、どのコースに当てはまるかを労働局に確かめます。助成金が使える研修を先に探して中身を合わせると、受ける人の業務に使われない研修になり、8月3日以降の要件でも対象外になりやすくなります。
- 業務を決める:AIで変えたい業務を1つ書き、今その業務に月何時間かかっているかを測ります。
- 受ける人を決める:その業務を担当している人の名前を書きます。担当していない人は、別の研修にします。
- 研修の中身を決める:その業務の実物(見積書、問い合わせメール、日報など)を研修の題材にし、研修の最後にその業務の指示文と確かめ方ができあがるようにします。
- 制度に当てはめる:中身と時間数と人数が決まってから、どのコースに当てはまるかを管轄の労働局に確かめます。
研修とあわせてAI導入の費用をどう見積もるかは「AI導入の費用」、研修の前に社内で決めておくことは「AI導入支援の選び方」で書いています。
研修の題材にしたい業務が決まっている場合は、業務名と、受ける人の人数と担当業務を書いて送ってください。研修の中身の組み方と、計画届までの日程をお返しします。
研修で作った指示文を、会社の共有フォルダの表に1行ずつ書く
研修で作った指示文や確かめ方が受講者のPCやチャット履歴の中にだけあると、研修の翌月には使われなくなり、受講者が異動した日から誰も直せなくなります。
研修の最終日に、受講者ごとに「業務名・使った指示文・入れてよいデータ・出力の確かめ方・作った人」を、会社の共有フォルダにある1つの表へ1行ずつ書き込みます。計画届に書いた研修の目的と、この表を同じフォルダに置きます。
翌月に表を開いて、その指示文を今も使っているかに印を付けます。支給申請のときに研修の中身を説明する材料になり、翌年度の研修を計画するときは、印の付かなかった業務から題材を選べます。
sento.groupのAI合宿で助成金を使う場合
sento.groupのAI合宿は、社員が自分の業務を題材に、AIに任せる手順を2日間で組む研修です。受講料は1人40万円(税抜)で、中身と日程は「AI合宿のページ」に載せています。
- 受講相談のときに、助成金を使うかどうかをお知らせください。使う場合は、申し込みの前に研修の中身と時間を確定し、受講案内に記載します。
- 申請の前に、企業と受講者が要件に当てはまるかを一緒に確かめます。申請そのものは、事業主が管轄の労働局に行います。
- 助成金を使う場合、必要な情報がそろってから研修開始まで、計画届の期限を含めて1か月と3週間以上かかります。
対象になるかは、研修の中身と受ける人の担当業務で決まります。助成金の対象外の方も、同じ内容・料金で受講できます。
よくある質問
Q. AI研修なら、必ず助成金を使えますか?
使えるとは限りません。雇用保険の被保険者である社員が受けること、10時間以上のOFF-JTであること、研修開始の1か月前までに計画届を出すことなどの要件があり、2026年8月3日からは業務に結びつかない汎用的な研修が対象外になりました。最後は申請後の審査で決まります。
Q. 助成金を使えば、研修費は実質無料になりますか?
なりません。令和8年度版の事業展開等リスキリング支援コースでも、経費助成は中小企業で75%、大企業で60%で、1人あたりの上限もあります。受講料は会社がいったん全額払い、研修後の申請と審査を経て支給されます。研修中の賃金も会社が払います。
Q. eラーニングのAI研修も対象になりますか?
標準学習時間が10時間以上などの条件を満たせば対象になりえますが、経費助成だけで賃金助成はなく、1人あたりの上限も下がります。2026年8月3日からは、事業展開等リスキリング支援コースでのeラーニングは同じ社員について1年度1回までです。
Q. 申請は誰がしますか?研修会社が代わりにしてくれますか?
申請は研修を受けさせる会社(事業主)が、管轄の都道府県労働局に出します。sento.groupは申請の代行はしておらず、研修の中身・時間・受講案内を整え、要件に当てはまるかを申し込み前に一緒に確かめます。
Q. AIツールを入れる補助金とは何が違いますか?
人材開発支援助成金は厚生労働省の制度で、社員の研修の経費と賃金が対象です。AIを含むITツールの導入には、別の制度として事務局サイトの「デジタル化・AI導入補助金」があります。対象・申請先・締切が違うため、それぞれの公式ページで確かめます。
Q. この記事の数字の出典はどこですか?
厚生労働省の「人材開発支援助成金」のページにある令和8年度版の案内です。助成率と上限は「事業展開等リスキリング支援コースのご案内」、8月3日からの変更は「令和8年8月3日からの変更点」、注意点は「詳細版」によります(2026年10月29日に確認)。
研修したい人数と期間から、使えそうな制度と進め方を決める
研修したい人数、受ける人の担当業務、希望の時期を書いて送ってください。研修の中身の組み方と、計画届までの日程をお返しします。