CONCEPT — WORK BREAKDOWN STRUCTURE
WBSとは:作り方の4手順とExcelの列、ガントチャートとの違い
WBS(Work Breakdown Structure、作業分解構成図)とは、プロジェクトで最後に出す成果物を出発点に、そこに至るまでの作業を上から下へ木の形に分けていった一覧のことです。いちばん下の作業は1人が数日で終えられる大きさにし、担当と日数を付けます。下の作業を全部終えれば上の成果物ができるように分けておくと、作業の抜けと、誰が何をいつまでにやるかが1枚で見えます。
WBSとは:最後に出す成果物から、作業を木の形に分けた一覧
WBSは、英語の Work Breakdown Structure の頭文字で、日本語では作業分解構成図と訳されます。プロジェクトの成果物を出発点に、そこに要る作業を段ごとに分けていきます。
- いちばん上:プロジェクトが最後に出す成果物です。冒頭の図の説明用の仮想例では「クラウド会計で請求書を出せる状態」です。
- 中の段:成果物を作るための大きな作業のまとまりです。仮想例では、移行の計画・会計ソフトの設定・取引先データの移行・切り替えと教育の4つです。
- いちばん下:1人が数日で終えられる作業です。担当と日数を付けます。PMIの資料では、いちばん下の段の要素をワークパッケージと呼んでいます。
プロジェクトマネジメントの団体PMIの年次大会の論文(2006年、WBSの実務標準の第2版の解説)は、PMBOKガイド第3版(2004年)の定義を引いています。その定義では、WBSは、プロジェクトの目的を果たし必要な成果物を作るためにチームが行う作業を、成果物を軸に階層に分けたもので、プロジェクトの範囲全体を整理して定めるもの、とされています。同じ論文は、WBSにはプロジェクトの範囲の作業を100%含める「100%ルール」を、最も大事な原則の1つとして挙げています。
同じ論文は、WBSについての早い時期の記述として、1962年6月に米国防総省とNASAが出したPERTの費用管理の手引きを挙げています。大きな開発の計画で、作業の抜けと費用の行き先を追うために使われ始めた考え方です。
今動いているプロジェクトがあれば、その成果物を1行で書いて送ってください。「4月から請求書をクラウド会計で出せる状態にする」のような1行があれば、WBSの最初の2段を一緒に分けます。
- 今動いているプロジェクトの成果物を1行書いて送り、WBSの最初の2段を一緒に分ける → 例:「4月から請求書をクラウド会計で出せる状態にする」
- ガントチャートとは →
WBSの作り方4手順
説明用の仮想例として、社内の請求業務を、Excelで作って郵送している今のやり方からクラウド会計に移すプロジェクトで、4つの手順を追います。
- 手順1 成果物を決める:プロジェクトが終わったときに何ができているかを1行で書きます。仮想例では「クラウド会計で請求書を出せる状態」です。「クラウド会計を入れる」のような作業の書き方にすると、入れたあと請求書が出せないまま終わることがあります。
- 手順2 大きな作業に分ける:成果物を作るのに要る大きなまとまりを、3〜6個に分けます。仮想例では、移行の計画・会計ソフトの設定・取引先データの移行・切り替えと教育の4つです。分けたら、この4つを全部終えれば成果物ができるかを確かめます。社内の手順書や教育のように、作業の抜けやすいまとまりはここで入れます。
- 手順3 1人が数日で終わる大きさまで分ける:大きな作業を、さらに担当1人が数日で終えられる作業に分けます。仮想例では「会計ソフトの設定」を、請求書の書式を作る、品目と税区分を登録する、の2つに分けました。1つの作業に2人以上の名前が入りそうなら、もう一段分けます。
- 手順4 担当と期限を付ける:いちばん下の作業に、担当1人と、かかる日数の見込みと、終える期限を付けます。仮想例では8つの作業の日数を足すと18日です。日数を足した合計が、成果物の期限までの日数に収まるかをここで確かめます。
手順2までを1人で決めて、手順3は各まとまりを担当しそうな人と一緒に分けると、作業の抜けと日数の見込み違いが減ります。経理の担当者は品目と税区分の登録に何日かかるかを知っていますが、プロジェクトの責任者は知らないことが多いからです。
何段まで、どの大きさまで分けるかの目安
分けるのをやめる段は、次の目安で決めます。
- いちばん下の作業の大きさ:1人が数日で終えられる大きさにします。作業の時間を8時間から80時間の間に収めるという目安を書く解説もあります。1日に満たない作業まで分けると、表の更新が追いつかなくなります。
- 段の数:中小のプロジェクトなら3段で足ります。3段で1人数日の大きさにならない大きなまとまりだけ、4段目を作ります。全部のまとまりを同じ段数にそろえる必要はありません。
- 100%ルールの確かめ方:各段で「この下の箱を全部終えたら、上の箱はできあがるか」を声に出して確かめます。「できあがらない」と思ったら、足りない作業を足します。逆に、上の箱に要らない作業が下にあれば消します。
- 成果物で分けるか、工程で分けるか:2段目を「会計ソフトの設定」「取引先データの移行」のように成果物のまとまりで分ける方法と、「計画」「準備」「実行」「確認」のように工程の順で分ける方法があります。成果物で分けると作業の抜けが見つけやすく、工程で分けると日程に並べやすくなります。
- 名前の付け方:PMIの論文(2005年)は、WBSの要素の名前を名詞と形容詞で書き、動詞を使わないことを、良いWBSの基準に挙げています。上の段は「取引先データの移行」のように成果物やまとまりの名前で書きます。いちばん下の作業は、Excelの作業一覧として使うときに「取引先一覧を整える」のように終わったかどうかが見て分かる書き方にしておくと、進み具合を付けやすくなります。
上から分けていく作り方(トップダウン)が基本です。似たプロジェクトを前にやったことがあるときは、前回の作業の一覧を付せんや表に全部書き出し、それを大きなまとまりに束ねて上へ組み立てる作り方(ボトムアップ)も使えます。ボトムアップで作ったときも、最後に100%ルールで上から確かめます。
ExcelやスプレッドシートでWBSを作るときの8つの列
WBSは木の図で描かなくても、Excelやスプレッドシートの表で作れます。1行に1つの箱を書き、次の8列にします。
- 番号:1、1.1、1.1.1のように、段を「.」で区切った番号を振ります。番号を見れば、どの箱の下にある作業かが分かります。並べ替えても、番号の列で並べ直せば木の形に戻ります。
- 作業名:上の段は「取引先データの移行」のようなまとまりの名前、いちばん下の段は「取引先一覧を整える」のような作業の名前を書きます。段が分かるように、作業名のセルを段ごとに字下げ(インデント)すると読みやすくなります。
- 成果物:その作業が終わったときに何ができているかを書きます。「取引先一覧を整える」なら「クラウド会計に取り込める形の取引先一覧のCSV」です。この列が書けない作業は、終わったかどうかを判断できません。
- 担当:いちばん下の作業に、人の名前を1人だけ書きます。
- 工数の見込み:かかる日数か時間です。上の段の行は、下の作業の合計を SUM 関数で出しておくと、どのまとまりが重いかが分かります。
- 開始日と終了日:いちばん下の作業の、始める日と終える日です。終了日は、開始日に工数の見込みを足して出します。
- 前の作業:その作業を始める前に終わっていないといけない作業の番号を書きます。「1.3.2 取り込んで照合する」の前の作業は「1.3.1」と「1.2.2」です。品目の登録が終わっていないと、取り込んだ請求の明細が照合できないからです。
開始日・終了日・前の作業の3列がそろえば、同じ表の右に日付の列を足して条件付き書式で塗るだけで、ガントチャートになります。WBSとガントチャートを別のファイルにすると、作業名を片方だけ直して食い違うので、1つの表で両方を持たせます。
自社のプロジェクトで作ってみたい方は、成果物の1行と、今思いついている大きな作業を3つ書いて送ってください。抜けている大きな作業の候補と、いちばん下の作業まで分けたときの表の形をお返しします。
- 成果物の1行と大きな作業3つを送って、WBSの表の形を相談する → 例:「成果物:新しい受注の流れで受注できる状態。作業:画面を決める、データを移す、社内に説明する」
WBSと、ガントチャート・スケジュール・タスクリストの違い
WBSは「何をやるか」を決める表です。いつやるか、どの順でやるかは、WBSを作ったあとに決めます。
- ガントチャート:WBSのいちばん下の作業を、日付の上に横棒で並べた日程表です。WBSが先、ガントチャートが後です。WBSの番号をガントチャートの行の番号にすると、2つが1対1で対応します。
- スケジュール:作業の順番と、開始日・終了日を決めたものです。WBSの「前の作業」の列から順番を決め、工数の見込みから日付を決めると、スケジュールになります。ガントチャートは、そのスケジュールを見える形にしたものの1つです。
- タスクリスト(やることリスト):思いついた作業を並べた一覧です。上の段の成果物とのつながりがないので、成果物に要る作業が抜けていても気づけません。WBSは上の段から分けていくので、抜けに気づけます。
- RACI図(責任分担表):WBSの作業ごとに、誰が実行し、誰が承認し、誰に相談し、誰に知らせるかを決める表です。担当の列に1人の名前しか書けないWBSを補います。
WBSでつまずきやすい点
WBSを作ったのに使われなくなるプロジェクトには、次のどれかが起きています。
- 作業から書き始める:思いついた作業を並べてから束ねると、成果物に要る作業が抜けます。仮想例でいえば、会計ソフトの設定とデータの移行は思いついても、社内の手順書や1か月分の試しの発行は抜けがちです。いちばん上の成果物から分けます。
- 大きさがばらばら:「品目と税区分を登録する(3日)」の隣に「会計ソフトを使えるようにする(20日)」が並ぶと、20日の作業の中身が誰にも分かりません。いちばん下の作業の日数の差が大きいときは、長いほうをもう一段分けます。
- 1人で作る:プロジェクトの責任者が1人で全部分けると、現場の担当が知っている作業(取引先の住所の表記ゆれを直す、など)が抜けます。手順3は担当と一緒に分けます。
- 作ったあと直さない:プロジェクトの途中で作業が増えたのに、WBSに行を足さないと、表と実際がずれていきます。作業が増えたら、どの箱の下に入るかを決めて行を足します。
- 進み具合の表として使う:WBSに進み具合の列を足していくと、作業の範囲の表と日々の進み具合の表が混ざって読みにくくなります。進み具合は、WBSの番号でつないだガントチャートか、週次の会議の記録で追います。
プロジェクトが終わったら、増えた作業と、見込みと実際の日数の差をWBSに書き残しておくと、次の似たプロジェクトでボトムアップの材料になります。終わったあとの振り返りは、PDCAサイクルの確認と改善の段階に当たります。
WBSを個人のExcelに閉じず、会社の共有の置き場所と更新の担当を決める
WBSを作ったプロジェクトの責任者のパソコンにだけファイルがあると、担当は自分の作業の期限を知るために毎回その人に聞くことになります。sento.groupでは、WBSを作った日に、会社の共有フォルダかスプレッドシートの「プロジェクト」の置き場所にファイルを置き、更新の担当を1人決めてもらいます。
ファイル名はプロジェクトの名前にし、日付や「最新」を入れません(例:「請求業務のクラウド会計移行_WBS」)。版ごとにファイルを増やす代わりに、表の右端に「変えた日・変えた番号・変えた中身・理由」の4列を足し、作業を足したり消したりするたびに1行ずつ残します。
更新の担当は、週に1回、決まった曜日に、増えた作業と担当の替わりを表に入れます。いちばん下の作業の担当は、自分の行の開始日と終了日だけを書き換えます。プロジェクトが終わったら、同じフォルダの「終わったプロジェクト」に移し、次の似たプロジェクトのWBSを作るときに開きます。
生成AIにWBSの下書きを作らせる場合は、成果物の1行と、社内の業務の手順書や前回のWBSをAIに渡し、AIが出した作業の一覧を担当と一緒に読んで、100%ルールで確かめてから表に入れます。AIに渡した文面と元の資料のファイル名を、表の1枚目のシートに残しておくと、次のプロジェクトで同じ頼み方ができます。
最初の一歩として、sento.groupのTOC分析 5万円(2時間)は、2時間で行う入口の診断です。今動いているプロジェクトの成果物と、関わっている人の名前の一覧を持ってきてください。2時間で、WBSの最初の2段と、いちばん詰まりそうな作業と、WBSの置き場所と更新の担当を決めます。
よくある質問
Q. WBSは何の略ですか?
Work Breakdown Structure の略です。日本語では作業分解構成図と訳されます。成果物を出発点に、作業を段ごとに分けた一覧のことです。
Q. WBS辞書とは何ですか?
WBSの各箱の中身を説明する表です。PMIの論文(2005年)は、WBSに合わせてWBS辞書を作り、各要素の中身を丁寧に説明することを勧めています。中小のプロジェクトなら、Excelの表の「成果物」の列と、終わったと判断する条件を書いた列を足せば、WBS辞書の代わりになります。
Q. 小さなプロジェクトでもWBSは要りますか?
担当が2人以上いて、2週間以上かかるプロジェクトなら、3段のWBSを作っておくと作業の抜けが見つかります。1人で数日で終わる仕事なら、やることの一覧で足ります。
Q. WBSのテンプレートは使ったほうがよいですか?
列の形(番号・作業名・成果物・担当・工数の見込み・開始日・終了日・前の作業)は、テンプレートを使っても自分で作ってもかまいません。中身の作業は、他社のテンプレートの作業をそのまま使わず、自社の成果物から分けます。前に自社でやった似たプロジェクトのWBSがあれば、それがいちばん使えるテンプレートです。
Q. WBSは誰が作りますか?
いちばん上の成果物と2段目は、プロジェクトの責任者が決めます。3段目から下は、各まとまりを担当する人と一緒に分けます。現場の担当が、作業の中身とかかる日数をいちばんよく知っているからです。
今動いているプロジェクトの成果物を1行書いて送り、WBSの最初の2段を一緒に分ける
今動いているプロジェクトの成果物を1行と、関わっている人の数を書いて送ってください。WBSの最初の2段の分け方と、抜けやすい作業の候補をお返しします。最初の一歩として、2時間で行う入口の診断、TOC分析 5万円(2時間)も選べます。