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脱エクセルは何から始めるか:移行先の選び方と、残していいExcelの見分け方

Excel・SaaS運用 sento.group 編集部 · · 約9分

今のExcelファイルを一覧にして移す・残す・捨てるの3つに分け、移す表だけをノーコードDB・業務SaaS・DB+BIへ送る順番の図
図:ツールを選ぶ前に、今のExcelを書き出して3つに分けます。移す先を選ぶのは「移す」に入った表だけです。

脱エクセルとは、複数の人が書き続ける台帳や、転記と集計が月末に詰まる表をExcelから共有のデータベースや業務システムへ移し、Excelは1人の試算や一度きりの集計にだけ残すことです。最初にやるのはツール選びではなく、社内のExcelを一覧に書き出して「移す」「残す」「捨てる」に分けることです。

脱エクセルは、今のExcelを書き出すところから始める

ツールの資料を取り寄せる前に、社内で使っているExcelとスプレッドシートを1枚の一覧に書き出します。移す先を選ぶ材料は、この一覧の中にあります。

  • ファイル名と置き場所:共有フォルダ、各自のPC、メール添付で回っているもの、クラウドのスプレッドシートを分けずに全部書きます。
  • 書く人の人数:そのファイルに数字や文字を入力する人が何人いるかを書きます。見るだけの人は数えません。
  • 転記先:そのファイルの数字を、別のExcel・会計ソフト・報告書に手で写しているかを書きます。
  • 更新の頻度と最終更新日:毎日、毎週、月末だけ、ここ半年は開いていない、のどれかを書きます。
  • 詰まる日:月末の締め、請求の前日、会議の前など、そのファイルのせいで誰かの作業が止まる日を書きます。
  • マクロと関数:ボタンを押すと動くマクロや、別のファイルを参照する関数が入っているかを書きます。値引きの計算や締め日の判定など、業務のルールがマクロの中にだけ書かれていることがあり、移すときにそのルールを先に文章へ書き出す必要があります。

一覧は部署ごとに担当者へ聞いて埋めます。全社を一度に集めようとすると止まるので、まず一番困っている部署の分だけで構いません。共有フォルダの中身がシートの限界に来ているかどうかの見分け方は、スプレッドシートをデータベース代わりにしているときの記事に書いています。

一覧を作る前に相談したい場合は、使っているExcelのファイル名と列名を書いて送ってください。どれから移すかの当たりをお返しします。

「移す」「残す」「捨てる」に分ける

書き出した一覧の1行ずつに、3つのどれかを付けます。迷う行は「残す」にしておき、移す表から先に片付けます。

  • 移す:2人以上が同じファイルに書く台帳、別の表や会計ソフトへ手で写している表、毎月同じ手順で集計し直している表です。顧客台帳、案件の進捗表、受発注の一覧がここに入りやすいです。
  • 残す:1人で作って1人で使う試算、一度きりの集計、関数を組み替えながら考える下書きです。移すと、Excelの自由さだけが失われます。
  • 捨てる:半年以上誰も開いていないファイル、「最新」「最新2」のように同じ中身が別名で並ぶファイル、もう無い業務の表です。消す前に、共有フォルダの保管用の場所へ動かして、3か月後に誰も困っていなければ消します。

残してよいExcelの条件は、Excel運用を残す条件の記事で細かく書いています。この記事では、残す表は一覧に「残す」と書き、なぜ残すかを1行添えるところまでで次へ進みます。

移す順番:同時に書く人・転記・月末の詰まり

「移す」に入った表を全部まとめて移すと、現場は新しい画面と古いExcelの両方を覚えることになります。1つずつ、順番を付けて移します。

  • 同時に書く人が多い表:保存のたびに上書きが起き、誰かが開いていて編集できない表です。ここが一番、現場の時間を取っています。
  • 転記が多い表:同じ数字を2回以上手で写している表です。写すたびに打ち間違いが入り、確認の時間も増えます。
  • 月末の集計が詰まる表:締めの日に、担当者が複数のファイルを開いて手で合わせている表です。集計が遅れると、請求や報告が後ろにずれます。
  • ほかの表から参照されている表は先に:顧客の一覧や商品の一覧のように、ほかの表が関数やコピーで読みにいく表は、それを使う表より先に移します。後に回すと、移した表と残したExcelの両方に同じ一覧を持つことになります。

一覧の「移す」の行ごとに、3つのうち当てはまる数を書きます。3つとも当てはまる表が最初の1つです。同じ数が並んだら、書く人の人数が多いほうを先にします。

説明用の仮想例です。営業3人が書く顧客台帳は、同時に書く・請求書の作成時に転記する・月末に売上を合わせる、の3つに当てはまります。担当1人が書く備品の一覧は、転記だけです。この会社では顧客台帳から移し、備品の一覧は顧客台帳が回り始めてから手を付けます。

転記の止め方は、Excel転記の止め方の記事で、部署ごとにシートが増えていく話はスプレッドシート乱立の記事で書いています。

移す先の選び方:ノーコードDB・業務SaaS・DB+BI

移す先は製品名から選ばず、移す表1つずつに次の3つの問いを当てて振り分けます。答えが割れたときは、1つ目の問いを優先します。

  • 問い1「その業務は、どの会社でも同じ型か」:経費精算、勤怠、請求書の発行、給与のように、法律や商習慣で手順がほぼ決まっている業務は、業務SaaSに移します。自社の流儀に合わせて項目を作り込むより、ツールの型に業務を寄せたほうが早く終わります。
  • 問い2「項目が月に何度も変わるか、現場が自分で直したいか」:案件の進捗、問い合わせの管理、備品の貸出のように、項目や選択肢が現場の都合で増える台帳は、ノーコードDBに移します。kintoneのようなノーコードの業務アプリや、データベース型のクラウドサービスがここに入ります。
  • 問い3「ほかのシステムの数字と合わせて集計するか」:販売管理・会計・広告など複数のシステムから数字を集め、部署をまたいで毎月同じ集計を作っている表は、DB+BIに移します。データを1か所のデータベースに集め、集計と画面はBIツールで作ります。
  • 書く人数:書く人が1〜2人なら、問いの答えがどれでも、まずExcelのまま入力の形を揃えるだけで足りることがあります。書く人が社外にもいる、10人を超える、といった表は、権限を細かく分けられる移す先にします。

1つの会社の中で、移す先が3つに分かれるのは普通です。経費精算は業務SaaS、案件の進捗はノーコードDB、月次の売上報告はDB+BI、というように表ごとに決めます。分かれた移す先どうしをどうつなぐかは、ExcelとSaaSをつなぐ方法と、一元管理の記事に書いています。

移す先を選ぶ前に、どの表を最初に移すかを2時間で決めたい場合は、TOC分析 5万円(2時間)から始められます。書き出した一覧か、困っているExcelを1つ見せてもらえれば、最初に移す表と移す先、その後の順番を1枚にしてお返しします。

kintoneから乗り換えたいときに、先に確かめること

一度Excelからkintoneに移した会社が、別のツールへの乗り換えを考えることもあります。乗り換え先を探す前に、今のアプリについて次の4つを確かめます。

  • 乗り換えたい理由を1行で書く:費用、画面の重さ、集計のしにくさ、権限の分け方、作った人が辞めて誰も直せない、のどれかを書きます。最後の理由なら、乗り換えても同じことが起きます。
  • 全アプリのデータを書き出してみる:アプリごとに一覧をCSVで書き出し、レコードの件数、項目の数、添付ファイルの有無を数えます。kintoneの公式ヘルプでは、添付ファイル・関連レコード一覧・ラベルのフィールドと変更履歴はファイルの読み込みも書き出しもできず、ステータス・作業者・コメントは書き出しだけできる、と書かれています(2026年10月27日に確認)。添付ファイルと変更履歴を移す先でどう持つかを、乗り換え先を選ぶ前に決めます。
  • つないでいる先を書き出す:プロセス管理の流れ、ほかのアプリやシステムとの連携、使っているプラグインを1行ずつ書きます。乗り換え先で同じことができるかを、この一覧で確かめます。
  • 一番使われているアプリを1つ、乗り換え先で作ってみる:全部を移す前に、毎日開かれているアプリ1つを試しに作り、書く人に1週間使ってもらいます。

kintoneのできることと、Excelのまま残す台帳との分け方は、kintoneとExcelの使い分けの記事に書いています。乗り換え先を選ぶときに、契約を終えたあとデータを持ち出せるかを見る方法は、ベンダーロックインの記事に書いています。

脱エクセルのメリットと、起きがちな失敗

移し終えた表では、次のことが変わります。逆に、移し方を間違えると、Excelのときより手間が増えます。

  • メリット:同じ台帳に複数の人が同時に書いても、上書きで消えなくなります。
  • メリット:最新のファイルを探す時間がなくなり、誰がいつ直したかが残ります。
  • メリット:転記がなくなった分、打ち間違いの確認と、月末の手での集計が減ります。
  • 失敗:ツールを入れて終わる。項目を作っただけで、誰がいつ入力するかを決めないと、入力は元のExcelに戻ります。
  • 失敗:Excelが裏で残る。入力は新しいツール、集計は書き出したExcelで手直し、が続くと、数字が2か所にあって、どちらが正しいか分からなくなります。これが二重管理です。
  • 失敗:全部を一度に移す。現場は新しい画面をいくつも同時に覚えることになり、どの表も中途半端になります。

二重管理を防ぐには、移した日に元のExcelを読み取り専用にし、ファイル名の頭に「移行済み」と付け、同じフォルダに移行先の名前と開き方を1行書いたメモを置きます。集計で書き出したExcelを手で直したくなったら、それは移す先の集計の作りが足りない合図です。直す場所は書き出したExcelではなく、移す先の集計です。

ツールを足しても数字がつながらない状態の整理の仕方は、ツールが増えてもデータがつながらないときの記事に、移す作業そのものの手順は、Excelのデータベース化の記事に書いています。

移す・残すの判断を、担当者のExcelから会社の一覧へ残す

「この表は残す」「この台帳は来月移す」の判断が、詳しい担当者のPCのExcelや頭の中だけにあると、その人が異動した日から、残す理由も移した先も分からなくなります。

  • 最初に作ったExcelの一覧を、会社の共有フォルダに置く:担当者の個人フォルダには置かず、全員が開ける場所に1つだけ置きます。
  • 1行ごとに4つ書く:移す・残す・捨てるの判定、なぜそう決めたかの1行、決めた人の名前、次に見直す日です。
  • 移したら移行先を書く:移した表の行に、移行先のツール名と、開くための場所を書き足します。元のExcelの置き場所にも同じことを書きます。
  • 四半期に1回、残した表を見直す:書く人が増えた、転記が始まった、という表は「移す」に変えます。

新しいExcelを作るときも、この一覧に1行足してから作ります。次に脱エクセルの続きを進める人は、この一覧を開けば、どこまで移したかと、なぜ残したかが分かります。

よくある質問

Q. 脱エクセルとは何ですか?

複数の人が書き続ける台帳や、転記と集計が詰まる表を、Excelから共有のデータベースや業務システムへ移すことです。1人の試算や一度きりの集計はExcelのまま残します。Excelを全部やめることではありません。

Q. 脱エクセルのメリットは何ですか?

同じ台帳に複数の人が同時に書いても上書きで消えなくなること、最新のファイルを探さなくてよくなり変更の履歴が残ること、転記と月末の手での集計が減ることです。メリットが出るのは、移したあと元のExcelへの入力を止めた表だけです。

Q. 脱エクセルのツールは、どれを選べばいいですか?

製品名から選ばず、移す表ごとに「どの会社でも同じ型の業務か」「項目が月に何度も変わるか」「ほかのシステムの数字と合わせて集計するか」を問い、業務SaaS・ノーコードDB・DB+BIに振り分けます。1つの会社で移す先が複数に分かれるのは普通です。

Q. Googleスプレッドシートに移すのは脱エクセルですか?

同時に書いても上書きが起きにくくなる点は変わりますが、転記と月末の手での集計は残ります。1人や少人数で書く表の置き場所としては使えます。複数の部署が書く台帳や、転記が多い表は、データベースや業務システムへの移す先を選びます。

Q. kintoneの代わりになるものを探しています。何から始めればいいですか?

乗り換えたい理由を1行で書き、今のアプリのデータを書き出して件数と項目を数え、プロセス管理・連携・プラグインでつないでいる先を一覧にします。そのうえで、一番使われているアプリ1つを乗り換え先で作り、書く人に試してもらいます。

Q. どのくらいの期間がかかりますか?

移す表の数と、書く人の人数で変わります。1つの表を移し終えてから次へ進むので、最初の1つが回り始めるまでを1区切りにします。継続して移す作業を支援する場合の費用は、規模と体制で変わるため個別にお見積りします。

今のExcelを見せてもらえれば、移し方と最初の一歩をお伝えします

使っているExcelのファイル名と列名、書いている人の人数を送ってください。どの表から移すか、移す先をどれにするかの当たりをお返しします。最初に移す表を2時間で決めるTOC分析から始めることもできます。継続して移す作業の支援は、規模と体制で変わるため個別にお見積りします。

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