CONCEPT — MECE

MECE(ミーシー)とは:モレなくダブりなく分ける基準と、よく使う切り口

業務設計・仕組み化 sento.group 編集部 · · 約9分

顧客一覧のすべての会社を表す1本の帯を、取引を始めてからの長さで1年未満・1年以上3年未満・3年以上の3つの箱にすき間なく分けた図と、大口・新しい・関東の3つの円が重なりモレも出る悪い分け方の小さな図
図:説明用の仮想例。上は基準を1つにした分け方、下は基準が3つ混ざってダブりとモレが出た分け方です。

MECE(ミーシー)とは、物事をいくつかに分けるときに、分けた箱どうしに重なりがなく(ダブりなく)、全部の箱を足すと元の全体に戻る(モレなく)状態のことです。英語の Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive の頭文字で、日本語では「モレなくダブりなく」と言います。この記事では、分ける基準の選び方と、自分の分け方がMECEになっているかを確かめる問いに絞って書きます。

MECE(ミーシー)とは:モレとダブりの4つの状態

MECEは、Mutually Exclusive(互いに重ならない)と Collectively Exhaustive(全部合わせると漏れがない)の頭文字です。分け方は、モレとダブりがあるかどうかで次の4つの状態のどれかになります。

  • モレなし・ダブりなし:MECEの状態です。冒頭の図の上の段のように、取引の長さで顧客を3つに分けると、どの会社もちょうど1つの箱に入ります。
  • モレあり・ダブりなし:箱は重ならないが、どこにも入らないものが残る状態です。説明用の仮想例で、顧客を「関東」「関西」の2つに分けると、九州の会社が入る箱がありません。
  • モレなし・ダブりあり:全部は入るが、2つ以上の箱に入るものがある状態です。説明用の仮想例で、問い合わせを「電話」「メール」「急ぎ」に分けると、急ぎの電話が2つの箱に入ります。
  • モレあり・ダブりあり:冒頭の図の下の段のように、基準が混ざった分け方です。重なって二重に数える会社と、抜け落ちる会社が同時に出ます。

日本語版Wikipediaの「MECE」の項目は、コンサルティング会社のマッキンゼーにいたバーバラ・ミントが開発した考え方と説明しています。ミントは文章や報告を組み立てる方法の本を書いた人で、MECEは考えを分けて並べるときの確かめ方として広まりました。

今、顧客一覧や業務一覧を分けようとしていて、どこかが抜けている気がする方は、今の分け方と、漏れている気がする切り口を1つ書いて送ってください。重なりと抜けを確かめ、基準を1つにした分け方の案をお返しします。

良い分け方と悪い分け方(説明用の仮想例)

同じものを分けても、基準の選び方でMECEになるかどうかが変わります。説明用の仮想例として、ある会社の「月末に経理がする作業」を分けてみます。

  • 悪い分け方:「請求の作業」「Excelの作業」「時間がかかる作業」の3つに分けると、Excelで作る請求書は1つ目と2つ目に、それに時間がかかれば3つ目にも入ります。逆に、紙で受け取る領収書の整理は、どれにも入りません。基準が「業務の種類」「道具」「かかる時間」の3つ混ざっているからです。
  • 良い分け方1(お金の流れで分ける):「お金を受け取る作業(請求・入金の確認)」「お金を払う作業(支払・経費の精算)」「記録と報告の作業(帳簿・月次の報告)」の3つにします。どの作業も、お金の向きでどれか1つに決まります。
  • 良い分け方2(月末の日付で分ける):「締め日の前にする作業」「締め日にする作業」「締め日の後にする作業」の3つにします。どの作業も、する日でどれか1つに決まります。
  • 分けた後の使い方:良い分け方1は、どの作業を担当替えするかを話すときに、良い分け方2は、締め日に作業が集まりすぎていないかを見るときに使います。目的によって、選ぶ基準が変わります。

悪い分け方の3つの箱も、それぞれは大事な見方です。「道具」で見たいなら道具だけで分けた表を、「かかる時間」で見たいなら時間だけで分けた表を、別に作ります。1つの表に基準を1つ、と決めておくと、重なりと抜けが出にくくなります。

ビジネスでよく使う切り口

分ける基準に迷ったら、次の切り口から目的に合うものを選びます。どれも、1つの基準で全体を分けられる切り口です。

  • 時間で分ける:月・四半期・年、締め日の前と後、取引を始めてからの長さなどで分けます。「いつ」で決まるので、重なりが出にくい切り口です。
  • 場所で分ける:都道府県・地方・店舗・拠点で分けます。「その他の地域」を最後に置くと、どこにも入らない会社が残りません。
  • 顧客の種類で分ける:法人と個人、業種、取引の金額の大きさ(例:年間の取引額で3段階)などで分けます。「大口」のようなあいまいな言葉は、金額の線を決めてから使います。
  • 工程で分ける:受注→作業→納品→請求のように、仕事が進む順の段階で分けます。業務の流れを見直すときに使い、どの段階で時間がかかっているかを見つけます。
  • 足し算で分ける:売上を「既存の顧客からの売上」と「新しい顧客からの売上」に分けるように、足すと全体になるように分けます。
  • 掛け算で分ける:売上を「顧客の数×1社あたりの金額」のように、掛けると全体になるように分けます。どちらを増やせば全体が増えるかを考えるときに使います。
  • 反対の言葉で分ける:社内と社外、プラスとマイナス、できることとできないことのように、反対の2つで分けます。SWOT分析の4マスは、社内と社外、プラスとマイナスの2つの反対の言葉を組み合わせた分け方です。

分け方がMECEになっているかを確かめる3つの問い

分けた後は、次の3つの問いを順に確かめます。表計算ソフトで分けた一覧なら、数で確かめられます。

  • 足すと元の数に戻るか:分けた箱の件数を足して、元の一覧の件数と比べます。足した数のほうが多ければダブり、少なければモレがあります。説明用の仮想例で、顧客一覧が120社なのに3つの箱の合計が126社なら、6社が2つの箱に入っています。
  • どの項目もちょうど1つの箱に入るか:一覧に「どの箱に入るか」の列を作り、1行に1つだけ書けるかを確かめます。2つ書きたくなる行があれば、基準が2つ混ざっています。
  • 「その他」の箱が大きすぎないか:モレをなくすために「その他」を置くのはかまいませんが、全体の1割を超えるなら、その中にもう1つ箱を作れる集まりが隠れています。「その他」の中身を読み、3件以上ある集まりを箱にします。

3つの問いを確かめるとき、分けた本人だけで見ると、思いつかなかった箱には気づけません。違う部署の人に一覧を渡し、「この分け方で入らないものはあるか」を聞くと、抜けが見つかります。

自社の一覧で試したい方は、分けた後の箱の名前と、それぞれの件数を書いて送ってください。3つの問いで確かめた結果と、直すなら基準をどう変えるかをお返しします。

ダブりとモレの直し方

3つの問いで重なりや抜けが見つかったときは、次のように直します。

  • ダブりを直す:2つの箱に入った項目を並べ、どの基準とどの基準が混ざっているかを書き出します。混ざった基準のうち、目的に合う1つだけを残し、もう1つは別の表で見ます。どうしても両方で見たいときは、「関東×大口」「関東×小口」のように2つの基準の掛け合わせの表にします。
  • モレを直す:どこにも入らなかった項目を書き出し、それが入る箱を足します。足す箱が増えすぎるときは、基準の線の引き方を見直します。例えば「1年未満」「1〜3年」と分けて3年以上が抜けたなら、「3年以上」を足して上を開いておきます。
  • 境目をはっきりさせる:「1〜3年」と「3〜5年」のように境目の数字が両方に入る書き方は、ちょうど3年の会社が2つの箱に入ります。「1年以上3年未満」「3年以上5年未満」のように、以上と未満で書きます。

言葉で分けるときも同じです。「営業の仕事」と「お客様対応」のように、意味が重なる言葉を箱の名前にすると、人によって入れる箱が変わります。箱ごとに「この箱に入るもの」の説明を1行書いておくと、入れる人が替わっても結果がそろいます。

ロジックツリーやフレームワークとの関係

MECEは分け方の基準で、ロジックツリーやフレームワークは、その基準を使って考えを整理する道具です。

  • ロジックツリー:1つの問いや目標を、木の枝のように何段にも分けていく図です。枝分かれの1段ごとに、MECEになっているかを確かめます。売上や目標の数字を何段にも分ける作り方は、KPIツリーの記事で扱っています。
  • フレームワーク:SWOT分析(社内と社外×プラスとマイナス)、3C分析(顧客・競合・自社)、5W1H(いつ・どこで・だれが・なにを・なぜ・どのように)などは、よく使われる分け方をあらかじめ決めておいた型です。型を使うと、一から基準を考えずに済みます。
  • 型を使うときの注意:型の箱に当てはまらない話を無理に入れると、モレが見えなくなります。型で分けた後も、3つの問いで確かめます。

ダブりを許してよい場面と、分けすぎ

MECEは、数を数えたり、担当を割り振ったりするときに役に立つ基準です。次の場面では、ダブりを許したほうが進めやすくなります。

  • 原因やリスクを洗い出す最初の段階:「何が起きうるか」を集める段階では、重なっていてもまず全部書き出します。重なりは、集め終わった後にまとめます。
  • 1つの作業が2つの目的に効く打ち手:「手順書を作る」が、品質と引き継ぎの両方に効くなら、両方の箱に書いてかまいません。数を足し合わせない表なら、重なりは問題になりません。
  • 分けすぎ:箱を細かくするほどMECEにしやすくなりますが、1つの箱に1〜2件しか入らないなら細かすぎます。話し合いで使う表は、1段に3〜6個の箱に収めます。

数を足す表(件数・金額・時間)では、ダブりは集計の間違いにつながるので必ず直します。数を足さない表(アイデアや打ち手の一覧)では、モレを先に防ぎ、ダブりは後でまとめる、という順にすると進みます。

MECEの切り口を、要件定義と業務一覧の見出しに固定する

分け方の基準が、作った人の頭の中やその人のExcelにだけあると、次に同じ一覧を作る人は別の基準で分け、前回と比べられなくなります。sento.groupでは、一度決めたMECEの切り口を、要件定義書や業務一覧の見出しとして会社の共有の場所に固定してもらいます。

例えば、業務一覧の見出しを「受注・作業・納品・請求・その他」の5つの工程に決めたら、その5つを要件定義書の章立てにも使い、システムの画面の一覧も同じ5つで分けます。見出しの一覧と、「この見出しに入るもの」の説明1行ずつを、共有フォルダの1枚のファイルに置きます。

見出しを変えるときは、変えた日・変えた見出し・理由を同じファイルの下に1行ずつ書き足します。生成AIに業務の一覧や要件の下書きを作らせるときも、このファイルを渡して「この見出しで分けて」と頼むと、毎回同じ切り口で出てきます。

最初の一歩として、sento.groupのTOC分析 5万円(2時間)は、2時間で行う入口の診断です。今の業務一覧か顧客一覧を1つ持ってきてください。2時間で、分ける基準と、その基準で見たときにいちばん詰まっている箱と、見出しを固定するファイルの置き場所を決めます。

よくある質問

Q. MECEの読み方は?

「ミーシー」と読みます。「ミッシー」と読む人もいます。英語の Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive の頭文字で、日本語では「モレなくダブりなく」と言います。

Q. MECEとロジックツリーの違いは何ですか?

MECEは、分けた箱どうしが重ならず、全部を足すと元に戻るという分け方の基準です。ロジックツリーは、問いや目標を木の形に何段も分けていく図です。ロジックツリーの枝分かれの1段ごとに、MECEになっているかを確かめます。

Q. 「その他」を入れてもMECEと言えますか?

言えます。「その他」を置くと、どこにも入らない項目がなくなり、モレを防げます。ただし「その他」が全体の1割を超えるなら、中に箱にできる集まりが隠れているので、中身を読んで箱を足します。

Q. MECEに分けるコツはありますか?

分ける基準を1つに決めることです。時間・場所・顧客の種類・工程のような、1つの物差しで全体を測れる切り口を選ぶと、重なりが出にくくなります。分けた後は、足すと元の数に戻るかを数で確かめます。

Q. 完全にMECEにできないときはどうしますか?

目的に影響しない小さな重なりは残してかまいません。件数や金額を足す表では重なりを直し、アイデアの一覧のように数を足さない表では、モレを防ぐことを先にします。

今もれている切り口を1つ書いて、MECEの分け方を相談する

今分けようとしている一覧と、もれている気がする切り口を1つ書いて送ってください。基準を1つにした分け方の案と、MECEになっているかを確かめた結果をお返しします。最初の一歩として、2時間で行う入口の診断、TOC分析 5万円(2時間)も選べます。

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