CONCEPT — RACI
RACIとは?責任分担表の作り方
RACI(レイシー)とは、作業ごとに「誰が手を動かすか(R)・誰が最終責任を持つか(A)・誰に相談するか(C)・誰に報告するか(I)」を、行に作業・列に人を置いた表の1マスに1文字で書き分ける責任分担表のことです。読み方は「レイシー」で、4つの英語の頭文字から来ています。会議で「それ、誰がやるんでしたっけ」が繰り返される作業を1つ選び、表に落とすところから始めます。
4役の意味:実行・最終責任・相談・報告
RACIの4文字は、1つの作業に対する関わり方です。人の肩書きではなく、その作業での立ち位置を書きます。
- R(実行):その作業の手を動かす人。請求書を作る、売上を取り出す、送る、など。1行に複数いてもよい。
- A(最終責任):終わったかどうかを認め、遅れや誤りを説明する人。1行に1人だけ。迷ったら「上司に詰められるのは誰か」で決める。
- C(相談):作業の途中で意見を求める相手。双方向。金額の確認を営業に聞く、など。
- I(報告):終わったことや決まったことを知らせる相手。一方通行。代表に「今月分を送りました」と伝える、など。
実行と最終責任は別人でも、同じ人でも構いません。少人数の会社では、事務が実行し経理が最終責任、という分け方が多いです。相談と報告の違いは、返事が要るかどうかです。返事が要らなければ報告にします。
- 責任があいまいな業務を1つ書いて相談する → 作業名と、今「誰がやるか」で止まっている箇所を1行で送ってください
- 属人化とは → 作業が一人の頭に閉じる状態との関係
作り方:行に作業、列に人、1マス1文字
表計算ソフトの1枚で足ります。先に枠を作り、最終責任から埋めます。
- 作業を行に書く:1つの作業が数日〜2週間で終わる大きさにそろえる。「請求まわり全部」は粗すぎ、「印鑑を押す」は細かすぎることが多い。
- 人や部署を列に書く:個人名より「事務」「営業」「経理」のように役割で書くと、異動のたびに列を作り直さなくて済む。
- 各行の最終責任を先に1人決める:決まらない行は、その作業を誰が引き受けるかがまだ無い印です。
- 残りのマスに実行・相談・報告を入れる:関わらないマスは空欄のままにする。1マスに2文字は書かない。
- 本人に見せて直す:表を作った人の頭の中と、手を動かす人の認識はずれていることが多い。
縦(人ごと)も見ます。最終責任が一人に集まりすぎていないか、実行だらけの人がいないか。集まりすぎていれば、作業を分けるか、最終責任を別の人に移します。
最初は10行前後で止めます。全部の仕事を一度に書くと、更新が止まります。
よくある失敗:Aが複数、全員C、空欄の行
表が形だけになるのは、記号の入れ方を誤ったときです。次の三つを先に直します。
- 最終責任が複数:2人以上にAを付けると、「相手が認めると思った」で止まります。1人に絞り、もう一人は実行か相談に移します。
- 全員が相談:気を遣って全部のマスにCを入れると、実行する人が全員の返事を待つことになります。意見が作業の中身を変える人だけを相談に残し、ほかは報告にします。
- 空欄の行:実行も最終責任も無い行は、誰も手を動かさない作業です。行を消すか、実行する人を決めます。
役職が上の人をすべての行の最終責任にするのも、よくある失敗です。承認待ちが積み上がります。中身を知っている人を最終責任にし、役職が上の人は重要な行だけ最終責任にするか、報告にします。
作ったまま更新しないと、表と現場がずれて誰も見なくなります。担当が替わった週に、その人の列だけ見直します。
月末の請求書発行と、新しいSaaSの導入(仮想例)
冒頭の図は、月末の請求書発行を5行に分けた説明用の仮想例です。締め日を決める、売上を取り出す、請求書を作る、金額を確かめる、送って入金を見る、の5つです。
- 月末の請求書:最終責任はどの行も経理の1人。事務が売上の取り出しと作成と送付を実行し、営業は金額の確認だけ実行する。代表は締め日と送付の報告を受ける。
- 新しいSaaSの導入:行は「使う業務を決める」「試す範囲を決める」「管理者を決める」「入力項目を決める」「本番に移す」。列は事務・現場・情シス・決裁者。管理者と入力項目の最終責任を同じ人にしないと、画面は開いても列の意味が決まりません。
どちらも、作業の順番ではなく「誰が認めるか」を先に決めています。順番は次の節の業務フロー図で描きます。
- 業務棚卸し → 表の行にする作業を書き出す
- データの責任者がいない → データの更新と訂正の責任者の決め方
- TOC分析 5万円(2時間)から、最初の1業務を決める → 責任があいまいな作業を1つ書いて送ると、表にする範囲を一緒に切ります
業務フロー図との使い分け
業務フロー図(スイムレーン図)は、誰がどの順で動くかを描きます。RACIは、誰が責任を持つかを書きます。同じ作業でも、使う図が違います。
- フロー図で見えるもの:受け渡し、待ち、差し戻し、転記。営業が受注を渡し、事務が入力し、経理が請求する、という順番。
- RACIで見えるもの:最終責任の重複、実行者不在、相談の多さ。順番が正しくても、認める人が2人だと止まります。
- 先に書くほう:順番が分からないときはフロー図。誰が認めるかで会議が止まるときはRACI。
1枚に両方を押し込むと、マスが増えて読めなくなります。フロー図で順番を描いたあと、同じ作業名をRACIの行に転記すると、二つの図が対応します。
- 業務フロー図 → 誰がどの順で動くかを描く
亜種:RASCI と DACI
基本の4役で足りないときだけ、確かめた範囲の亜種を使います。最初から増やす必要はありません。
- RASCI(RASIC):Sは支援。実行する人を手伝う人を別に書きたいときに足す。手伝っている人と実行している人が混ざる現場向き。
- DACI:Dは推進、Aは承認、Cは意見を出す人、Iは報告。作業の完了より、予算や採用のような「決めること」向き。決めたあとの作業追跡には向かない。
支援を足すと、実行から逃げるマスが増えることがあります。「手伝う」ではなく「作る」人を実行に残します。決めることと作業が混ざる表は、行を「決める行」と「作る行」に分けます。
役割を、担当者の頭から会社の役割台帳へ移す
表を個人のパソコンやチャットの画像にだけ置くと、異動した翌日から誰も開けなくなります。作ったRACIは、会社の共有フォルダに「役割台帳」として残します。
台帳には、作業名、最終責任の役割名、実行する人、相談する人、報告する人、直した日を1行で書きます。担当が替わったら、その行の名前だけを書き換え、前の名前は履歴に残します。
新しいSaaSを入れるときも、管理者を誰にするかをチャットで決めて終わりにせず、役割台帳の行を1つ足します。次の担当者は、チャットを遡らずに台帳を開きます。
よくある質問
Q. RACIの読み方は何ですか?
「レイシー」です。実行(Responsible)、最終責任(Accountable)、相談(Consulted)、報告(Informed)の頭文字です。日本語では責任分担表、責任分担マトリクスとも呼ばれます。
Q. 最終責任(A)と実行(R)は同じ人でもよいですか?
同じ人でも構いません。少人数では同じ人になることが多いです。分けるときは、手を動かす人と、遅れを説明する人を別にします。同じ人でも、表のマスには両方の文字を重ねず、最終責任を優先してAと書き、実行も兼ねる旨を注記します。
Q. 1行に実行する人は何人までですか?
人数の上限はありませんが、増えすぎると誰が本体を作るかがぼやけます。本体を作る人を1人残し、手伝う人は相談か、RASCIの支援に移します。
Q. 業務フロー図とどちらを先に書きますか?
順番で止まっているならフロー図、認める人で止まっているならRACIです。両方要るときは、同じ作業名で2枚に分けます。
Q. 全部の業務にRACIを作る必要がありますか?
必要ありません。会議で「誰がやるか」が繰り返されている作業を1つ選びます。その1枚が更新できてから、隣の作業を足します。
責任があいまいな業務を1つ書いて相談する
作業名と、今「誰がやるか」「誰が認めるか」で止まっている箇所を1行で送ってください。表にする範囲の切り方をお返しします。継続支援は範囲と体制で変わるため、個別にお見積りします。