CONCEPT — ヒヤリハット
ヒヤリハットとは:報告書の列と、週1回で集めて対策につなげる手順
ヒヤリハットとは、事故やけがには至らなかったものの、危ない目にあった、または人を危ない目にあわせそうになった出来事を書き留め、同じ場所で次の事故が起きる前に手を打つ活動のことです。名前は「ヒヤリとした」「ハッとした」から来ています。1件ずつは小さな出来事でも、台帳に集めると、同じ通路や同じ作業で何度も起きていることが見えてきます。この記事では、報告書の列と、週1回で集めて対策と共有まで進める手順を、倉庫の説明用の仮想例で書きます。
ヒヤリハットの意味と、インシデント・アクシデントとの違い
厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」は、ヒヤリハット活動を、仕事中にヒヤッとしたりハッとしたりしたことを集めて災害の防止に生かす活動として説明しています。同じページは、報告した人を責めない取り決めがないと、この活動は続かないとも書いています。
- ヒヤリハット:けがも物の壊れもなかったが、一歩間違えれば事故になった出来事です。説明用の仮想例として、倉庫の通路の角で台車を押して曲がったら、反対から来た人とぶつかりそうになった、という出来事がこれに当たります。
- インシデント:医療や情報システムの分野でよく使う言葉で、事故につながりかねない出来事を広く指します。ヒヤリハットとほぼ同じ意味で使う職場も、軽い事故まで含めて使う職場もあります。
- アクシデント(事故):実際にけがをした、物が壊れた、製品に不良が出た出来事です。事故報告書は、起きた損害と、その場で取った対応を記録します。
報告の対象は、自分が体験した出来事に加えて、他の人が危ない目にあうのを見た場面や、起こりそうだと思った危ない場面まで広げます。対象を広く取ると、まだ誰もけがをしていない危ない場所も台帳に載ります。
職場で先週あったヒヤリを1件書いて送ってください。報告書の7つの列にどう書くかを、一緒に埋めてお返しします。
- 先週のヒヤリを1件書いて、報告書の列を一緒に埋める → 例:「月曜の朝、事務所の給湯室で、濡れた床で足が滑りかけた」
- 5W1Hとは →
ハインリッヒの法則が言っていること
ヒヤリハットの説明でよく出てくるのが、ハインリッヒの法則です。職場のあんぜんサイトの用語解説によると、ハインリッヒは米国の損害保険会社で安全技師をしていた人で、同じ人が起こした330件の災害を調べました。
- 330件のうち、重い災害が1件、軽いけがが29件、けがのない事故が300件だった、というのが「1:29:300」の中身です。
- 同じ用語解説は、300件の背後には、けがのない事故にもならなかった、数千の危ない行動や危ない状態があると説明しています。ヒヤリハットで拾うのは、この部分です。
- さらに同じ用語解説は、大事なのは比率の数字よりも、1件の災害の背景に危ない要因が数多くあることだ、と書いています。
職場で使うときは、「ヒヤリが300件たまったら事故が起きる」と数字で読むより、「重い事故が起きた場所には、その前にヒヤリが起きていたはずだ」と読みます。ヒヤリの台帳を場所ごとに数えると、次に事故が起きそうな場所の順番が分かります。
報告書の7つの列と書き方
ヒヤリハットの報告書は、紙でもスプレッドシートでもフォームでも、列は同じです。冒頭の図の説明用の仮想例を、そのまま7つの列に入れます。
- いつ:日付と時間帯を書きます。「火曜の夕方、出荷の締め前」。時間帯まで書くと、忙しい時間に偏っているかどうかが後で分かります。
- どこで:場所を、誰が読んでも同じ場所を思い浮かべられる名前で書きます。「出荷場の北側の角」。社内の地図に番号を振っておくと、番号で書けます。
- 何が起きたか:見たこと・したことを順に書きます。「台車を押して角を曲がったら、反対から歩いてきた人と1メートルほどの距離で向き合った」。
- なぜ危なかったか:事故になっていたら何が起きたかと、そう感じた理由を書きます。「ぶつかっていたら台車の荷が人の足に落ちた。角の先が棚で見えなかった」。
- 対策:同じことが起きないように、何を変えるかを1つ書きます。「角に凸面のミラーを付ける」。
- 担当:対策をする人の名前か役割を書きます。「倉庫の班長」。
- 期限:対策を終える日を書きます。「今週の金曜」。
報告する人が書くのは、上の4列(いつ・どこで・何が起きたか・なぜ危なかったか)だけで足ります。下の3列(対策・担当・期限)は、週1回の見直しで管理する人が書きます。報告する人に対策まで求めると、報告の手間が増えて件数が減ります。
書き方のコツは3つです。その日のうちに書く、見たことと自分の考えを分けて書く、社内でしか通じない略語を使わない。人の名前は、報告した人と対策の担当だけにして、危ない目にあった人の名前は書かなくても受け付けます。
週1回で集めて、対策と共有までつなげる手順
報告書が集まっても、読まれずに置かれたままだと、同じヒヤリがまた起きます。週1回、決まった曜日に次の手順を回します。
- 手順1(毎日):ヒヤリがあった人は、その日のうちに上の4列を書きます。紙なら決まった箱へ、フォームなら送信します。
- 手順2(週1回):決まった担当が、その週の報告を台帳に移します。説明用の仮想例では、毎週金曜の朝に倉庫の班長が移します。
- 手順3(週1回):台帳を場所ごとに並べ替えて、件数を数えます。いちばん件数が多い場所か、いちばん重い事故になりかけた1件を選びます。
- 手順4(週1回):選んだ1件の対策・担当・期限を決めて、台帳に書きます。10分で決まらない原因は、別の時間を取って深く調べます。
- 手順5(翌週の朝礼):決めた対策を朝礼で話し、その場所に掲示します。報告してくれた人には、どの対策になったかを伝えます。
- 手順6(翌週の見回り):対策を入れた場所を見に行き、同じヒヤリが減ったかを台帳の件数で確かめます。
1回の見直しで扱う対策は1つにします。全部の報告に一度に対策を決めようとすると、担当と期限が決まらないまま次の週が来ます。
自分の職場で回す手順を作りたい方は、報告を集めている場所(紙の箱・フォーム・チャットなど)と、見直しに出られる人を書いて送ってください。曜日と担当を入れた手順をお返しします。2時間で業務の詰まりを見つける入口の診断として、TOC分析 5万円(2時間)も選べます。
- 報告を集めている場所と見直しに出られる人を書いて、週1回の手順を相談する → 例:「紙の箱に入れてもらっている。見直しに出られるのは工場長と班長2名」
- パレート図とは →
- PDCAサイクルとは →
工場・倉庫・事務所・店舗で起きやすいヒヤリ
どんな出来事を報告すればよいか迷う人のために、職場ごとに起きやすい場面を説明用の仮想例で挙げます。報告の用紙やフォームの冒頭に、自分の職場の例を3つ書いておくと報告が出やすくなります。
- 工場:機械の点検中に、止めたはずの機械が動きかけた。床の油で足が滑りかけた。手袋が回転する部品に巻き込まれかけた。
- 倉庫:棚の上の段から箱が落ちかけた。フォークリフトの死角に人がいた。台車の荷が崩れかけた。
- 事務所:延長コードに足を引っかけかけた。書類の詰まった箱を1人で持ち上げて腰を痛めかけた。宛先を間違えたメールを送る直前に気づいた。
- 店舗・飲食:熱い鍋を持って振り向いたら後ろに人がいた。アレルギーの注文を別の皿に盛りかけた。開店前の床掃除の後に、濡れた床で客が滑りかけた。
事務所の例の最後のように、けがの危険がない、情報やお金の間違いになりかけた出来事も、同じ台帳で受け付けると、事務の仕事のヒヤリも拾えます。
原因を深く掘るとき・現場を整えるときに使う手法
週1回の見直しで10分では原因が決まらないヒヤリは、次の手法に渡します。
- なぜなぜ分析:「角の先が見えなかった」に「なぜ見えなかったか」を繰り返し、「棚の配置を変えたときに通路の見通しを確かめる手順がなかった」のように、手を打てる原因まで掘ります。
- 特性要因図:原因が人・機械・やり方・材料などいくつもの方向から重なっているときに、魚の骨の形の図に並べて、どの原因から手を付けるかを決めます。
- パレート図:台帳の件数を場所別や作業別に並べ、件数の多い順の棒グラフにします。上位の2〜3項目で全体の大半を占めていれば、そこから対策します。
- 5S:「通路に箱が置かれていた」「工具が決まった場所になかった」のように、物の置き方が原因のヒヤリが多ければ、その場所の整理と整頓から始めます。
報告を個人の手元に閉じず、週1回で台帳に移す担当を決める
ヒヤリの報告は、現場のリーダーのメールやチャット、机の引き出しの紙に散らばりがちです。散らばったままだと、同じ角で3人がヒヤリとしていても、誰も気づきません。sento.groupでは、報告を週1回、会社の共有の台帳に移す担当を1人決めてもらいます。
台帳はスプレッドシート1枚で始められます。列は報告書の7列に「番号」「受け付けた日」「対策が終わった日」の3列を足した10列にします。担当は、毎週同じ曜日に、紙・フォーム・チャットに届いた報告を1行ずつ移し、「対策が終わった日」が空いている行を見直しの議題にします。担当が休む週の代わりの人も、台帳の最初のシートに名前を書いておきます。
生成AIに報告の文章を整えさせる場合は、報告した人の文をそのまま残す列と、AIが7列に振り分けた列を分けておきます。AIが書いた「なぜ危なかったか」は、担当が報告した人に確かめてから台帳に入れます。
最初の一歩として、sento.groupのTOC分析 5万円(2時間)では、今の報告書の用紙か、直近のヒヤリの報告を数件持ってきてもらいます。2時間で、台帳の10列と、台帳に移す担当と曜日を決めます。
よくある質問
Q. ヒヤリハットの語源は何ですか?
仕事中に「ヒヤリとした」「ハッとした」という体験から来た言葉です。職場のあんぜんサイトは、そうした体験を集めて災害の防止に生かす活動として説明しています。
Q. ヒヤリハットとインシデントは同じですか?
ほぼ同じ意味で使われることが多い言葉です。インシデントは医療や情報システムの分野でよく使われ、職場によっては軽い事故まで含めて使います。社内で使うときは、どこまでを報告の対象にするかを報告書の冒頭に書いておきます。
Q. ヒヤリハットの報告書には何を書けばよいですか?
いつ・どこで・何が起きたか・なぜ危なかったか・対策・担当・期限の7つです。報告する人は上の4つを書き、対策・担当・期限は週1回の見直しで管理する人が書くと、報告の手間が増えません。
Q. 報告が集まらないときはどうすればよいですか?
報告した人を責めない決まりを掲示し、用紙の冒頭に自分の職場で起きやすい例を3つ書きます。出てきた報告にどの対策を取ったかを朝礼で話すと、報告すれば職場が変わることが伝わり、次の報告が出やすくなります。
Q. ハインリッヒの法則の1:29:300とは何ですか?
同じ人が起こした330件の災害のうち、重い災害が1件、軽いけがが29件、けがのない事故が300件だった、という調査の結果です。職場のあんぜんサイトは、比率の数字よりも、1件の災害の背景に危ない要因が数多くあることが大事だと説明しています。
先週のヒヤリを1件書いて、報告書の列を一緒に埋める
先週、職場であったヒヤリを1件書いて送ってください。報告書の7つの列にどう書くかと、週1回の見直しで決める対策の候補をお返しします。最初の一歩として、2時間で業務の詰まりを見つける入口の診断、TOC分析 5万円(2時間)も選べます。