CONCEPT — ZAIKO EXCEL GENKAI
在庫管理Excelの限界:4つのサインと、次に移る先の選び方
在庫管理Excelの限界とは、品目数・拠点数・同時に書く人数・入出庫の回数のどれかが増えて、Excelの表のままでは在庫数を正しく保つための手作業が回らなくなった状態のことです。限界はExcelの行数で来るよりも先に、「誰かが開いているから待つ」「夕方にまとめて書き写す」といった人の動きに出ます。サインの数を数えると、Excelのまま整えるか、kintoneなどのノーコードに移すか、在庫管理システムを入れるかを選べます。
在庫管理Excelの限界は、待ち時間と書き写しに先に出る
Excelの1シートは1,048,576行まで書けると、Microsoftの「Excelの仕様と制限」に書かれています。入出庫を1日100行書いても、行数の上限に届くまで約28年かかります。在庫管理のExcelが止まるのは、行数よりも先に、表を使う人の動きが回らなくなるときです。
- 開くのを待つ:「今だれか開いている?」とチャットで聞いてから書く。
- あとで書き写す:現場ではメモや紙に書き、夕方や週末にまとめてExcelに書き写す。
- ファイルが分かれる:拠点ごと、担当者ごとに在庫表のコピーができ、月末に足し合わせる。
- 数え直す:在庫数が合わないので、出荷の前に倉庫へ行って数えてから返事をする。
こうした動きが出ているなら、Excelの表の作りか、使い方の量が限界に近づいています。次の節の4つのサインで、どちらなのかを見分けます。
自社の品目数と拠点数を書いて送っていただければ、Excelのままでいけるかを一緒に見られます。
- 品目数と拠点数を書いて、Excelのままでいけるか聞く → 品目の数、拠点(倉庫・店舗)の数、在庫表を書く人の数を書いてください。
限界を見分ける4つのサイン
4つのサインは、それぞれ自社の今の数字を書き出して見ます。サインの側に入っている本数を数えると、次の節の移り先を選べます。
- 品目数:品目が1つのシートに収まらず、商品区分ごとにシートを分けた。シートをまたいで在庫数を探すようになったらサインです。
- 拠点数:倉庫や店舗が2か所以上になり、拠点ごとに在庫表のファイルを分けた。拠点間の移動を両方のファイルに書く必要があるならサインです。
- 同時に書く人数:入庫・出庫・棚卸を別々の人が同じ時間帯に書く。ファイルを開く順番待ちや、上書きで入力が消えたことがあるならサインです。
- 入出庫の回数:1日の入出庫が多く、その場で書けずにまとめて書き写している。書き写しの時間が毎日の仕事として決まっているならサインです。
説明用の仮想例として、品目300・倉庫1か所・書く人2人・入出庫が1日20回の会社なら、サインは0〜1本で、Excelの表を整えれば続けられることが多いです。同じ会社が店舗を2つ出し、店舗の人も在庫表を書き始めると、拠点数と同時に書く人数の2本が加わります。
4つのサインは、在庫管理のExcelでよく言われる「手入力のミス」「リアルタイムでない」「作った人しか直せない」の原因でもあります。ミスがどのサインから来ているかを見ると、直す場所が決まります。
共同編集で、同時に書く人数のサインは消えるか
Microsoft 365のExcelには、複数の人が同じブックを同時に編集できる共同編集の機能があります。これで「開くのを待つ」は減らせます。同じセルを同時に書き換えたときと、古い版のExcelが混ざったときには、次のことが起きます。
- 使う条件:Microsoftのサポートページによると、Microsoft 365の契約と、OneDrive、OneDrive for Business、SharePoint Onlineのどれかに保存したブック(.xlsx など)が必要です。この3つ以外に保存したブックは対象外です。
- 同じセルを同時に変えたとき:同じページには、保存された変更が一般に優先され、例外もあると案内されています。同じ品目の在庫数を2人が同時に書き換えると、片方の数字が残らないことがあります。
- 古いExcelが混ざったとき:同じページには、「ファイルがロックされています」というエラーの最も一般的な理由は、共同編集に対応していない版のExcelでファイルを開いた人がいることで、1人がそうするとほかの全員にロックのエラーが出ると書かれています。
共同編集で足りるのは、書く人が2〜3人で、品目ごとに書く人が分かれている場合です。入出庫を1行ずつ下に足していく表にし、在庫数は関数で出すと、同じセルを同時に書き換えることがなくなります。
次に移る先は3つ:Excelのまま整える・ノーコード・在庫管理システム
サインの本数と、社内に画面を作って直せる人がいるかで、移り先を選びます。今の業務の量に合うものを選びます。
- Excelのまま整える(サイン0〜1本):品目マスタのシートを1枚にし、入出庫は1行ずつ足す表にして、在庫数はSUMIFSなどの関数で出します。品目や区分の列には入力規則でプルダウンを付け、表記ゆれを止めます。OneDriveかSharePointに置けば共同編集も使えます。
- kintoneなどのノーコード(サイン2〜3本):kintoneでは、Excelのファイルからアプリを作れ(.xlsxで1シート、1,000行までなどの条件があります)、ルックアップで品目マスタの値を入出庫の画面に取り込み、関連レコード一覧で品目ごとの入出庫を並べられます。アクセス権はアプリ・レコード・フィールドの単位で設定できます。サイボウズは製品在庫管理や備品在庫管理のサンプルアプリも公開しています。画面と計算を自社で作るため、作る人と直す人を社内に1人決めます。
- 在庫管理システム(サイン4本、またはバーコード・ロット・シリアルで数える必要がある):入出庫をバーコードで読み取り、拠点と倉庫の在庫を1つの画面で見る製品です。業務の手順を製品の画面に合わせる部分が出るため、今の手順のうち変えてよいところと変えられないところを先に書き出します。
迷う場合は、サインの本数より先に「在庫数を毎日だれが見て、何を決めているか」を1行書きます。発注を決める人が1人で、毎朝1回見るだけなら、Excelのまま整えて足りることが多いです。複数の拠点の人がそれぞれその場で出荷を約束しているなら、同時に正しい数字が見える移り先が要ります。
自社がどの移り先に当たるかを決めかねている場合は、4つのサインのうち当てはまるものと、品目数・拠点数を書いて送ってください。具体的な最初の一歩として、業務のどこが一番詰まっているかを1か所に絞るTOC分析 5万円(2時間)も用意しています。
移る前に揃える3つのもの
どの移り先を選んでも、次の3つが揃っていないと、移った先で同じ数字のずれが起きます。
- 品目マスタ:品目番号・品目名・単位・保管場所を1枚の表にし、拠点ごとに違う名前で呼んでいた品目を1行にまとめます。
- 入出庫の種類:入庫・出庫・返品・拠点間の移動・棚卸の調整のように、在庫数を動かす理由の一覧を決めます。
- 締めの時刻:何時までの入出庫をその日の在庫に入れるかを決めます。POSや倉庫の記録と在庫表の数字を比べるときの基準になります。
POSの売上と在庫表の数字が合わない問題は「POSと在庫台帳がズレる問題」、倉庫のバーコードと台帳が合わない問題は「倉庫バーコードと台帳が一致しない問題」で、それぞれの原因から書いています。
在庫管理の見直し台帳に、毎月4つの数字を書く
「そろそろExcelでは無理」という判断は、毎日在庫表を触っている担当者の感覚の中にあります。担当者が言い出さない限り、上の人は限界に気づかず、欠品や数え直しが増えてから慌てて移り先を探すことになります。
- 4つの数字を毎月1行書く:共有フォルダに「在庫管理の見直し台帳」を1枚置き、月末に品目数・拠点数・在庫表を書いた人数・1日の入出庫の回数を1行に書きます。
- 見直す本数を先に決める:「サインが2本になった月に移り先を見直す」のように、見直す条件と、見直す人の名前を台帳の1行目に書いておきます。
- 書き写しの時間も書く:その月に在庫表への書き写しと数え直しにかかった時間の合計を、同じ行に書きます。移り先の見積を取るとき、今かかっている手間と比べられます。
台帳の数字は、AIに移り先の候補を比べさせるときにもそのまま使えます。4つの数字と手間の時間を渡すと、比べる条件がぶれません。
欠品に気づくのが遅れて困っている場合は、発注点の決め方を「欠品に気づくのが遅い問題」で書いています。
よくある質問
Q. 在庫管理はExcelで何品目まで続けられますか?
品目数だけでは決まりません。Excelの1シートは1,048,576行まで書けるため、品目数より先に、拠点数・同時に書く人数・入出庫の回数が限界を決めることが多いです。4つのサインのうち何本が出ているかで判断します。
Q. Microsoft 365の共同編集を使えば、Excelのまま続けられますか?
書く人が2〜3人で、品目ごとに書く人が分かれていれば続けられることがあります。ただし同じセルを同時に書き換えると片方の数字が残らないことがあり、共同編集に対応していない版のExcelで1人が開くと、ほかの全員にロックのエラーが出ます。在庫数を上書きせず、入出庫を1行ずつ足す表にしておきます。
Q. kintoneと在庫管理システムは、どう選べばよいですか?
画面と計算を自社で作って直せる人がいて、在庫の数え方が単純ならkintoneなどのノーコードが合います。バーコードやロット・シリアルで数える必要がある、拠点と倉庫の数が多い場合は、在庫管理システムを検討します。どちらの場合も先に品目マスタを1枚にそろえます。
Q. 移る前にExcelでやっておくことはありますか?
品目マスタを1枚にし、入出庫の種類と締めの時刻を決めます。この3つが揃っていれば、どの移り先にも同じ形でデータを渡せます。
Q. 無料のExcelテンプレートを使えば十分ですか?
サインが0〜1本なら、テンプレートで表の形を整えるだけで続けられることがあります。テンプレートを使う場合も、品目の列に入力規則でプルダウンを付け、在庫数は入出庫の行から関数で出す形になっているかを確かめます。
品目数と拠点数を書いて、Excelのままでいけるか聞く
品目の数、拠点(倉庫・店舗)の数、在庫表を書く人の数、1日の入出庫のおおよその回数を書いて送ってください。4つのサインのうち何本が出ているかと、Excelのまま整えるか移るかの見立てをお返しします。